第17話 戦略会議

「なるほど、 大体の話は分かりました。 カランコエ様が信じた御方なら、 我々も最早何も言いますまい。 」

「すまないシグルド、 そういう事だから頼む。 」

俺たちは街に着くなりシグルドらを集め、 事の経緯を話した。

みんなは最初こそ不安にはなっていが、 何とか理解してくれたようだ。

ほんとにいつも皆には助けられる。

とりあえず細かい話は後日にすることになった。

これで一応彼女たちも安全だろう。

彼女達はそれぞれ部屋へと案内してもらっていた。

この館も随分と賑やかになったものだ。

俺が来た時はそうでもなかったのにな。

賑やかなのはいい事だ。

「さてとりあえず1段落ついたな。 俺も部屋に戻るか。 」

今日も疲れたな。

ここんとこ忙しい。

だが少しづつ、 少しづつだが近づいてきている。

そんな気がする。

だから頑張れる。

まあやっとスタート地点に立てた、 と言った方がいいのかもしれないな。

果たしてあの神に勝てるのだろうか。

やつが何を企んでるか知らないが、 誰が見てもやつを野放しにするのは悪手だろう。

皆は騙されているに過ぎない。

もしかしたらこの魔人族が長年悩んでる問題、 やつも1枚噛んでいるのでは?

アネモネらも言っていたな。

やつが前回俺に言った例の条件、 実は嘘だったらしいし。

やはり、 彼女らが味方についてくれたのは俺にとって大きなプラスだったな。

彼女達の勇気には感謝しなければ。

彼女達も守らなければ。

いや、 誰1人失いたくはない。

この戦い、 一筋縄では行かないだろうけど。

万全を期さなければな。

まさか俺がこんなことをすることになるなんてな。

あの時の俺はそんなこと考えられなかっただろうな。

人生何が起きるか分かったもんじゃないな。

俺がボーッと薄ら考え事をしていると、

──コンコン──

と、 戸を叩く音が聞こえた。

「ほい? 」

俺が腑抜けた返事をすると、

「カランコエさん、 今少しいいです? 」

おっその声はアネモネか?

「ああ、 開いてるよ。 どうぞ。 」

「それじゃ失礼しますです。 」

「どうだ? 部屋は気に入ってくれたか? 」

「えぇ、 とても気に入っております! 寛大な処置に皆も喜んでます! 」

「そうか、 それなら良かった。 ここなら恐らく安全だから大丈夫だと思うよ。 」

「えぇ、 そのようですね。 ですが長くはいれません。 ここの皆様を巻き込んでしまうかもしれませんし。 」

優しいのな、 アネモネも。

「大丈夫、 そんなことはならんよ。 させんし。 まあ確かに時間をかける訳には、 いかないのも事実だけど。 時間を与えれば、 奴に付け入る隙が減ってしまうかも。 」

「そうですね、 準備は念入りに、 そして迅速にせねば。 」

「なぁ、 本当にいいのか? 一応お前たちの主だろ? その、 覚悟は出来るてるのか? 」

彼女は少し考えてから、

「えぇ、 私たちは決めたのです。 どんな苦難があろうと、 あの暴君は私達が止める、 いえ、 私達がやらないといけないのです。 だから覚悟は出来てるです! 」

野暮な事聞いてしまったか。

「そうだな、 俺も全力でフォローする! よろしくな。 そうだ、 それで何の用だ? 」

「用と言ってもただ礼を言いたかっただけです。 ありがとう、 そ、 それじゃあおやすみです。 」

彼女は少し顔を赤らめながら、 部屋から退散して行った。

まあ面と向かって礼を言うのは恥ずかしいが、 変なやつだな。

なんだろう、 この世界の女子は変なやつが多いのかな?

まあ俺がいた世界よりはマシか。

この世界の女子は嫌いになれない。

まあ嫌な奴はいないことは無いが。

俺がこの世界で死んだらどうなるのかな。

俺がいた世界には輪廻転生と言うのがある。

そういえばラインハルトとか、 霊体で特定の場所で現れたな。

そんな事が俺もできるのか?

まああれは1部のやつだけなんだろうが。

まあ死後のことなんてどうでもいいか。

とりあえず今は、 目の前の敵のことを考えないとな。

とりあえず今日はもう寝よう。

明日に備えなければ。

…………

今日は早速作戦会議をすることになっている。

「さてそろそろ行くとするか。 」

皆はもう集まっているようだ。

「遅れてすまない。 そして皆忙しい所、 すまないな。 知っての通り、 神の眷属である天使の1部の方が我らに協力してくれる。 遂に俺たちは、 神への対抗手段を得ることに成功した。 そこで皆の知恵を借りたい。 どうすれば我らは神を、 その玉座から引きずり下ろすことが出来るかを。 」

「と申されましても神は謎が多すぎます。 そちらの天使の皆様方ならまだしも、 我々が何のお役に立てましょうか。 」

ダリルが聞いてきた。

「そう思うのは自然だろう。 だからこそだ。 確かに、 神については彼女らが詳しいだろう。 確かに俺たちは知らないことが多い。 だがだからこそ、 俺たちにしか浮かばない案もあろう。 それに彼女達が知らないことも、 俺たちなら知ってるかもしれない。 三人寄れば文殊の知恵、 という言葉がある。 こういう時は人が多い方が思いもよらぬ案が出るかも、 だろ? 」

