第60話 日高とはると姫花

 -YOSHIMURA本社-


 はるたちの着る、浴衣の仮縫いが出来たという知らせを受けて、はると関君が本社に行った時だった。

「あれっ」

 用意されていた浴衣は三枚かけられていて。

「ごめんごめん、会議がのびちゃった」

 そこへ、祥子が姿を見せた。

「あの」

「うん、じゃ、はるちゃんたち、そこ座って。ちょっとCMのコンセプト、変更してみたの」

 関君と、はるが席につくと、祥子はおもむろに切り出した。

「今回も二つのシリーズにしてみたんだけど、第一シリーズ目は、姫ちゃんとはるちゃんが浴衣を着てお祭りに行くんだけど、本当のお祭り会場を作っちゃおうって思っているのね」

「本物の?」

「そう。本当にお祭りを楽しんでくれればいいから。姫ちゃんとはまだ陽の高いうちに、デートを楽しんでくれればいいわ」

「わかりました」

 はるは頷いた。

「でね、ここからなんだけど、第二シリーズ目は、日高ちゃんを起用しようと思っているの」

「えっ」

 驚いて、はるは、祥子を見つめた。

「時間がなくて選ばせてあげられなくて、申し訳ないんだけど、私が日高ちゃんをイメージして作ったの」

「それが、あの黄色いのですか」

 はるが尋ねた。

「そう。はるちゃんが水色、姫ちゃんが赤、日高ちゃんが黄色ね」

 黄色の生地に、オレンジの向日葵があしらわれた、その浴衣は、はるから見ても、日高のイメージにぴったりだった。

「でね。夜の花火大会には、日高ちゃんがはるちゃんと一緒に見に行くっていうコンセプトでね。はるちゃんは、両極にゆれている女心を演じてほしいの」

(また、すごいことを)

 はるは、何といっていいかわからず、黙っていた。

「わかりました。持ち帰って検討してみます」

 関君も即答を避けて持ち帰ってくれた。



 -奥プロ事務所-


「僕は面白いと思うけどな。日高はどうだ」

 日高は、少し考えて。

「私もやってみたい」

 そう言った日高の顔は、女優の顔になっていた。

 数日後。


 -YOSHIMURA本社-


 マネージャー二人が後方で見守る中で、はるを中央に、日高と姫花の三人が並んで座り、その前に祥子が座ると、祥子はいきなり本題を切り出した。

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