第20話

「ちょっと酷過ぎるわね。

 でも、よく今日まで報復を我慢していたわね」


「歯噛みする思いでしたが、恩あるギャラハー王家に後足で砂をかけるような真似は出来ず、何か恩返しできるまではと、御役目を続けさせて頂いていました」


「そう。

 でもいい機会がやってきたわね」


「しかし、ここで私が復讐を始めたら、姫様は勿論、ギャラハー王家に御迷惑をおかけするのではありませんか?」


「そんなことはないわよ。

 それよりも、ここでベイタの仇討ちを手伝わなかった、父上は勿論、兄様方にも大目玉を喰らうわよ。

 ねえ、エファ」


「はい。

 ただ、ベイタは教会を逃げ出しています。

 それに、ドゥリスコル家の事は腰巾着共がやった事になっているとの事です。

 なのにこいつらは、ベイタの事を馬鹿にしていましたし、帰る所などないとも言っていました」


「そうね。

 そこが気になるわね。

 少々痛めつけて、嘘がつけないようにしてくれる」


「分かりました」


 戦闘侍女達が、ベイタに失礼な事を言ったオハラ子爵家の家臣達を拉致して、熱い歓迎しをしてくれました。

 わらわに汚いところを見せないように、汚い声を聞かさないように、色々と気を使ってくれました。


 二度と硬い物が食べれないように、全ての歯が叩きおられていました。

 嘘をついているかもしれないので、足の指一〇本が槍の石突で砕かれていました。

 恐らく、同じ事を何度も言わされたのでしょう。

 少しでも様子がおかしいと、指一本を叩き潰してから聞き直したのでしょう。


 そこまで慎重に話を聞いたので、間違った事は言っていないでしょう。

 ベイタが教会から逃げた事に関しては、転地療養で遠縁の貴族家に預けたと言う、表向きの理由を作ったようです。

 ですが問題は、ドゥリスコル准男爵家を継いだスミス・ドゥリスコルと、他の一族一門衆でした。


 事もあろうに、彼らはキアン・オハラの新たな腰巾着になっていたのです。

 スミス・ドゥリスコルは、ベイタの逃亡を聞いて、望外の幸運で手に入れた准男爵家の家督を手放すのが嫌で、キアン・オハラの味方になって、ベイタを殺してしまおうと考えたのです。


 表向きどう取り繕おうと、オハラ子爵領の人間は全員真実を知っています。

 領主一族とドゥリスコル一族を恐れて、表立っては口にしませんが、本当に悪い人間が誰だかを知っています。

 庶民はベイタと亡くなった家族を気の毒だと思っていましたし、オハラ子爵家の家臣達は、ベイタを貶める事で身の安全を図っていました。


 だからベイタが帰ってきても、何処にも居場所がないと、容姿と一緒に馬鹿にしたのでした。

 彼らはベイタが弱いままだと思い込んでいました。

 味方がいるとも思っていなかったようです。

 いたとしても、金で雇われた流れ者程度だと思い込んでいたのです。

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