過去と罪

 どうも、精霊です。


 灰色男、起きたよ。

 とりあえずね、名前はフーン。

 21歳の男。種族は人間。錬金術師。


 それでさぁ、ここからだよ。本題は。

 フーンは錬金術師の集まる国に住んでいたらしいんだけど、この中でも優秀だったらしい。

 そしたら口が悪いもんだから、上の人間から疎まれ、下の人間に嫌われ、同期には笑われた。

 分かると思うけど、壮絶な嫌がらせが始まったんだよね。


 ある時、錬金術師が五人がかりで発動するような大掛かりな術を一人でやるように命じられたんだよな。

 出来るわけないけど、やめるとも言えない。だから仕方なしにやり始めたらしい。

 集まった人間はとても多くて、国の八割は見に来ていたみたいだ。

 フーンを笑いにね。

 フーンは笑われるくらいは慣れていると考えていた。

 そんで術を始めた瞬間、誰かが嫌がらせに別の術を投げつけたんだ。

 けど同じことを考えていた奴が他にも大勢いたから、フーンを中心に激しく術がぶつかり合うわけだ。

 これは俺の想像だけど、魔力爆発が起きたんじゃないかと思うんだよ。

 だから爆発の中心にいたフーンはどこかへ飛ばされたってわけだよ。


 しかしね、空間軸がズレたのか時間軸がズレたのか検討もつかない。

 俺たちのいる世界には錬金術なんて物は無いんだから、まずここじゃあないだろうな。


 そんでその時の事が怖くて、人間が恐ろしくて仕方がないって言うんだよ。

 だから人間を見ると、全力で術を放ってしまうらしい。

 人間から逃げるように精霊の森に来てみたら、たくさんの人間がいたっていうのが事の次第だそうだよ。

 表情を見るからに、しっかり反省はしているみたいなんだよね。

 でもね、でもだよね……


 取り敢えず、これじゃあ何ともしようがないよね。

 まぁ、当てはあるんだよ。

 腐れ縁の地の上位精霊がいるんだけど、そいつは「自分が楽をするためなら何事にも全力で取り組みます!」っていう矛盾もいいとこな奴なんだ。

 そいつに労働力としてフーンを渡す。

 地の精霊たちの洞窟なら滅多に人間は入ってこないし、滝も川もあるから水には困らない。それにちょっとした森もあるから食べ物にも困らない。

 って思ってるんだけど、これでいいのか悩むよね。


 いや……それより今は、このベベルの塔から出れるのか? って事だよね。

 ホント迷宮。

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