大穴温泉の怪

 どうも、精霊です。


 いつもならテンタたち以外の人間は俺と遊ぶ時に少し距離があるんだけど、一緒に温泉に来た兄ちゃんたちはいいわ。

 そういうの無しで遊んでくれるからね。

 体に触れるようになったのが良かったのか?

 肩を並べて酒を飲んでさ。

 いやぁ、長生き爺ちゃんに笑われながらでも来た甲斐があったよ。


 で、問題はその長生き爺ちゃんだよ。

 問題はというか、問題を持ってきた長生き爺ちゃんだな。


 俺たち全員で、温泉から少し下った岩肌の草木も生えないような場所に連れて行かれたんだ。

 そこには大穴が空いてたんだけど、それが先月は無かったって言うんだよ。

 神殿くらいなら一つ入っちゃいそうなくらいの大穴がだよ?

 からかわれてるのかと思ったけど、そうでもないみたいでさ、この事件を解決してくれって俺たちに頼むんだ。

 俺、この爺ちゃんが頼み事するのなんて初めて聞いたよ。

 しかし俺はまだ少し疑ってるわけだ。

 全力でからかいそうな性格してるからね、この爺ちゃん。


 そこで見たのが、ボコボコと沸騰するみたいに弾ける泡。

 しばらくボコボコしてから止まったんだけど、この温泉ぬるいんだよ。

 沸騰するわけないんだ。

 それで爺ちゃんを信じる事にしたんだけど、聞いた話がこんな感じ。


〇温泉はぬるい。

〇泉質がちがう。

〇ひと月以内に突然現れた。

〇時々ボコボコと空気が上がってくる。

〇底がない。

〇どこからかうめき声や悲鳴が聞こえる時がある。


 そんな感じでさ、ほっとけないでしょ?

 だから地精霊のあいつと降りてみる事になったんだよ。

 あいつは嫌だってブツブツ言ってるし、俺なんてせっかく兄ちゃんたちといい感じに楽しんでたんだよ?

 こんな事、上位精霊になってからは初めてなんだよ?

 不運だよね。


 という訳で、今から地精霊を言いくるめて大穴温泉に入ります。

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