第15話 新しい協力者

俺はしばらく森でゆっくりしていた。

まさかラインハルトに会えるとはな。

それにサバト、 まさかラインハルトの前の魔王だなんて。

なんて言う組み合わせか。

修羅ってるわ。

魔神化、 魔神の力か。

最終手段。

この力使わないで済めばいいのだが。

きっと必要になるだろうな。

イマイチその力の使い方、 分かってないのだけども。

代償か、 まあ別にどうでもいいか。

ガナビーオーケー、 何とかなるよな。

「はあーそれにしても、 ほんとにここはいい所だ。 このままここで朽ちたいよ。 なんてな。 」

実際ここに訪れた人はそう思いそうなもんだ。

死んだはずの2人が実際、 変な空間にいたわけだし。

少し試してみるか。

俺は大きく深呼吸する。

「ディヴィニティ! 」

おぉ凄い!

自分でもわかる!

自分の能力が飛躍的に上がったような気がする。

「おぉ、 これが半覚醒状態か! 体が軽くなったような気がする。 それに魔素量も上がってるし、 力も上がってるな! でかい木も簡単に倒せる! 縮地も前より速くなってる! これなら色々出来ることも増えるな! 基礎の力が上がってるから、 今まで出来なかったことも出来そうだし! ここに来て良かったかも! 」

まさかここまでの収穫があるとはな。

俺はしばらく色々試すことにした。

…………

「ふぅあれこれやってたら、 遅くなってしまったな。 そろそろ戻るかな。 」

俺は大きく深呼吸してから森を出ることにした。

しばらく道を歩いてると、 人の気配を突如感じた。

「おっそこにいるのはもしや。 」

俺が声をかけると、 気配の主は静かに出てきた。

「お久しぶりですね、 カランコエ様。 」

やはりアネモネであった。

「アネモネ久しぶりだな。 なんかあったのか? 」

彼女は少し話しにくそうであった。

「そ、 そうですね。 あなたに聞いて欲しい話があるのです。 聞いていただけますか? 」

やはりかなり言いにくそうだ。

「ま、 まあ無理にはいいよ。 君の心の準備が出来たときで。 」

俺は何を言っているのだろうか。

「だ、 大丈夫です。 このままではいけない、 そう思ったので。 」

なんの事だろう、 何となく想像はつくのだが。

「アドミン様、 私達は彼女を信じて良いのでしょうか。 私は分からなくなってしまいました。 」

やはりその事か。

「なるほど、 だがその前に聞いていいか? そんな事言って大丈夫か? 」

「それはどう言う意味でしょうか? 」

彼女は不思議そうに聞いてきた。

俺はカラミティソードの件で、 知った出来事を彼女に教えた。

彼女は深刻そうな、 そして何かを納得したような表情をしていた。

「やはり、 どうやら私達も、 惑わされていたのかもしれません。 私はなんて罪を。 」

彼女は悲しそうに俯いた。

「それは違うよ、 あいつは自分のために色々な人を利用している。 時には卑劣な手を使ってでもね。 君に罪はない、 俺はそう思うよ。 」

「そんなことは…、 どんな理由があろうと私たちの目が曇って無ければこんなことには。 」

今にも泣きそうだ。

相当に真面目な性格なのだろう。

「そうだね、 それなら罪を償おう。 俺が手伝うよ! 」

「本当ですか? ありがとう、 ございます。 」

少し潤んだ目で見てきた。

それは反則では?

「お、 おう、 任せとけ! 」

「ありがとうございます。 心強いです! 」

「それでさっきの話の続きだけど、 」

「そうでしたね。 すっかり忘れてしまいました。 もうお分かりかと思われますが、 あのお方、 いえアドミンの事です。 」

おっ本題だな。

「ああ聞かせてくれ。 」

「前カランコエ様が言ってた話、 私なりに調べてみたのです。 そうしたら、 どうやらアドミンが裏で糸を引いてたようなのです。 そして彼女はそれをあなたに追求された時、 平気で嘘をつきました。 そして昔、 トリーズンと言う偉大で、 その、 反逆者と呼ばれた大天使がいたのです。 」