「なるほど、 分かりました! 我々もできる限りお役に立てるよう、 尽力します! 」

「ありがとう! 皆もよろしく頼む! 」

俄然皆もやる気だ。

「そうだなまずはアネモネ、 あいつがいる場所に行くにはやはり、 君達でないと無理なんだよな? 」

「ええ、 そうです。 1部のものしか出入りは出来ません。 外部の者も数人までしか連れて行けません。 」

「なるほど、 少数精鋭で行くしかないか。 まあ奴が大人しくしてるとも思えないからな。 この街の守りにも兵力は欲しいからな。 自ずとそうなるとは考えていたが。 やつの戦力は何が考えられるかな。 」

「そうですね、 先ず考えられるのは残り大天使だち。 でしょうか。 」

プリムラがそう呟いた。

「まあそれは大いに有り得るな。 いいのか? 一応お前たちの仲間だろ? 」

「そうですね、 彼女達も悪意は無いでしょう。 ですが崇拝する神を守るためなら、 何でもするでしょう。 彼女達が私達に立ちはだかるのなら、 覚悟はしてます。 」

そういう彼女達は少々悲しそうであった。

なるべく彼女達が争うのは避けたいな。

だが戦いは避けられないか。

「他には天使達の使い魔、 アドミンの使い魔達も出てくるでしょう。 恐らくそんな所ではかと? 」

「なるほど。 司祭らの彼女の信奉者や、 他の勇者とかが出てくる可能性はどうだろうか。 」

「それは無いかなと、 そもそもアドミンの居室には、 本当に限られた人しか入ることは許されません。 それが例え勇者や、 彼女の熱心な教徒であっても。 彼女はそういうのに煩いのですよ。 ただそこに辿り着くまでに、 その者らと戦うことにはなるかもしれませんね。 彼女の居室に直で行ければいいのですがね。 」

「なるほど、 なるべくアドミンとやり合う前に、 無駄な戦闘はなるべく避けたいな。 抜け道とかあればいいんだが。 まあその辺はおいおいかな。 」

「さて次だが。 先も言ったように、 奴の所へ攻め込むのは少数になるだろう。 だから残りは街を守ってもらいと思ってる。 恐らく奴がこの街に刺客を差し向けることは、 目に見えてる。

前にも奴はこの街を襲わせてるしな。 だから守りは固めるべきだろう。 」

「そうですね、 恐らく何かしらの手は打ってくるでしょう。 こちらも何かしらの対策は必要かと。 」

「シグルド達がいれば大丈夫だとは思うが、 俺もやれる限りのことはしよう。 」

前回の事もある。

シグルドやダリルは確かに強い。

だがそれだけでは守りきるのも辛かろう。

「何かもっといい手があるといいんだが。 」

何かいい手はないものか。

今居る戦力だけではどうも心許ない。

俺達も極力戦力を割きたくはない。

だが街の守りを手薄にしておくのも億劫だ。

正直、 前回以上の戦力を投入されれば陥落するだろう。

「正直現状では厳しい所はあります。 何かしら手を考えねば。 元々この街には戦闘員がそこまでおりませんから。 」

ふーむ、 手詰まりか。

現段階の戦力ではどう考えても、 足りてない。

どうしたものか。

やはりこちらの戦力を割くしかないのか?

「あ、 あの。 」

俺たちが頭を抱え悩んでいると、 ミドナが声を上げた。

「ん? ミドナどうした? 」

「あの、 昔お父様が言っていたの。 もし街が危険な目にあったら、 それに対抗する物があるって。 もしかしたらそれなら何とかなるんじゃないかな? 」

「本当か! そんなものがあるのか! 」

「うん、 使うことは無いだろうって言ってたけど、 今がその時なのでは! 」

その話が本当なら願ったり叶ったりだ。

これで街の防衛は何とかなるかな?

「ありがとうミドナ! 後で詳しいことを教えてくれ。 」

よしこれで大まかには決まったな。

「よし! 大体の状況はこれで決まったな! 先ず俺とスミレ、 そしてアネモネ達が乗り込む。 その間の守りは他の皆に任せたい。 街の守り方はシグルドらに任せる。 最悪、 街は捨てても構わない。 生き残ることを優先してくれ。 どうだろう、 何か質問があるものは? 」

皆何も無いようだ。

「よし、 これで大まかな話し合いは終わりにする。 後は各自準備を始めてくれ! 必要なものとかは各自相談して、 用意してくれ。 それではみなの健闘を祈る! 解散! 」

俺の号令で各々動き始めた。

「ミドナ、 さっきの話だが早速教えてくれ。 」

「うん! 分かった! じゃあ着いてきて! 」

とりあえずミドナの後を追う。

ミドナは、 ラインハルトの部屋の前で止まった。

「着いたよ! お父様の部屋にあるの! 」

「そうなんだ。 」

そう言えばあまり来たこと無かったな。

「確かここだったかな。 」

ミドナが何やら棚にある灯りを弄ってる。

──カチッ──

すると何やらスイッチのような音がした。

と思ったら今度は本棚の1つが動き出した。

「な!? 隠し扉!? そんなものがあるのか! 」

「さあこっちだよ! 」

ミドナが俺を引っ張っていく。

おぉ!

これはすごい。

色々な本や武器やら、 珍しい物が沢山飾ってある。

いいセンスだ。

「これは凄いな。 」

「ここはお父様の秘密の部屋なの。 お父様が冒険して集めた、 珍しい品とかが置いてあるの。 よくここで一緒に遊んだりしたの。 確かここら辺に……あった! はいこれ! 」

そう言うとミドナは1冊の日誌を手渡した。

「これは? 日誌? 」

「うん! これはお父様の日誌なの。 ここに書かれてるらしいの。 ぜひ読んでみて。 」

「ありがとう! 有難く借りていくね。 」

俺は日誌を受け取り、 早速部屋に戻ることにした。

…………


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る