第20話 決戦

またここに来たんだな。

虚飾に満ちたこの街に。

待ってろよ、 今その傲慢な鼻っ柱を折ってやる。



「無事着いたみたいだな。 やはり大通りは突破は無理か。 」



俺たちが予期してたように、 大通りは信徒達で埋め尽くされていた。

どいつもこいつも殺気立っている。

流石にこいつらを相手にするのは、 骨が折れるだろうな。



「路地裏も厳しそうです。 通路の死角になりそうなところや、 屋根の上にも配置されているみたいですわ。 これはあのルートしか無さそうですね。 」



やはりそうなるか。

出来ることなら路地裏が良かったな。

であらば仕方ない。



「よし予定通り、 地下ルートで行くぞ! 」



俺たちはすぐさまマンホールへと向かった。



「へ!? あ、あああ、 あんた! ここって! 」



スミレが慌てて俺を止める。



「ん? ああ下水道だ。 行くぞ! 」



「下水道だ、 じゃないわよ! 冗談よね? 」



「何を言ってるんだ、 さあ行くぞ! 」



スミレを無視して下水道に入る。



「えっ! えっ! 皆も! わかったわよ! 行くわよ! 」



うっ!

やはり臭い!

流石にきつい!

女衆には酷だな。

早くあれをせねば。



「あっー! 臭い! 鼻が! 」



「うっ、 これは予想してるよりも辛いです。 」



フッフッフッ、 今楽にしてやろう。 」



「何よ、 鼻つまみながら。 頭でおかしくなったの? 」



そう言うスミレも鼻つまんで変な声だ。



「おや? そんなこと言っていいのかな? ではお前以外にかけようかな。 オールマイティヴェール! 」



「あれ! 臭くない! 凄い! 」



「グッフッフッフ。 では行こうか諸君! 」



「えっ! ずるい! 私にもやって! 」



「ほー? スミレ殿はいらないのでは? 」



「うー、 わかったわよ! お願い、 します。 」



「仕方ないなあ、 ほれ。 」



「凄い! 本当に臭わない! 」



「さ! 行くぞ! 」



俺たちはとにかく下水道を進むことにした。

オールマイティヴェールのおかげで臭いも、 汚れも、 一切寄せ付けずに進むことが出来る。

おかげでスイスイ進むことが出来た。



「待て! なにか聞こえる。 」



順調に進んでいると、 何者かの気配を感じた。

ちっやはりここにも仕込んでるか?

俺たちは慎重に壁から様子を覗く。

通路の真ん中を何やら蠢いている。

なんだあれ、 半魚人みたいな風貌だな。



「あれはギョラン! でもなぜこの街の地下に。 」



「アネモネ知ってるのか? 」



「ええ、 あれはアンダーグランドに生息する魔物です。 こんなとこに居るなんておかしいのです。 魔物がここに来ることなんて不可能。 何故かんなところに。 」



「なるほどな。 確かにそんな奴がここにいるのは不自然だな。 あれは強いか? 」



「そこまでは強くはないですよ。 雑魚の類です。 」



「それじゃ失礼して、 」



俺は壁から身を出し、 すぐさまギョランの目の前まで距離を詰める。



「ギョ? ギョギョ! 」



俺は奴が俺に気づいた瞬間、 アサシンブレードを喉元に突き刺した。



「ギョギョー…… 」



ギョランは静かに崩れ落ちた。



「お見事です。 流石ですね! 」



「こいつには悪いが、 こんなとこで足止めを食らう訳には行かないしな。 さあ行こう。 」



俺たちは再び下水道を走り始めた。

道中何体か魔物と鉢合わせたが、 皆で協力してなんとか突破できている。

特に危なげも無く、 出口まで到達することが出来た。



「やっと城の手前まで来れたか。 」



「やっとこんな所出れるのね。 」



「皆もこんな所に連れてきてしまって、 悪かった。 やっと出れるな。 覚悟はいいか? 」



「基、 既にできています。 」



「私も。 」



「もちろん出来てますわ。 」



「今更よ、 当たり前に決まってるでしょ。 」



「よし、 行くぞ! 」



俺たちは外へ続くハシゴを登った。

やっと外へ出れた!

