第49話 浴衣

 -YOSHIMURA本社-


「そっかあ、それはこじらせたねー」

「言ってるうちに止まらなくなっちゃって」

 はるも笑った。

 祥子のデスクの前の机に座って、はるも浴衣をタブレットで選びながら、祥子に目をやった。

「残念だったなー」

 祥子が立ち上がって、はるの近くに歩み寄った。

「はるちゃんが未成年じゃなかったら、“私じゃだめ?”って言って、立候補するのになー」

「また、そういう事を言うからー」

「本当だよ。さすがに未成年に手は出せないからねー。大人になるのを楽しみに待ってるからね」

 はるも笑って。

「良かったあ、はるちゃん、笑ってくれて。下で出迎えた時、この世の終わりみたいな顔してたよ」

「うそ?」

「ホント。はるちゃんは、やっぱり笑顔が一番だからね」

 そう言って。

「あ、でも、私の仕事上のパートナーの席も、人生のパートナーの席も、ガラ空きだからね。それだけ覚えておいて」

 祥子は、微笑わらった。

(来て良かった)

 はるは、笑顔のまま、タブレットに視線を落とした。

「私、これにする」

 水色の生地に、ピンクと赤の朝顔が彩られている浴衣を指差した。

「あっすごい!これね、私がデザインしたやつなの。この中で、三点だけ、全部私が携わったやつがあってね。そのうちの一点がこれなんだ」

「えー、そうなの?」

「やっぱり、私とはるちゃんは気が合うんだねー」

 って。

 祥子の言葉に。

「ですね」

 笑顔ではるは頷いた。

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