パペットと俺。

 どうも、精霊です。


 今日はパペット日和だったからね、ちょっと沖に出たよ。

 遊んでやるのにも、森や建物を壊さない場所じゃなきゃいけないからね。

 楽しくなっちゃってひょうを降らした前科もあるからね。


 パペットって氷の要素が強くてさぁ、力の加減も下手だから人のいない場所でよく練習するんだよ。

 で、今日は沖に出たんだ。

「出掛けるなら晩ごはん狩ってきて」ってセイコに言われたからね。

 頼まれるのは嬉しいんだけど、他の人間たちはヒヤヒヤしながら俺とセイコを見てるんだよ。

 セイコだけ神経の図太さが段違いなのかな。

「皆こんな感じでいいんだよ」

「いえいえ、畏れ多い」

 って、まぁ反応はこんな感じだよね。


 そんで、今日のパペットの相手はヴァンパイアシャーク。

 煮ても焼いても美味しい、淡白な肉。脂の乗った柔らかい肉!

 ……いやいや。

 ちゃんとパペットの練習の事も考えてるんだよ? 強いんだよ、ヴァンパイアシャーク。

 それに、あわよくばフーンの様子を見てきてほしいと思ってさ。

 今日は失敗したけどね。

 俺も一緒に潜ったのが悪かったよね。

 水龍にバレてさ。

 全速力で逃げたんだけど、パペットが水龍に遊んでもらってると思ったみたいではしゃいじゃって。


「パペット! 水龍は水から離れられないから水の外に急いで! 捕まったら俺たちには苦労しか待っていないぞ!」

 でも興奮しきったパペットは聞いてないよね。

 もう氷魔法ビュンビュン飛ばしてさ、楽しそうだったな。

 危なくてこれを人間の近くでさせてあげられないんだよね。

 だから今日は魔法の加減を覚えようとか、水龍に捕まりたくないとかは何もかも忘れてね、思いっきりやらせてあげたよ。

 氷でバキバキの海を、水龍と俺とパペットで泳ぎ回ったよ。

 フーンが呆れたような、疲れたような顔で俺たちを見てたね。

「待って! 俺と水龍を同じ目で見ないで!」

 そう言った俺に、フーンは首を横に振ったんだ。

 フーンは元気でした。


 俺たちは氷の降り注ぐ海の中で、さんざん遊んで帰って来ました。

 ヴァンパイアシャークのムニエル美味かったわ。

 人間たちのご飯ってほんと美味いよね。

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