第5話 闇に消えたジャック・ザ・リッパー
120年前の霧の都ロンドン。
産業革命のさなか、事件は起こりました。
時代が求めた連続殺人。
19世紀最初で最後の未解決事件。
自ら「切り裂きジャック」と名乗り警察をあざ笑うように5人の女性を、次々と惨殺した犯人は誰だったのでしょうか?
そして、どんな人物だったのでしょうか?
今でも、切り裂きジャックと検索をかけると、様々な情報が出てきます。
切り裂きジャック女性説が有名ですが、リッパロロジスト(切り裂きジャック研究家)の間では女性説はわりと有名な説です。
同じ女性説でも、妹の復讐のために殺害したロシア人女性説。
堕胎手術の失敗を隠すために、殺人に見せかけた助産師説。
男女の恋愛がらみの殺人説。
それらは、2006年日本博学倶楽部刊行の書籍ですでに紹介されています。
本当に、切り裂きジャックは女性だったのでしょうか?
切り裂きジャック女性説の根拠とされているの4つ。
1・最後に殺害されたメアリ・ジェーン・ケリーの部屋から彼女の服が無くなり、暖炉に見知らぬ衣服の燃えかすが残っていた。
2・キャサリン・エドウズの部屋から、女性用ブーツのボタンが見つかった。
3・女性であれば、被害者達に警戒されずに近付ける。
4・女性の象徴である子宮が持ち去られている。
証拠と呼ぶには、あまりにも裏付けが弱すぎます。
他にも、ヴィクトリア女王の身内、クラレンス公犯人説など、リッパロロジスト(切り裂きジャック研究家)の間で今も検証され続けています。
当時のロンドンは霧の都と呼ばれていましたが、実際はそんなにロマンチックな物ではなく、炭を燃やす暖炉の有害な煙と産業革命による化学物質が空気中で結合した光化学スモッグが霧の正体です。
現在でも同じ光景が見られる場所があります。
某国で被害が拡大している黄砂やPM2.5。
それらが、空を覆い隠す映像をみたことがあるでしょう。
あの状態だったのです。
そして、某国と同じように貧富の差も激しい時代でした。
暇を持て余した上流階級は、にわか探偵気取りで犯人を想像しました。
コナン・ドイルもその1人です。
彼は、犯人を女装した男性と推理しました。
下層階級の人々は次は自分かもと怯えながら、生活の為に夜の街に立たざる負えない。そんな時代だったのです。
そんな時代に引き寄せられたように、切り裂きジャックは突然現れ、そして、霧の中に消えていったのです。
では、切り裂きジャックの正体は誰だったのでしょう。
とても興味深い検証をした人がいます。
推理小説のベストセラー作家でもあるパトリシア・コーンウェルです。
彼女は、切り裂きジャックの正体を現在の科学鑑定で突き止めようとしました。
当時から、容疑者の1人として警察からマークされていた人物。
ウォルター・リチャード・シッカート。
著名な画家でもある彼に焦点を当てて、犯人である可能性を検証したのです。
切り裂きジャックの手紙に貼られた切手、それに残された唾液のDNAと、シッカートの私物にあったDNAを鑑定しました。
そして、切り裂きジャックの手紙の文字と、シッカートの手紙の文字を筆跡鑑定したのです。
彼女は、彼の残した絵画に隠された彼の性格をプロファイリングしました。
それらを1つ1つ検証していった結果をまとめたのが、ウォルター・シッカート犯人説です。
この説は、イギリス美術界から批判を浴びました。
なぜなら、彼女の検証結果は状況証拠を集めただけ。
ただの偶然の一致に過ぎない。
イギリス芸術界に多大な影響を与えたシッカートを、切り裂きジャックとするのは、言語道断という訳です。
20世紀、21世紀にもなると、切り裂きジャックを越える連続殺人犯が,
大勢逮捕されています。
彼らの多くは、その猟奇さ、残酷さ、異常性から数多く映画化されるほどです。
少しだけ紹介しましょう。
プレインフィールドの怪物 エド・ゲイン
彼の起こした連続殺人は、あまりにも猟奇的で異常なものでした。
この事件を元に映画「サイコ」が作られました。
「悪魔の生け贄」「羊たちの沈黙」等も、彼の起こした事件を元にしています。
殺人は日常ヘンリー・ルーカス
アメリカ全土を震撼させた連続殺人犯です。
未解決事件の200件以上が、彼の証言によって解決しました。
全て彼の記憶に残っていたのです。
「レッドドラゴン。レクター博士の沈黙」に登場するレクター博士のモデルになっています。
ピエロの殺人鬼ジョン・ゲイシー
地元の有力者、ジョン・ゲイシーですが、彼はピエロの格好でボランティアをしながら、被害者となる人を物色していました。
「it」に登場するキラークラウンは、彼をモデルにしたものです。
彼らの多くはDNAが突然変異を起こしているといわれています。
染色体の数が多い、または少ないのです。
シリアルキラー全てに共通すると言われていますが、実は29万人に1人の確率で、DNAの突然変異は起こっているのです。
勿論、その誰もがシリアルキラーになるわけではありません。
可能性の問題というだけです。
そしてもう1つ、シリアルキラーの特徴があります。
どこか現実を否定するような疑い深い目つき。
真面目そうに見えても歪んで、笑っているように見える口角。
彼らが逮捕されたときに写された写真は、犯行が明らかになっているのに全て笑顔なのに、目は笑っていないのです。
ウォルター・リチャード・シッカートの写真を見たことはありますか?
キラークラウン、ジョン・ゲイシーに雰囲気が似ていませんか?
シッカートの写真が、全て物語っているように感じられます。
彼は、[切り裂きジャックの部屋]という絵画を残しています。
そして、[カンナムタウンの殺人]という絵画も。
マンチェスター美術館に残されている彼の絵画を見ていると、
その奥に被害者達が見え隠れするような、そんな不安に襲われます。
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