第139話 胸さわぎ

 -奥プロ事務所-


「私たちが結婚式終えても、まだ揉めてたよ」

 日高が笑った。

「まあ、お前たちが巻き込まれなくて良かったけどさ。せっかく日高の復帰作だったのにな」

 社長が残念そうに言った。

「飛びますかね」

 太一が言った。

「だな。祥子さん、いろいろ気が立ってるしさ。しゃーないよ」

「あーあ」

 日高が、はるにもたれかかっていった。

「大丈夫だよ。日高ちゃんに次のドラマのオファー来てるから」

 太一が言った。

「え、うそ」

 再び、日高は上身からだをもたげた。

「【かりそめ姉妹2】だって」

「えー! 何でえ」

 はるが叫んだ。

「でさ。相手がさ、新人の内田レナちゃんなんだって」

「内田レナ? アーティストじゃん」

「そ。十九歳だって」

「え⁉︎ それと姉妹役なの?」

「また親が付き合ってるんだって。で、二人でアイドルのユニット役で、んでもって恋人同士なんだってさ」

「何それー! 相方に手を出す気ー!」

 はるが、日高の肩を掴んだ。

「はる、落ち着こ」

 日高が、はるの肩に手を置いた。

「………」

「いいじゃん、幻とはいえ、結婚式まで挙げたんだからさ」

「そうだぞー、はる。そろそろ日高に仕事してもらわないと、みーんな困るんだ」

 社長も畳み掛けた。

「………」

(絶対嫌な予感しかしない)

 頰を膨らませた。



(何これ)

 日高の帰宅の遅い日。

 日高主演の新ドラマ、【かりそめ姉妹2】を観ていて、はるは絶句した。

 今までの共演者としてるキスと、全然違う。

 長いだけじゃない。

 感情がだだ漏れなんだ。

 日高は。

 完全に恋をしていた。

 私以外の。

 内田レあの人ナに。

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