第58話 そのあと

「おいぃ、関君、悪いけどお茶くれ」

 社長は、ソファに倒れ込んだ。

 日高も戻って来て、

「日高、大丈夫だった?」

 はるが駆け寄った。

「大丈夫」

 大きく日高は頷いた。

「立派だったよ。きちんと受け答え出来てたし、たぶん大丈夫だよ」

 太一の言葉に、社長は起き上がって、

「大丈夫じゃねえだろぉ、おい、お前ら、そこ座れ」

 はると日高は、社長の前のソファに並んで座った。

「ふたりとも、恋愛五ヶ条言ってみろ」

 一、人前で手はつなぎません。

 二、人前でキスは致しません。

 三、人前で愛情表現を致しません。

 四、記録に残る事は致しません。

「いいな。わかったな。最後の記者さんの、あれ、最終警告だからな。絶対守れよ」

 社長の言葉に、

「はい」

 と、はるは、しおらしく頷いたけど。

「四ヶ条しかなかったね」

 って、日高がはるに囁いて。

「こらァ、日高ァ!」

 って。

 社長にキレられていた。



 空港からの帰りの車内で。

 書類に目を通しながら、

「黒沢、あれから他にはるちゃんのことでわかったことあった?」

 祥子が言った。

「いえ、それが。あれから新しい情報はありませんでした」

「そう。不思議よね。契約する上での身辺調査で、名門出身っていうのはわかったんだけど。後はあまりわからないのよね」

「は、申し訳ありません」

「ま、いいわ。また何かあれば教えて」

「はい」

 祥子は、投げるように書類を脇に置くと、車窓へ目を凝らした。

(あの、お土産、気に入ってくれるかしら)

 そんなことを思いながら。

「あ、はるちゃん?これからちょっと来てくれない?」

 祥子は、はるを呼び出した。

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