第9話 見えざる脅威
…………
あれから2、3日歩いた。
ここ数日追っ手の気配は特に感じなかった。
どこかしらのタイミングで、 刺客を仕向けては来るだろうと思っていたが。
街に戻っても長居は出来ないかもな。
ミドナ達にも迷惑をかけてしまうかもな。
厄介なことになってきた。
このまま転々と旅をするのも限界はあるだろうしな。
できれば早急にどうにかしないと行けないな。
「そろそろ今日は休もうか。 」
「そうねこの辺なら大丈夫そうだし。 」
俺たちは大きな木の下で野営することにした。
スミレの両親から貰った野営セットに、 だいぶ助けられてる。
まるでキャンプしてる気分になる。
「ねぇねぇ最近まともなの食べてないよね。 」
確かに貰った食料はそろそろ底がつきそうだ。
「確かに食料もそんなに貰ってた訳では無いからな。 あとは貰ったお茶くらいかな。 そう言えばまだ飲んでなかったな。 」
「それ母様がくれたやつ? それ凄いのよ! 少し飲むだけで疲れが吹っ飛ぶの! 」
そんなに凄いのか。
とりあえず1口飲んでみる。
凄い!
めちゃくちゃおいしい!
風味はまるでお茶そのもの。
確かに疲れが吹っ飛んだように感じる!
「凄いな! これめちゃくちゃおいしい! 」
「でしょ! 私にも少し頂戴! 」
彼女はそう言うと俺から水筒をぶんどった。
「あーやっぱり母様のティーは特別ね! 」
彼女はお茶を堪能していた。
おっあそこにいるのは。
茂みに目を凝らしてみるとそこにはウリーベリーがいた。
ウリーベリーとは見た目でいえばウリ坊そのものだ。
そして主食がベリー系を食べるらしい。
そしてとても美味と言う。
確かに俺がいた世界にも、 家畜の主食を別のものに変えてその肉をブランド肉みたいな感じで売ったりしてるしね。
「スミレ少しシー。 アイシクルアロー。 」
俺は静かに魔法を唱えた。
そしてウリ坊に放った。
「プギーー! 」
1度悲鳴が聞こえたかと思うとウリ坊はその場に倒れた。
よし!
「スミレ喜べ! 今日は肉だ! 」
「あんたやるわね。 ウリーベリーを仕留めるなんて。 なかなかプロのハンターでも苦戦する相手らしいのに。 」
「ほへーそうなんか。 運が良かったんだろ。 とりあえず処理して有難く頂くことにしよう。 」
自然の恵みに感謝せねば。
俺たちは早速ウリ坊を処理し肉を頂戴した。
「さあ自然の恵みに感謝して、 このお肉も美味しく調理して頂くとしよう。 」
「そうね! ウリーベリーには悪いけど美味しく頂くとしましょう。 」
俺たちは早速ウリ坊の肉を焼いて調理することにした。
焼いてる段階で既に美味しそうである。
ヨダレが止まらなくなりそうだ。
色も程よくついてきた。
そろそろ頃合だろう。
俺は塩をまぶした。
「味付けはシンプルだがこういう肉の味付けは塩に限るな! ではいただぎす! 」
「ねえ前から思ってたんだけどそのいつも言ってるやつって何? 」
「うん? これは挨拶みたいなもんだ。 作ってくれた人、 そして食材に向けてありがとう、 って感じかな。 そして食べ終わったらごちそうさま、 これでひとつの流れみたいなもんだ。 」
「ふーん、 い、 いただきます。 」
さあて早速頂くとしますか。
1口頬張る。
はむん!
なんだこの美味さは!
程よく甘くて美味しい!
食感もすごく柔らかい!
また塩が味を引き立てていい組み合わせだ!