トリーズン、 例の日記で出てきた大天使か。

俺も彼女はどうなったのか知りたかった。

「彼女はどうやら、 アドミンに反旗を翻したそうなのです。 恐らく先程カランコエ様が言ってた話のことでしょうが、 本当のところは分かりません。 そしてその後はアドミンに連れられ消息を絶ったそうです。 」

「待ってくれ、 誰もその後を知らないのか!? 」

「えぇ、 アドミンに聞いても何も教えてくれません。 他の天使達も誰も知らないのです。 」

なんて言うことだ。

一体彼女に何があったのか。

果たして無事なのか。

「他にもアドミンは、 色々と怪しいところがあるのです。 私と同じように、 疑問を抱く天使達から色々と聞けました。 何やら彼女には目的があるようなのです。 それはまだ分かりませんが、 とても大きなことを計画してるそうなのです。 」

野望があるわけか。

まあないわけが無いよな。

「野望か、 有り得ることだ。 ん? もしかして他の天使達もお前と同じように思ってるのか? 」

「と言っても1部の天使のみですけどね。 やはりアドミンに渇仰しています。 そのもの達の助力を得るのは不可能に近いかと。 」

なるほどね、 まあそれが普通かな。

むしろこの状況で、 アネモネのような子達が珍しいだろう。

だが、 それでいい。

そういう人達が正しい世を作るのだ。

「いや少なくても助力はありがたいよ! 助かる! 」

「私達でお役に立てるのなら幸いです! 今日はお時間を取らせてしまって申し訳ないです。 」

「いいよ、 気にしないで! それと仲間なんだから、 堅苦しいのはやめようよ! 畏まらなくていいよ。 」

彼女は少し恥ずかしそうに、

「わ、 分かりました。 あっ、 分かった、 です。 よろしくです! 」

まあそんなすぐには難しいかな。

でもこれもこれで可愛いな。

「じゃあよろしく。 」

「それでは私は1度戻ります。 他の天使達にも伝えなきゃ。 それではまた! あっ、 ばい、 ばい! 」

彼女は恥ずかしいのか、 そう言うとさっさと帰ってしまった。

大丈夫なのだろうか、 まあ話を聞く限りは大丈夫そうだが。

アドミン側の天使達に、 なにかされなきゃいいな。

さてこれで心強い仲間が出来たな。

やはりアネモネはアドミンに対して、 敵対心を募らせている。

彼女は間者とも思ったが、 こうして接してみればよく分かる。

「さあて、 そろそろ帰らんとな。 あいつが騒ぐだろう。 」

俺は足早に帰ることにした。

街へ戻ると案の定スミレが大騒ぎしていた。

彼女は俺を見るや否や、 物凄い勢いでこちらに駆け寄ってきた。

「あんた! どこ行ってたのよ! 全然見かけないし、 誰も知らないし! あんたの監視が私の仕事なの! 勝手に居なくならないで! 」

彼女は顔を膨らませながら、 まくし立てた。

「おっなんだ? 心配してくれたのか? 俺はお前と違ってガキじゃないんだ、 大丈夫だよ。 やれやれ俺の保護者かお前は。 」

「何よ! 私だってガキじゃないし、 それに心配とか、 1ミリも微塵たりともこれっぽちもしてないからね! ふん! あんたなんか知らない! 」

そう言うと彼女は、 何やらブツブツ言いながらどこかへと行ってしまった。

「嵐のようなやつだな、 ほんとに。 」

ふぅ流石に疲れてきたよ。

早く帰って休むか。

部屋に戻る道中にシグルドに会った。

「これはカランコエ様、 お戻りになられたのですね。 スミレ殿が心配しておりましたよ。 いやはやカランコエ様も罪な方ですな。 」

「そうなのか、 まあたまにはいいんじゃないか? そうだシグルド、 実は今日ラインハルトと会ったんだ。 」

俺がそう言うと、 シグルドは驚きの表情をした。

「そ、 それは一体どういう事ですか! 」

「お、 落ち着け。 実はなとある場所があるんだが、 そこで奴と会ったんだ。 俺も最初は我が目を疑ったよ。 サバトってやつもいたな。 」

「な、 なんと。 かような場所があるとは。 それはどこなのですか。 」

「すまない、 そこは限られた者しか入れないらしいんだ。 恐らく魔王だけだと思う。 」

「そんな、 ラインハルト様はどうでしたか? 」

