第99話 真実

 -奥プロ事務所-


「あ、それ、全然違う」

 冬ちゃんが、紅茶を飲みながら、軽々と言った。

「日高ちゃんね、この間、うちらが頼み込んでゲストで来てもらったんだけど、うちらの着替えるトコないのにびっくりしてて。で、うちらはいつも通りトイレで着替えたりしてたんだけど、そこ、男女兼用で。スタッフも普通に入って来るのね。で、日高ちゃんが、自分の控え室をうちらに貸していいかって、スタッフに聞いたら、ダメだって言うからさ。だったら着替えてる間くらい、入ってくるなって言ってくれたんだ。したら、クソスタッフがそこだけ切り取って文句つけたんだよ」

 冬ちゃんの言葉に。

「やっちまったぁー!」

 って。

 社長は頭を抱えて。

「でさ、ずっとうちらと一緒にいてくれて。したら、やっぱ、人気女優に向こうも気ィ使うし。ちょっとだけ、待遇改善したよ。トイレ、男女別になったしね」

(そっか)

 はるは。

 やっぱり、貴子たちの言葉の通りだった事に、本当に安心していた。

 それからは、社長自らが何度も、会場がどこであれ、足を運ぶようになって。

 冬ちゃんたちが安心してお仕事が出来るようになっていった。



 社長は、日高に謝りに謝った。

 でも。

「社長、私もゴメン」

 日高も謝った。

「えっ」

「カレーの件は、ホント。だってさー、はるのカレーはニンジン入ってないのにさー、何かロケのカレー、超ニンジン入ってるしさー」

 日高の言葉に。

「えっ、ニンジン、私入れてるよ」

 って、はるが言った。

「え、ウソ」

「ホント。日高が食べないで残すから、小さく刻んでるの」

「えー、そうなのー」

「いやいやいや。日高、やっぱお前、そこ座れ」

「えー」

「ついでに、はるも座れ」

「えー、何で。私関係ないじゃん」

「甘やかしすぎだ」

 そんでもって。

 やっぱり、二人は。

 社長からのお小言を頂いた。

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