第112話 重圧

「今度の追加公演、北川先生が総合演出になって、日高には演出で入ってくれって言うんだ。で、主演をはるにって言うんだよ」

「えっ、シャルロットでいくの⁉︎」

「ああ。何か、やっぱりシャルロットが心に残るらしいんだ。二回も三回も観に来てくれるお客さんがいるみたいなんだよね」

「だよねー。はるの演技は、演技じゃないからねー」

 日高も、何度か頷いた。

「だけど、一つ問題があってな」

「何?」

「はるの成人式の、振袖のCMやらイベントを祥子さんが大々的にやるって言うんだよ」

「うわー、出たよ、ほら」

 ソファに背をつけて。

 日高は。

「ほーら、出た。やっぱり出た」

「そりゃそうだろ。はる、来年成人式迎えるんだからさ。はるを寵愛ちょうあいしている祥子さんが、YOSHIMURAの財力傾けてでもやるって公言してる以上、とんでもないことになるのは目に見えてるだろ」

「どうかと思いますけどねー」

 いらいらしたように、日高は、そっぽを向いて。

「まー。とりあえず本題に戻すけど、シャルロ主演ットの重圧も、YOSHIMURAのイベントの重圧も、はる一人じゃ荷が重すぎんだよ」

「……うん」

「だからさ、お前がはるを支えてやってくれよ。なっ、頼むよ。それに、はる自身二十歳になるっていう、はるなりの思いもあるんだし。わかるだろ」

「うん」

 日高は頷いた。

「はるが乗り切れるかどうかは、日高、お前の肩にかかってるんだ。頼むな」

「わかった」

 日高は、もう一度。

 大きく頷いた。

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