第59話 太陽の指輪

 -YOSHIMURA本社-


「ごめんね、急にまた呼び出しちゃって」

「私は全然大丈夫ですけど、祥子さん、帰国したばかりなんじゃないですか」

「そうなんだけどね。お土産渡したくて」

 そう言って。

 木の箱の小さなジュエリーボックスを、はるに手渡した。

「わ、かわいい。木なんですね」

「開けてみて」

 はるが開けた。

「あっ、これって!」

 そこにあったのは。

 日高が無くしたはずの、太陽の指輪だった。

「どうして、これが」

「ネットオークションに出てたらしいの。スタッフの一人から連絡があって。はるちゃんの月の指輪のペアのだって、すぐわかったから、いくらかかってもいいからって言って競り落としてもらったの」

「これ………、本当に大事な物だったんです。世界に一つしかないっていう物だから」

 はるは涙ぐんでそう言った。

「祥子さん、ありがとうございます」

「うん、良かった。喜んでくれて」

 はるの肩に手を置いて。

 祥子もにっこりと笑った。



「これ………」

「祥子さんがね、ネットオークションに出されてるって知って、スタッフに指示して競り落としてくれたの」

 はるは、太陽の指輪を日高に渡した。

 日高は、指輪を透かしてみた。

 そして、はるの名前を。

 何度も何度も眺めていた。

 そのあと。

「ちょっと、事務所に行ってくる」

 日高は、事務所に戻ると、社長を通して、祥子さんと電話で話をして、何度も何度も何度もお礼を言った、と、はるは後から聞いた。

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