「ああいつも通りだったよ。 相変わらずだよな。 それとお前たちによろしく伝えてくれ、 と言ってた。 」

「そう、 でしたか。 お元気そうで何よりです。 」

シグルドは少し目に涙を浮かべていた。

「まあそんなとこだ。 俺は部屋で休むよ、 じゃあまた。 」

「かしこまりました。 ゆっくり休まれてください。 」

悲しそうに俯くシグルドを後に、 俺は部屋に戻った。

「ただいまー、 と定吉は散歩かな? 」

部屋に戻ると定吉は出かけているようであった。

「疲れたし先に寝るか。 」

俺は今日あった出来事を思い出しながら、 ベッドに横になった。

今日は色々あったな。

新しい力を手に入れて、 サバトやラインハルトと会った。

そして何故か戦い、 自分の限界を知った。

それからアネモネにアドミンのことをいくつか聞いた。

やはりあいつは何かを企んでいるようだ。

そして1部の大天使達はそれについて、 不信感を抱いているようだ。

その1部の天使達はおそらくこちら側についてくれそうだ。

これは正直嬉しい誤算であるな。

とりあえず俺も強くならなければ。

流石にどっと疲れを感じたのか、 瞼が重くなってきた。

また明日、 考えよう。

おやすみなさい。

…………

「……きて、 お……きてくだ……。 起きてください! 」

誰かが俺を起こそうとしている。

誰だ?

まだ眠いのら。

「むにゃーむにゃ、 あと30秒だけー。 」

「困りましたね、 少しだけですよ。 」

あれ?

許された。

ここに来てから最高に思ったことは、 朝早く起きる必要がない事だ。

まあだからといって、 ずっとグータラしてる訳には行かないのだがね。

それではお言葉に甘えてもう少し。

あれ、 てか誰が俺を起こしに来てるんだ?

今までにそんな愚行をしたやつはスミレ位では?

たまにミドナとかが、 用があって来たりはしたが。

滅多にないイベントだな。

まあいっか。

今はこの心地よいベッドの温もりに身を委ねよう。

あれなんかいつもと違う、 かも。

なんかいつも以上に暖かい。

てか誰かいね?

部屋じゃなくて俺のベッドの中に。

「て、 うおおおおい! 何してんだ! 」

俺は隼のごとくベッドから飛び起きる。

そこには何故かアネモネがいた。

いやなんで俺が寝てるとこういうことが起きるんだ!

これで犯罪者扱いされたら、 たまったもんじゃないぞ!

「ふぇ? ああカランコエさん、 おはようございまふ。 」

「ああ、 おはようアネモネ、 じゃなくて! なんで俺の部屋に、 しかも俺の寝てるベッドに居るの!? 何これ何事! 」

「ああ、 どうしてもお話したいことがありまして。 ここまで来たのですが、 何度起こしても起きなくて。 それで待ってたら私も眠くなっちゃって。 気づいたら……。 」

おいおいまじか。

ガード緩すぎだろ。

それは流石にどうかと思うぞ色々と。

「全く心臓に悪いぞ。 で話って? 」

「ふあー、 そうでした。 実はですね、 近々

、 他の天使達とも会っていただきたいのです。 やはり直接話した方がお互いの為にもなるかなと。 大丈夫ですか? 」

「なるほどね、 それは一向に構わないが。 それならこちらの主要なメンツも、 揃えた方がいいか? 」

「そうですね、 いずれはお互い顔合わせした方がいいのかも。 ですが今回はカランコエ様だけで大丈夫です! それではまた詳しい話がまとまり次第、 よろしくです! 」

彼女はそう言うとそそくさと退散して行った。

てかこんなとこまで来れるのかよ。

恐ろしいな。

だが他の協力者達と会うチャンスだな。

見極めなければな。

その間に出来ることはしておこう!

なんとも言えない目覚めになったが、 そろそろ動くことにするか。

今日からまた色々と試したり、 訓練をすることに決めた。

とにかくやることはそんなにないし、 出来ることをしよう!

魔神の力を身につけたことによって、 出来ることは増えてるはず!

さあ忙しくなるぞ!

たまには定吉とか、 シグルド達にも協力してもらおうかな!

さあまた忙しくなるぞ!

…………

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