「うそー! にゃにこれ! おいひい! 」
スミレが頬を両手で包み目を輝かせる。
「あぁ、 これは確かにめちゃくちゃ上手い! それに俺たちしっかりキャンプしてるな! 」
「キャンプ? なにそれ。 」
「うーん簡単に言うと、 こうやって外で生活をおくること。 かな。 」
「へぇそうなんだ! キャンプ楽しいね! 」
「だろ? たまにはこういうのもいいよな。 旅をするってのはある意味キャンプもするってことだよな。 」
「そうね! このまま旅続けるのもいいかも。 」
「えっなんか言った? 」
「な、 なんでもない! 」
なんか言ったように聞こえたが気のせいかな。
俺たちはしばらく肉に齧り付いていた。
「ひゃーめちゃくちゃ美味しかった! 」
「えとなんだっけ、 そうだ! ご馳走様でした! 」
おっこいつ見所あるな。
これから日本の文化で良さそうなのは教えてあげてもいいかもな。
異文化交流も悪くは無いのかも。
言葉は通じるし。
食後俺は魔物図鑑を見ていた。
あのうさぎが気になったからだ。
「これか、 て、 ええええ! これがあのうさぎ!? これうさぎ? 」
なんというか、 うさぎにはそうなんだが。
スライムみたいな見た目なんだが。
俺はこんなゲル状のやつをうまいうまい言って食ったのか。
分からねえもんだな。
「あっ、 ついに見たのね。 あれがあんな美味しいなんて思わないわよね。 」
「ああ、 だが確かに美味しかった。 見た目を知ったら食わなかったかもな。 」
確かにこの見た目のやつの肉を食う勇気はなかなか出ない。
だがあの美味さは異常だ。
また目を知った今でも食いたいとは思う。
こうして見てみると色々な魔物がいるな。
誰がこんなの作ったんだろ。
製作者には頭が上がらないよ。
しばらく図鑑を眺めたあと、 俺はぼーっと木を眺めていた。
スミレは既に眠りにふけていた。
黙っていると可愛いんだけどなあ。
まああれもこいつの魅力だしな。
別に嫌いじゃないしな。
俺がしばらく寝顔を眺めてると、 ふと何者かの気配を察知した。
「そこにはいるのは誰だ? いるのはわかってるよ。 」
俺がそう囁くと、 茂みから1人の女性が出てきた。
「よく気づきましたね。 私は7大天使が第7位、 聡明のアネモネと申します。 あなた様が現魔王様であられるカランコエ様ですね。 」
「そうだがなぜ知ってるいる。 何者だ。 」
「神の使い、 と申せばわかりますでしょうか。 此度はあなた様に言伝を届けに参りました。 」
「それも神とやらからか。 」
「ええそうでございます。 それではお伝え致します。 街に戻られましたらお1人で私の元へと来てください。 以上でございます。 」
いやどうやってよ。
「そちらに関しましてはご安心を。 貴方様が街にお戻りになられましたら私めが再び、 お迎いに上がらせて頂きます。 」
嘘だろ、 心を読んだ?
のか?
彼女はふふっ、 と小さく笑うと。
「それでは御機嫌よう。 」
と挨拶をすると、 突然白い翼が彼女を包み込み、 気づいた時には消えてしまっていた。
まるで天使のような人だった。
いや一応天使なのだろうが。
見た目もそれっぽいし。
ちゃんと天使してる。
心まで読まれたのは誤算だったがな。
だがこれでやっとまた進める。
神自身が動いてくれるとは。
これはチャンスだ。
恐らく罠でもあると思うが飛び込んで見るか。
わざわざ俺を呼ぶってことは、 今すぐに何かをどうこうするとは思えない。
しばらくはスミレとかは大丈夫だといいが。
とにかく今は無事に皆が待つ街へと戻らねば。
だいぶ街に近づいてきたとは思うが、 油断はまだ出来ない。
俺には守りたいものが出来すぎた。
元々居た世界ではなんの生きがいも見いだせず、 ただただ浪費してただけだが、 ここでは何かをなそうと思っている。
俺に出来ること、 それをやるだけだ。
俺はふとスミレを見る。
相変わらずヨダレを垂らして情けない顔で寝ている。
こいつもその内の1人になっちまったんだな。
いつの間にか。
いいだろう丸ごと守ってみせる。
俺はまだ負けるわけにはいかない。
相手が誰であろうと。
それがたとえ神であろうと。
俺が守りたい全ての人の笑顔のためなら、 俺が魔王になり障害をうち払って見せる!
神を敵にしたとしても。
俺は今までお世話になった人達の顔を思い浮かべる。
俺はこの世界に来て色んな人に助けられた。
こんな俺にも皆は手を差し伸べてくれた。
今度は俺が手を差し伸べる番なんだろう。
ラインハルト、 俺はちゃんと魔王してるよ。
だからもう少し待っててくれ。
全魔王、 全魔人達の悲願を俺が叶える。
俺がお前たちの夢を叶えて見せる!
