第24話

「姫様。

 どうか、どうか、息子を許してやってください。

 御願いいたします。

 この命に代えて、御願い致します」


「自分の子供は可愛いか」


「はい。

 馬鹿な子ほど可愛いと申します。

 どうか、どうか。

 我が命を持ちまして、命ばかりは助けてやってください」


「そうか。

 そうだろうな。

 我が子は可愛いだろう」


「はい。

 はい」


「では、イー・ドゥリスコルも、子供達が可愛かったであろう」


「……」


「この腐れ外道を踏み潰せ。

 このような鬼畜に、貴族の礼も騎士の礼も不要!

 虫けらと同じように扱うがよい」


「「「「「は」」」」」


 姫様の命を受けた仲間たちが、オハラ子爵を殺しました。

 姫様の言葉通り、一切の礼を払われず、ゴミのように扱われました。

 ギャラハー馬に踏み潰され、それこそグチャグチャの肉塊になり果てました。

 清々します。


 私も、愛馬を使って、キアン・オハラの指二〇本を踏み潰しました。

 愛馬に膝と肘の関節を噛み砕かせました。

 その度に、キアン・オハラは情けない悲鳴をあげます。

 泣き叫んで許しを乞います。


 ですが、全然心が晴ません。

 この程度の苦痛では、私や家族が受けた苦しみの百分の一も、恨みを晴らしたことになりません。

 単なる苦痛では、恨みを晴らせないのです。


 誇りを踏み躙り、衆目の前で恥をかかせなければ、恨みを晴らせないのです。

 ですがキアン・オハラは、何の誇りも持たない者です。

 誇り無き者の誇りは、踏み躙りようがありません。

 悔しい事です。


「ねえ、エファ。

 この腐れ外道に思い知らす方法ってある?」


「この者がなした外道な仕打ちを思えば、単なる痛みでは報復になりません。

 衆目の前で犯すくらいしか思いつきません」


「でも、こんな根性なしでも、一応男だよね。

 男を犯すのは無理だよね?」


「世の中には特殊な趣味の男がいるのです。

 そのような者に、衆目の前で、繰り返し犯させればいいのです。

 もっと特殊な趣味の者は、獣に犯させるのが好きという者もおります」


「そうなんだ。

 でも、そんなのは見たくないなあ」


「当然でございます。

 そのような穢れた者を、姫様の目に触れさせるわけにはいけません。

 そのような事は、そういう役目の者がやってくれます」


「そっか。

 ベイタはどうしたい?

 このまま自分の手で叩き殺したい?

 それともエファの言う方法がいい?」


「姫様。

 御配慮痛み入ります。

 どれほど叩きのめしても、一向に心が晴ません。

 ここはエファ殿が勧めてくださった方法で、恥辱に塗れた死を与えていただきたいです」


 結局、エファ殿が指揮を執って下さり、キアン・オハラに地獄を見せることになった。

 姫様の目に触れさせるわけにはいかないので、私と影の仕事役が残り、姫様達には先行して頂きました。


 心が晴れた訳ではありませんが、相応しい罰を与えられたと思います。

 罪を許されることを条件に、オハラ子爵家の家臣が、領民の前で代わる代わるキアン・オハラを犯しました、

 全員が犯し終わると、駄馬と番犬が連れてこられて、今度は獣姦が始まりました。


 見るに堪えない暴虐ですが、自分と家族がされた事を想い、最後まで立ち会いました。

 最後には、キアン・オハラは番犬に犯されながら、他の犬に食い殺されました。

 奴に相応しい末路だとは思いましたが、心は晴れませんでした。

 ですが、姫様に対する感謝と忠誠心はゆるぎないものになりました。


 この行いは、姫様の評判を地に落とすことになります。

 そんな事は、姫様も先刻承知です。

 一国の姫君が行うような事ではありません。

 貴族士族なら、どれほどの悲惨な戦争の後でも、やらないことです。


 なのに、私の為に、断じて行ってくれました。

 自身の評判も、王家の評判も関係なく、私の恨みを晴らさせてくださいました。

 この命も誇りも、いえ、考えられるすべてのモノを、姫様に捧げます。

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