第14話 バベルの塔は実在した?!


旧約聖書「創世記」に登場する神様が、なかなか過激で少々短気だったことをご存知ですか?

そもそも、旧約聖書とは「神から与えられた掟を守れば、神が永遠の繁栄を与えてくれる」という人々と神様との契約を記したもので、「古い契約」と言う意味があります。

そのため、神様の掟を破った人々に対して、神様は過酷な試練を与え罰を下すのです。

アダムとイブは、神の言いつけを破ったため楽園を追放され、人々が堕落すれば、神を敬う人間以外を洪水で滅ぼす。それが旧約聖書の神様なのです。

そんな神様に対して、バベルの塔を作り傲慢な行いをしてしまったのがニムロデだったと言われています。

旧約聖書に記された「バベルの塔」

ニムロデは、大洪水を生き延びたノアの息子ハムの子孫にあたる人物です。

このハムは、父であるノアに呪われてしまった人物でした。

大洪水を生き延びたノアにはセム、ヤフェト、ハムという3人の息子がいました。

ある日、泥酔したノアは裸のまま眠ってしまいますが、ハムはそんなノアを面白おかしく兄弟に言いふらしてしまいました。

兄弟たちは、そんなハムを無視して裸のノアにそっと毛布を掛けたのです。

ノアが起きて、ハムが面白おかしく言いふらしたことを知ると、ハムにこう言いました。

「子孫と共に呪われよ。奴隷のそのまた奴隷として兄たちに仕えよ。」

やりすぎな気もしますが、父から呪いの言葉を投げられたハムは、トルコ国境沿いのアララト山から南へ移り住んだと言われています。

このハムの一族の子孫は、後に悪徳の街として知られるソドムとゴモラを作ったと言われています。

そのため、旧約聖書では神に逆らい、神の罰を受けるという役割を担った一族として書かれることになったのではないでしょうか。

現在のイラクの首都、バグダッド周辺地域に移り住んだ「ニムロデ」を中心とするハムの一族は、そこに「シヌアル(シンアル)」という新たな町を作ることにしました。

この行為も、神の言葉に反した行いだったそうです。

なぜなら、洪水で生き延びたノアの一族に対して神は、「生めよ、増やせよ、地に満ちよ。」と言う言葉を送り、世界の隅々まで人々が移り住み繁栄することを望んだからです。

しかし、神の言葉に従わずニムロデと人々は町を大きく広げていきました。

そんなある日、ニムロデと町の人々は、自分たちの力を見せつけようと「天にも届く高い塔」を築くことを思いついたのです。

日干し煉瓦と天然アスファルトで作られた塔は、雲を貫くほどの高さだったと言われています。

人々はこの塔を、「神の門」を意味する「バベルの塔」と呼びました。

こうした人々の行いを見た神様は、すぐに罰を下すことにしました。

「彼らは1つの民で、1つの言葉を話している。これでは、彼らが何を企てても留めることが出来なくなってしまう。直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が分からないようにバラバラにしてしまおう。」

確かにニムロデや町の人々は、元を辿ればノアの一族なので、同じ言葉を話していたとしてもおかしくはありません。

ならば、言葉が分からなくなれば、意思疎通が出来なくなる。と言う神様の考えも分かるような気がします。

こうして、神の怒りに触れたニムロデと町の人々は共通の言葉を失い、同じ言葉を持つ者同士がグループを作って町を去っていきました。

人々が消えた街は「混乱と退廃の街バベル」と呼ばれ、そのきっかけとなった塔を「バベルの塔」と呼ぶようになったのです。

そして、神を怒らせた張本人ニムロデは、「神に逆らうもの」というレッテルを貼られてしまったのです。

これが、旧約聖書に記された「バベルの塔の伝説」です。

さて、ここから「バベルの塔」の本当の役割について見ていきたいと思います。


旧約聖書の通りに考えれば、ハムの子孫であるニムロデと一族はバベルの塔で罰を受け、ソドムとゴモラの街で悪徳の限りを尽くす「神に逆らう一族」という事になります。

そのせいで、ハムの一族は悪魔に魅入られやすい、堕落した一族というイメージになってしまいました。

しかし、「神に逆らうもの」ニムロデが作ろうとしたバベルの塔が、実は避難シェルターだったとしたらどうでしょう?

ハムの一族=堕落した一族というイメージを覆していきましょう。

ニムロデの王国である「シヌアル(シンアル)」と言う町の場所は、バグダッド周辺地域だったと言われていますが、ここはティグリス川とユーフラテス川に挟まれた地形です。

つまり、大雨で川が氾濫すると、町が水害に見舞われてしまう地域だったのです。

日干し煉瓦で作られた街は、洪水のたびに多大な被害を受けていたのではないでしょうか。

シヌアルに住む人々にとって、最大の脅威は洪水だったと考えられます。

洪水や水害から身を守るためには、避難シェルターのような建物があればいいのではないか。そう思いついても不思議ではありません。

町のみんなが避難出来て、大洪水が起きて長期間閉じ込められても、全員が生き残れるだけの設備と食料を備えた、シェルターがあれば安心して暮らせます。

それが、天にも届く高い塔の正体であり「バベルの塔」の本当の役割だったのかもしれないのです。

つまり、シヌアルの人々は、奢りや傲慢からではなく、生き残るためにバベルの塔を作ったのではないでしょうか。

しかし、いくら避難シェルターがあっても、もっと安全で安心できる土地が他にあれば、自然と人々はそちらに移ってしまいます。

人々が居なくなった町は、町としての機能を失い衰退していきます。

そして、幾度となく水害に襲われ、周辺諸国の争いに巻き込まれ、町は跡形もなく消え去ってしまったのではないでしょうか。

つまり、「バベルの塔」は実在していた避難シェルターで、旧約聖書に書かれた「バベルの塔の伝説」とは、現在のバグダッド周辺地域で起きた歴史的事実に、宗教的な意味合いと神様に逆らうとこうなる。という教訓を持たせることで生まれた伝説と考えることが出来るのです。

それを示す証拠になり得る遺跡が、バグダッド周辺地域で発見されています。

そこには、バベルの塔のような高い塔が築かれていた事を示す土台や、粘土板に描かれた高い塔の絵が残されています。

これらは、古代メソポタミア時代のもので、「ジッグラト(ジグラット)」と呼ばれ、宗教施設だったのではないかと言われています。

発見された「ジッグラト(ジグラット)」の中には、「エ・テメン・ニグル」という、高さ約16mもある3階建ての物や、「エ・テメン・アン・キ」という7階建てのものもあります。

現在確認されている「ジッグラト(ジグラット)」の中でも、「バベルの塔」と呼ばれていた建造物は、「エ・テメン・アン・キ」だったのではないかと言われているのです。

この発見された「ジッグラト(ジグラット)」周辺地域で、古代メソポタミア時代の洪水の痕跡が見つかれば、「ジッグラット(ジグラット)」が避難シェルターだったいう証拠になります。

旧約聖書に書かれた「傲慢の象徴バベルの塔」も、実は「避難の象徴バベルの塔」だったと認識が変わるかもしれないのです。

しかし、現在のバグダッド周辺では社会的な混乱から、遺跡の保存や調査などに手が回っていないのが現状なのです。






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