第27話

 五人の家臣が命を賭して助け出したモアは、その家族に護られ、バーン家の屋敷から逃げ出したそうです。

 追撃してくるバーン家の手勢を振り切り、イーハ王が主催する試合会場に辿り着いたそうです。

 愚かな事ですが、イーハ王を信じたのでしょう。

 しかし、イーハ王は外道なのです。


 イーハ王は保身に走りました。

 イーハ王が主催した剣の試合です。

 最初ダラ・オフラハーティは嫌がっていました。

 どうやったのか、キラン・バーンはダラ・オフラハーティに試合の参加を承諾させました。

 それが、子供を攫って脅迫したモノだとは思わなかったのでしょう。


 ですが、モアが助けて連れてこられたのです。

 どう考えても八百長です。

 噂が広まれば、誰もがイーハ王がやらせたと考える事でしょう。

 口封じする事にしたのでしょう。

 それに、清廉潔白なダラ・オフラハーティでは使い難いと考えたのでしょう。


「神聖な試合を邪魔した者を許すな。

 オフラハーティ家の者を皆殺しにしろ」


「おのれ奸悪。

 正体を現したな。

 皇帝陛下の恩為。

 その首斬り落としてくれる。

 お前達はモアを連れて逃げろ」


 ダラ・オフラハーティは、獅子奮迅の活躍だったそうです。

 封印していた剣を抜き、双剣を縦横無尽に振るったそうです。

 ですが、モアと家臣家族を護り逃がすと言う鎖がありました。

 動きに制限があったのです。

 しかも相手は、一国の王です。


 皇都の館には、常に大軍を置いています。

 自分が悪事をなしているだけに、人の悪意に対する警戒心が強いのです。

 その兵全てが、ダラ・オフラハーティに向けられたのです。

 当然弓兵もいます。

 多くの槍兵もいます。


 ただ一人の味方もおらず。

 幼い子供と家臣の家族を護りながら戦う。

 絶望的に不利です。

 イーハ王の家臣の中にも、腕の覚えのある者が数多くいます。

 騎士とは思えない下劣な男ですが、キラン・バーンもいるのです。


 ダラ・オフラハーティは、双剣を振るって囲みを破り、モア達を逃がしました。

 追撃をさせないように、不利を承知で狭い通りに留まったそうです。

 そこでもダラ・オフラハーティは目を見張る剣技を振るったそうです。

 ですが、準備万端整えたイーハ王が、弓を雨霰と放たせたそうです。

 最初ダラ・オフラハーティは、双剣を振るって矢を斬り落としたそうです。


 ですが、矢の数が余りに多く、身を潜める場所もなかったそうです。

 一つ、二つと矢を受け、遂には身動きもままならなくなったそうです。

 卑怯下劣なキラン・バーンは、身動きのとらなくなったダラ・オフラハーティを斬り殺したそうです。

 何とも胸の悪くなる話です。

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