病み×幼なじみ




 好きすぎて、人を殺したくなるという気持ちを、どのぐらいの人が理解をしてくれるのだろう。

 僕は好きで好きでたまらない人がいて、そして同時に殺したくてたまらない。

 僕の知らない彼女の一面があるのが、どうしても許せないからだ。

 だから僕が知っている彼女のままで、終わらせたい。

 そう思ってしまう。



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「でも生まれたときから一緒で、それからずっと同じ時間を過ごしていて、家族公認のカップルなのに、何をそんなに不安になるの?」


「ぐ、ぐぬ……」


 それを彼女本人に伝えたら、正論で返された。

 僕は言葉が出ずに、唸り声を上げる。


 確かに彼女の言う通りだ。

 僕達は生まれた時から一緒で、人生の大半を過ごしてきた。


 だから彼女の知らない部分なんて、今のところはない。

 文字通り、全てを知っていると言ってもいい。


「で、でも。これからは分からないだろう? 新しい世界が広がったりしてさ」


「来月からは、一緒の高校に通うのに?」


「ぐ、ぐぬぬ」


 そして高校も一緒。

 同じような進路に進むから、大学も一緒の予定だ。

 きっと会社も、同じところに入るだろう。



 しかし、僕はそれだけでは足りない。

 これだけ一緒にいるとはいっても、離れる瞬間は確実にある。

 その時間があることが、耐えられないのだ。


「不安になる意味が分からない。私はコウ君のことが好きだし、コウ君が十八歳になったら、結婚するでしょ。絶対に他の人に興味なんか持たないよ。だからさ、少しぐらい安心してくれると嬉しいんだけどなあ」


「うぬぬ」


「そんなありえない想像ばかりしていないで、楽しいこと考えようよ。結婚して子供が出来たら、どんな名前にするかとかさ」


「うおう」


 彼女の提案は、とても魅力的だった。

 二人の子供の名前なんて、そんなの候補がありすぎて困る。

 娘だったら、絶対に彼女似であってほしい。

 そうしたら、お嫁になんて行かせない。

 彼女と娘に囲まれて、幸せな生活を送るのだ。


 何それ、想像しただけでも絶対に楽しい。


「だから、ね。じめーっとしていないで、そういう幸せな話をしよう!」


「……分かった」


 いつの間にか僕は、まんまと彼女にのせられて、ネガティブ思考を切り替えさせられていた。

 さすがに長年一緒なだけあって、僕の扱いは手馴れたものだ。


 きっとこれからも、何度ネガティブな考えを持ったって、彼女が晴らしてくれるのだろう。


「それじゃあ、まずは僕が考えている子供の名前から……」


「あ、ずるーい! 私が先に発表したかったのに!」


 彼女と出会えて良かった。

 頬を膨らませている彼女を見て、僕は心の底から、そう思う。



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