第24話 最悪の再会
あれから2日ほど経った。
やはり彼は未だに戻らなかった。
皆はきっと寄り道してるのだろう、 とか言っていたがどうにも、 嫌な予感が胸を過ぎっていた。
「本当にどうしたんだろう。 本当に彼は無事なの? 」
そんなことばかり考えてしまっている。
こんな時どうしたらいいんだろう。
私がどこか上の空でフラフラしていると突然、
「ヒッヒッヒッ若返るわい。 」
と、 掠れた声がしたかと思ったら、 突然ヨボヨボのお婆さんにおしりを触られてしまった。
「ひぃや! 」
「いっひっひっひ、 いい反応じゃのひひ。 」
「びっくりした! 占いのお婆さんじゃないの! 急におしりを触るのはやめてよー! 」
「良いじゃろう同じ女なんじゃし、 減るもんじゃなかろ? 」
「全く、 うん? 」
占いのお婆さんって結構、 占い当たるんじゃなかったけ?
確かカランコエがそんなこと言ってたような。
「ねぇねぇお婆さん! カランコエ、 あいつが今どこにいるの知ってる? 」
「さあねえ、 じゃが占いでなら分かるやもしれんよのお。 ヒッヒッヒッ。 」
「お願い! 占って! 」
「しょうがないのお。 しりも触らせてもろうたし、 サービスじゃよ? んぐ、 んぐぐぐぐ。 」
彼女はそういうと、 水晶玉を取り出し何やら呻き声をあげた。
大丈夫?
倒れたりしないよね?
しばらく見守ってみる。
「きぃえええーーー! 見えた! ほれここじゃ。
」
彼女は水晶玉を私に見せてくれた。
そこは何と、 私達がアドミンと戦っていた場所を映していた。
何故まだここに?
もしかして動けないの?
だったら助けに行かないと!
「お婆さんありがとう! 私行かなきゃ! 」
「ちょいとお待ち。 行かん方があんたのためや。 辞めといた方がよか。 」
「えっ、 なんで? 彼は死んでしまってるの!? 」
「んんにゃ、 生きてはおる。 だが行けば少なからずお互いが辛いだろう。 その覚悟はお主にあるのかえ? そこに待つのはただただ、 酷な現実。 耐え難い真実じゃ。 」
「それでも私は行かないと行けないの! 彼が待ってるの、 助けに行きたいの! 」
「そうかいそうかい、 ヒッヒッヒッ。 それなら野暮なことはこれ以上は言わんよ。 あたしらの魔王様を連れ戻しておいでな。 あたしゃここで応援しとるよ。 」
「ありがとう! 」
私はお婆さんに礼を言うと、 早速アネモネの元へと向かった。
「アネモネ! 」
「わっ! びっくりした! スミレじゃないですか! どうしたのです? そんなに慌てて。 はっ! もしや彼が戻られたのですか!? 」
「ううん、 残念ながら。 でも居場所がわかったの! 彼はまだあの場所に残ってるの。 迎えに行きましょ! 」
「本当に!? 良かった、 やはり生きていらしたのですね! えぇ! 行きましょう! 」
私達が早速向かおうとすると、
「待ってください! 私も、 私も行きます! 」
突然ミドナがそう言いながら部屋に入ってきた。
「私もお願いします。 連れて行ってください。 」
「ミドナちゃん。 そうだわ、 アネモネ、 ミドナちゃん、 1つ言っておきたいことがあるの。 」
私はお婆さんに言われたことを2人にも告げた。
「一体どういうことなのでしょう? 生きてはいるのに、 行けば私達が目を背けたくなる真実が待っているとは。 」
「ミドナちゃんは大丈夫? 危険もあるかもしれないよ? 」
「大丈夫です! それに私もカランコエさんを早く助けてあげたい! みんなでまた笑ってこの御屋敷で過ごしたいのです! それに私も自分の身は自分で守れます!」
「ミドナちゃん! 分かった! そこまでの覚悟、
私はもう何も言わない! 」
ミドナちゃんいい子だわ。
なんてよくできた子なのかしら。
「とりあえず行ってみないことにはわからないですね。 一応用心をして向かいましょう! 」
私達はそれぞれ準備を済まし、 早速向かうことにした。
懐かしいあの白い翼が目の前を包み込む。
「これがまだ通用するなんて、 正直安心しました。 」
なんて彼女は少し微笑んでいた。
やっぱり彼に会えるのが嬉しいのは、 私だけではないのね。
早く会いたいな!
