わがまま×わがまま



 俺達は、何かと喧嘩をすることが多い。

 その原因の大半が、お互いのわがままである。


「絶対、こっち!」


「いや、駄目だ!」


 今日も、終わりの見えない争いの火蓋が切って落とされた。


「どう考えても、私が選んでいる方がいいでしょ。季節感もありながら、流行りにも乗っている。さらには口にした時の、可愛らしさ!」


「いやいや流行りなんて、他にもたくさんいるってことだろう。その点、俺の方はきちんとしたところで選んでもらったものだから、ご利益がある。老若男女に愛される、そんな感じになっているだろう!」


「ふんだ! そうやって他の人に頼んでもらったものに、愛着なんて持てるの?」


「そんなこと言ったら、流行りに任せたものなんか飽きるんじゃないか」


 お互いに一歩も引かずに、睨み合う俺達。

 この争いごとは、最近ずっとだ。

 原因は同じ。


「絶対に、私が考えた名前の方がいい」


「いいや、俺の名前の方がいい!」


 産まれてきた我が子に、どんな名前をつけるかというものだった。

 可愛い女の子が産まれてから、俺達はずっとその名前を決めかねている。

 どちらも自分の考えた名前の方がいいと、そう思っているからだ。


 こういう時、男の余裕で譲ってあげるべきなのかもしれない。

 しかし、どうしても譲れないものはある。


「私が考えた方が、あなたの名前をもじっているものだから、絶対にいいのに」


「俺の方が、君の名前一字もらっているから、絶対にあの子に合うのに」


 俺達は、睨み合いながら頬を染めていた。


 この争いを目撃した人は、みんな同じことを言う。



 バカップルは勝手にしなさい、と。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る