第50話 別居

 はるが大学から戻ると、はるの部屋にあった日高の荷物が、きれいに無くなっていた。

(やっぱ、出てっちゃったのか)

 少しだけ。

 期待していた。

 -はるちゃんごめんね-

 って。

 いつもみたいに、言ってきてくれること。

「一人だと広いんだよなあ」

 呟いた。

 その時。

 着信音が鳴って。

 相手は。

 祥子だった。



「今日は運転手さんがいるんですね」

「うん、ちょっと今日は遠くてねー。疲れちゃうからお願いしたの。急に誘って悪かったね」

 二人は向かい合って後部座席に座っていた。

「ううん。一人でどうしようかと思ってたから」

「やっぱり、出てっちゃったの?日高ちゃん」

「うん。大学から帰ったら荷物が無くて」

「そっか。寂しいね」

「そうですね」

 はるは、俯いた。

 すると、

「じゃあさ、たまには私に付き合ってよ。私も夕食一人で食べてもおいしくないもの」

「……はい」

「決まりね」

 祥子は微笑わらった。

 やがて車は、ある建物の前で止まった。

「ここって………」

「私ん

 そこは。

 大学の建物なんかよりもはるかに大きくて。

 大学の敷地なんかよりはるかに広い。

 祥子の本宅だった。

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