「流石にこの街はもはや人気もないですね。 」
「えぇここの主が倒された訳ですから。 住民も皆洗脳されていたみたいです。 洗脳が解けてすぐに皆はこの街を後にしたそうです。 トリーズン様が仰るにはこの街は、 天都ヘッズの下に隠されていたようなのです。 よもやそのような場所にあろうとは、 誰も予想だにしなかったでしょうね。 」
「そうなんだ! 全然気づかなかったな。 そりゃ見つからないわけだ。 」
「えぇ、 巧妙に偽装魔法や、 あらゆる魔法で隠していたみたいですし。 」
私とアネモネが話しながら歩いていると、 突然ミドナが足を止めて壁を眺めていた。
「どうしたの? ミドナちゃん、 壁なんか見つめて……て! 」
「えぇ、 この爪痕。 とても大きいですね。 前にもこんなものが? 」
「いいえ。 私達が来た頃は、 そんなものありませんでしたね。 どうやら先客がいるのやもしれません。 スミレ、 ミドナちゃん、 警戒しながら行きましょう。 」
「えぇ、 確かにこれをつけた奴がいるなら、 相当にヤバいやつだわ。 」
カランコエ、 まさかこいつにやられたの?
いいえ、 あの悪魔を倒したのよ。
そんな小物に負けるわけが無い。
今行くわ。
「遂にここまで戻ってきたのね。 」
「えぇ、 たった数日前のことが何故か、 何年も前のように感じてしまいます。 」
「やっぱりここにも。 きっとここに。 」
「えぇ十分注意しましょう。 」
途中見かけた例の爪痕は、 城に近づくにつれ増えていた。
そして城にも所々につけられていた。
城の中はもっと酷かった。
中にある家財や壁一面に爪痕が残されていた。
この主は何をそんなに怒っているのだろう。
何を恐れているの?
何故そんなに暴れていたのだろう。
なにか急に恐ろしくなってきていた。
「全然現れないね。 」
「え、 ええ、 このまま出てくれなければ助かりますが。 」
そして私達は遂にあの扉の前まで着くことができた。
変に気張っていたので疲れてしまった。
そこらかしこに爪痕等があったのに、 1度もその主らしきものには遭遇しなかった。
そうなるとこの先にいてもおかしくない。
カランコエは本当に無事なのだろうか。
私達は一瞬固唾を飲み込み、 深呼吸をしてから扉を開けた。
暗い部屋に少し陽の光が差し込んでいた。
そしてそれはいた。
奥の玉座に腰掛け目を瞑り、 静かに息をしていた。
そして何故かそいつの腹には剣が刺さっていた。
とても大きな珍しい剣だ。
あれはカランコエが愛用していたのに似ている。
それにしては大きいが。
「シー、 静かにしてればきっと大丈夫。 」
「えぇ、 彼をまず探してみましょう。 」
私達は静かに、 それを起こさないように彼を探した。
だけどどこにもいなかった。
見つからないのだ。
もうこの場所を去ったと言うの?
「おかしい、 いないわ。 どこに行ってしまったの? 」
「えぇ、 どこにもいませんね。 どうしたものでしょう。 」
ふと私はミドナちゃんを見た。
彼女は玉座で鎮座しているそれを凝視していた。
いつ動くか分からないから、 警戒してるのかなと思ったが、 何やら様子がおかしい。
「ミドナちゃん、 あいつがどうかしたの? 」
「スミレさん、 あの魔物さんからなんか懐かしい気がして。 私の気の所為なのかな。 」
そう言われると何故か恐怖心と共に、 懐かしいような感じがしていた。
私達が見つめていると、 突然さっきまで聞こえていた、 規則的な息遣いが聞こえなくなっていた。
そして目があってしまった。
それはまっすぐに私達を見すえていた。
そして暫く沈黙が続く。
その沈黙を破ったのは意外なものだった。
「うぬらはなんぞや。 我の眠りを妨げたからには、 覚悟はできておろうな。」
突然それが喋りだしたのだ。
そしてそれは立ち上がり、 ゆっくり近づいて来る。
なんて威圧感。
「全てを破壊する。 滅殺、 殲滅。 我が望むは混沌のみ。 」
そう言うとそれは私達に襲いかかった。
その図体からは信じられない速さだ。
「ミドナちゃん下がって! ここは私とアネモネでやるわ! 」
「分かりました。 私はサポートに回ります! 」
しっかりしてる子。
頼りにしてるわよ!
