第6話

「ギャラハー王家のマカァ姫が謀叛を企てました」


「捏造だな」


「何を申されますか。

 実の息子である私の言葉が、信じられないと言われるのですか」


「ああ、信じられないな。

 奸臣に操られ、実の兄を追い落とすような愚か者。

 そのような者の言葉など、信じられるわけがあるまい」


「陛下。

 奸臣とは私の事でございますか」


「そうだ。

 御前の事だ。

 イーハ」


 アイル皇国の新たな皇太子となった第二皇子ルアン・アイルは、皇帝ブライアン・アイルに、マカァ姫の処断を強く要求してきた。

 だがブライアン皇帝は、今回ばかりは逆に強く拒否した。

 その意志は固く、断固たる決意で行われた。


「私は皇国の事を想ってルアン様を皇太子に推挙したまででございます。

 恣意で推挙したわけではございません」


「剣にかけてルアンを推挙すると言う事は、朕が認めなければ内乱を引き起こすと言う脅しであろう。

 民を想うオシーンが、自ら身を引いてくれたから、朕も泣く泣く引き下がったが、今度ばかりは許さぬぞ」


「許さねばどうなされるのでございますか」


「ふん。

 ルアンを擁して、余を弑いる心算であろうが、そうなれば今度こそコナンが黙ってはおらんぞ」


「確かにコナン殿は武勇比類なき者ではありますが、王都に詰める兵だけで我々に逆らいますか?」


「ふん。

 コナンは貴様らのように卑怯者とは違う。

 勝てぬとも、戦士の誇りにかけて立ってくれる。

 コナンが立てば、国元にいるギャラハー兄弟が必ず立つ。

 勇猛果敢なギャラハー騎士団に勝てるとでも思っているのか」


「ギャラハー兄弟など、余が粉砕してくれるわ」


「愚か者は黙っていろ!

 どうする、イーハ。

 コナンに喧嘩を売る勇気があるか。

 ないであろうが」


「……ならば、マカァ姫の乱行を見逃せと申されるのですか」


「乱行。

 乱行は御前の事であろう。

 人の行動を咎めるのなら、己を顧みて腹を切れ!」


「陛下の御裁可が頂けないのなら、皇国を想う臣として、独断で厳しい処置を取らねばなりませんが、それで宜しいのでございますね」


「一言言っておく。

 内乱を起こすのを憂いて、オシーンは身を引いた。

 その想いを踏み躙るのなら、朕も容赦せん。

 朕が死ぬか、御前が死ぬかの二つに一つだ!」


「……内乱でなければ宜しいのですね。

 最近は皇国の治安が悪くなっております。

 早く保護しなければ、マカァ姫が災難に出会うかもしれませんぞ」


「よほどコナンを怒らしたいようだな。

 マカァに傷一つでもつければ、合戦は必至だ。

 朕も戦支度をして待つとしよう」


「私も覚悟を決めると致しましょう」

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