第31話 断はる宣言

 -奥プロ事務所-

「私、明日から二ヶ月、はるちゃん断ちするから!」

 日高が、高らかに宣言をした。

「どういうこと?」

 はるが見上げた。

「ほー。日高の本気を見せてくれるのか」

 社長は、目を細めて笑った。

「うん。今度のドラマで最高視聴率の自己ベストを更新してみせる」

「すごいなー、日高さん。がんばって下さいね」

 関君が、二人の前に、紅茶を置いていった。

「でも、どうして急に?」

 太一が言った。

「太一、主題歌、サキさんが歌うんだよ」

「あっなるほどね」

「えっ」

 はるが、日高の腕を取って、座らせると、

「サキさんが主題歌、歌うの?」

 覗き込むように、日高を見つめた。

「うん」

「えー、いいなあー」

 はるは、日高の膝に、倒れ込んでいった。

「まあ、主題歌に直接影響あるかわからないけど、視聴率数字とれるかは、うちとしても大事なことだからな。日高、がんばれよ」

「シュールな役だからね、今回。いいと思うよ。もちろん、主役だけの問題じゃないけど、狙う価値はあると思うよ」

 社長も太一も。

 事務所一丸となって。

 日高の断はる宣言をバックアップした。

 でも。

「なあ、何で明日からなんだ?」

 社長の問いに。

「今日は、はるちゃんを充電するから」

 はるの背中を、ポンポン、優しく叩きながら、日高は言った。

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