「アネモネ! 手を貸してね! こいつを黙らせるよ! 」
「えぇそうねスミレ! この者をこのまま野放しにしてはダメね! やりましょう! 」
私達が臨戦態勢をとる。
何故だろう、 一瞬だがそれの動きが鈍くなったように感じていた。
「うがああああああああぁぁぁ! 」
それは雄叫びをあげ突進をする。
私とアネモネは剣で角を受け止めた。
なんて力。
アネモネが居なければ吹き飛んでたわ。
私達は角を上にはね上げる。
「ナイス! これならやれる! 」
「油断は禁物よ! スミレ! まだよ! 」
私達はすかさず体を剣で斬った。
「うがああああああああああ、 おの、 れ。 破壊あるのみ! 」
それは突然両手の爪を伸ばした。
やはりあの爪痕はあいつが。
再びそれは私達めがけ、 突っ込んで来た。
そして爪を突き刺してきた。
私達は寸前でヒラリと身を躱した。
爪は地面にくい込んだ。
私達はそのまま腕に着地する。
そして角、 目掛けて駆ける。
あれ、 このガントレット何かに似てるような。
「スミレ! 合わせますよ! 」
「えっ? あっいくよ! 」
私の合図で私達は角を斬り落とす。
「ぐぎゃああああああああ! そんな、 馬鹿な。 我が、 この我が。 ううぅ、 何だこれは。 貴様! 」
突然それは喚き出した。
何があったの?
明らかに様子が変だ。
「スミレさん、 アネモネさん大丈夫!? 」
ミドナちゃんが心配して声をかける。
「大丈夫よ! 」
それは突然ミドナちゃんを凝視した。
まずい!
彼女が狙われてる?
私の嫌な感は当たり、 それはミドナちゃん目掛けて突っ込んで行った。
まずいわ!
守らなきゃ!
「きゃー! やめて! 助けて! スミレさん! アネモネさん! カランコエさん!!! 」
それはミドナちゃんを掴みあげていた。
そして長い爪を突き刺そうとしていた。
だが何故か途中で動きが止まり、 手がわずかち震えているように見えた。
なんだか分からないけど今がチャンス!
「アネモネ! あの手を斬り落として! 私はあのお腹の剣をもっと深くねじ込んでやるわ! お願い! 」
「分かりました。 」
彼女は1度頷くと、 ミドナちゃんを掴んでる手を斬り落とした。
そしてミドナちゃんを抱き抱え、 地面に着地したのを確認し、 私は悶えているそれの頭を蹴り地面に倒れさせた。
そしてそれの腹に刺さっていた剣を突き刺した。
私が突き刺そうとした瞬間、 それと目が合った。
それは目に少し涙を浮かべて、 優しい目で私に微笑んでいた。
そしてそれは小さい声で、
「ありがとう。 」
と言ったように聞こえた。
──グサッ──
鈍い音が響き渡る。
そして静寂が再び訪れた。
そしてそれも静かになった。
すると何故かミドナちゃんと、 それが光に包まれた。
何が起きたの?
「ミドナさん、 一体これは!? 」
どうやらアネモネにも見えてるようだ。
しばらくあたふたしていると、 光は収まった。
するとなんと、 ミドナちゃんは人間になっていた。
魔人である証の角や、 小さなしっぽは消えていた。
「ミドナちゃん! 人間に戻ってるよ! 」
「これは一体! 」
「えっ! 人間に!? うそ! 」
ミドナちゃんは自分の頭に手をあてがった。
「ほんとだ! ない! 角もしっぽもない! でもなんで? そう言えばその魔物さんも…………きゃーーーーー! 」
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