そんな長い間地下にいた訳ではないが、 地上が恋しくなってしまった。



「相変わらず悪趣味な城だ。 」



「えっ! ここにあの人が居るの? 何よこれ、 こんなのまるで神じゃなくて王じゃない。 」



「直接合えばもっとムカつくと思うぞ。 」



「このまま裏口から入りましょう。 正面よりはマシでしょう。 」



「ああそうだな。 ポイントマンは任せろ。 」



「ポイント?? なんですかそれ? 」



「え、 ああ俺が先導するってこと。 」



「なるほど、 でもいいのですか? 」



「大体の間取りは分かるから、 任せてくれ。 よし行くぞ。 」



俺はゆっくり扉に手をかける。

皆に目配せをし、 合図をする。

合図で扉を開け、 中に入った。

裏口には誰もいないようだ。



「いいぞ誰もいないみたいだ。 」



俺の合図で皆が入ってくる。

しかしここに誰もいないとは。

どういうことか。

普通はここにも配置しそうなもんだが。

やはり自分のとこに全配置、 という事なのだろうか。



「誰もいないみたいだ。 やはりあいつのとこにいるのだろうか。 」



「どうなんでしょう、 ですが警戒するに超したことは無いかと。 」



「ああ、 無論そのつもりだ。 よし奴の所まで慎重に行くぞ! 」



俺たちは最大限警戒しながら進むことにした。

慎重に進む中、 気持ち悪いほどに何も起きず、 誰にも会わない。

逆に不安だ。



「遂にここまで来たな。 そして誰にも会わずにここまで。 てことは奴のとこに居るんだろうな。 」



「ええ、 恐らくそうなのでしょうね。 ここから先は一筋縄では行かないでしょう。 」



「遂にこの時が来たのですね。 」



「皆の目を覚ましてあげましょう! 」



「ふん。 私を殺そうとしたこと、 後悔させてやるわ! 」



「よし、 行くぞ! 」



俺は扉を開けた。



「オーホッホッホッ、 ようやく来たようね。 愚かな魔王に、 裏切りの天使たち。 そしてお子ちゃま勇者。 思ったより遅かったじゃない。 」



「おやおや、 猫かぶるのはやめたのか? 前の方が可愛げあったのになあ。 残念だよ。 」



「ふん! 今更あんたなんかに価値もないわ! 死に腐りなさい。 」



「ほー随分強気だな。 あんたと飼い猫の天使たちだけで、 俺たちとやろうと? 」



実際、 彼女の周りには手下の天使たち以外に見当たらない。

てっきり信徒やら魔物やら、 配置してるもんだと思っていた。



「あは、 あははははは! あんたバカね、 私がそんなアホに見えて? 」



「おう、 バカにしか見えんな。 」



「ぐっ、 良いわ地獄を見してあげる。 そんなに死にたいのなら、 殺してあげるわ! そこの裏切り者共と一緒にね! 」



そう言うと彼女は指をパチンと、 1度鳴らした。

すると目の前に何やら、 黒いモヤのようなものが現れた。

ん、 待てよ。

あの出で立ち、 もしかして!



「おい、 嘘、 だろ。 」

「そんな嘘よ! 」



俺とスミレは同時に声を漏らした。



「なあスミレ、 あれベリゴールじゃないか? 」



「あんたもやっぱりそう思う? でも何で? 確かに倒したはずよ! 」



「まさか! かの悪魔王をなぜ! 」



「アッハッハッハ! なんて言ったってこいつらも、 この私が作ったのだからね! 再び作ることなど他愛ないわ! さあひれ伏しなさい! 」



「うがああああああああぁぁぁ! ここはどこだ? 私は何を…………、 はて、 どこかで見た顔ですね。 思い出しました、 貴様ら私を殺してくれた、 忌まわしき下等生物じゃあありませんか。 」



「さあベリゴールよ、 復讐の機会を与えましょう。 その者らを討ち取るのです。 」



「うるさいですね、 私に指図をするとは。 まあいいでしょう。 私は奴らに復讐出来ればそれでよいので。 」



「ちっ、 失敗作め。 まあいいお前の力をこの私に見せなさい。 さあ反逆者たちよ、 踊って見せなさい! 」



またあの化け物と戦わないといけないのか。

だが1度勝っているし、 仲間も多い。

勝ってやるさ!



「そうねぇ、 これじゃフェアじゃないわ。 お前達、 裏切り者とお子ちゃまの相手をしてあげなさい。 」



彼女がそう言うと、 手下の天使たちがスミレや、 アネモネらに立ち塞がった。

まあそうなるよな。

だが1人でも勝ってやるさ!



「ふん先ずは貴様からだ。 次は小娘を直ぐに殺してあげますよ。 」



「おやおや1度俺に負けてるの、 お忘れかな? そんなに記憶力悪いおじいちゃんとはな。 直ぐに思い出させてあげますよ、 おじいちゃん。 」



「……貴様、 死ねええええ! 」



やつが逆上して襲いかかる。

なんだ、 前よりも明らかに強くなってる。

何故だ?

速いぞ!



「おかしいなあ、 お前そんなに強かったけ? 」



「あなたはそんなに弱かったですかねえ。 」



言ってくれるぜ。

これもあの女の力ということか?

だが負ける訳にはいかないな。



「直ぐに楽にしてさしあげますよ。 さあ苦痛の悲鳴を聞かせてください。 」



「異議あり! そうは問屋が卸さない。 お前の方こそあの時のように、 悲痛に満ちた声を漏らすことになるだろう! 」



「今度こそ、 しねぇ!!!! 」



今1度、 やつが俺に斬りかかってくる。

こんな所で消耗する訳には行かない。

ここで決める!



「今楽にしてやるよ、 マテリアチェンジ! アームソード! 」



俺は両腕を剣に変質させた。

剣を目の前で交差させる。

息を整え、 集中する。

……今だ!

俺は一直線に突撃してくる奴に、 すれ違いざまに切り刻んだ。



「ふっ、 その程度ですか? そんなものでは私はし……なん、 だと。 ぐっ、 ふ。 」



やつの体がバラバラに崩れ去った。



「な、 私の創作物ではマシなやつが。 ふ、 ふんなかなかやるでは無いか。 少し甘く見てたようね。 」



「さあ次はあんただ。 」



俺は腕を戻した。

そして彼女にセンチネルを突きつける。



「まだよ、 さあもっと私を楽しませて頂戴。 」



今度は何をするつもりなんだ。

彼女がまたしても指をパチンと弾く。

そして今度は天井から檻のようなものが落ちてくる。

そして勝手に扉が開かれる。

そして中から1人の女性が現れる。

一体彼女は誰なんだ。

…………

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