おっと少し熱くなってしまったな。
俺らしくもない。
そもそも俺らしい、 ってなんだろ。
とにかく俺も寝ることにしよう。
色々不安はあるがこれで前に進める。
きっと大丈夫。
…………
──ちゅんちゅん──
鳥の爽やかなさえずりで目が覚める。
昨日の出来事が嘘のようだ。
今でも昨日のあれは夢ではないのか、 と思うくらいだ。
だが現実だ。
現にやつが残していった翼の1片が、 俺の手に握られている。
やつはこれが約束の証と言っていた。
俺を迎えに来る、 て言ってたな。
その事だろうか。
俺はそれに紐を通し首にかけた。
これなら無くさないだろう。
「ねぇその首飾りどうしたの? 」
「うあ? あーちょっとな。 」
流石に昨日のこと話しても、 信じて貰えないだろうし、 余計な心配させるのもあれだしな。
「ふーんそう。 」
俺たちは野営道具を片付けて、 街へ向けて再び歩み始めた。
正直神が俺になんの用があるのか想像もつかない。
勇者を殺めようとした訳だろ?
今更俺に何の用があると言うのだろう。
恐らく俺がスミレと一緒にいるのは知ってるだろうし。
まあ会ってみれば分かる事だ。
この目で見届けてやろう。
この世界の神は何を目論んでるのか。
元は人間だったんだ。
神が話のわかる人であるならいいのだが。
それは叶わないだろうな。
現に今この世界の有り様を見れば一目瞭然。
この謁見がいい方向に進むとは到底思わぬ。
嫌な予感がするな。
てかここに来ていい予感がしたことはあまりなかったか。
そもそもそんな予感なんて生涯感じたこと無かったかもな。
面白くなってきたよ。
全く。
誰がこんな展開想像できたものか。
だいぶあれから歩いたようだ。
周りの風景も様変わりしてきた。
木々が増えてきて、 日光が遮られて昼でも薄暗く感じる。
だいぶ俺たちの街に近づいてきたようだ。
これなら夕刻くらいでたどり着けるかもな。
「スミレそろそろ休憩しようか。 」
「そうねだいぶ歩いたし、 街まで近くなってきたようだしね。少し休みましょう。 」
俺たちは手頃な木陰で腰を下ろし一休み入れることにした。
「なあスミレ、 お前はなんというか街から街へワープするみたいな魔法使えないのか? 」
「何よ突然。 出来るわよ一応。 行ったことある場所ならだけどね。 」
はん!?
出来るだと!
「で、 出来るのか? じゃあなんで今まで俺たちはこんな苦労してたんだ。 」
俺が落胆していると、
「ばか! あの魔法はすごく疲れるの! 有事の時しか使わないわよ! あんたこそそれくらい出来そうだけど? もしかして出来ないの? 」
彼女はバカにするように俺の顔を覗き込んだ。
ぐ、 悔しい。
ムカつく。
「できたら苦労しないよ。 色々試してはいるがな。 式神を使って移動を楽にしようかと考えたが、 それほどまでの式神を作るのは大変だし、 使い魔を召喚しようにも生憎そんな便利なやつを召喚出来るほど俺は、 ここ長くないんでな。 これでも色々試行錯誤してるんだよ。 」
「ふーんでも、 あんたいつかは平然とやりそうよね。 私が見た事のない召喚魔法出来るし。 」
確かに俺は、 この世界にはない魔法とかを作ってはいる。
まあ試して見て成功したからそのまま使ってるに過ぎないが。
実は今、 式神をもっと強力なやつを作って例えば、 人を乗っけられる程のものを作ろうとしている。
そうだな龍とか作れたらいいな!
サラを大きくするのも全然悪くない。
今の俺にはユキやタロウの鬼クラスの大きさが限界だしな。
召喚魔法はもう少し魔法そのものと、 召喚に答えてくれる召喚魔について知る必要がある。
これは勉強不足が否めない。
まあそんな時間俺にあるのかは分からないが。
俺たちはお茶を飲みながら静かに座っていた。
すると突然木々の隙間から、 見覚えのある顔が2つ現れた。
「はぁはぁ、 そちらの方助けてくださいませ!
あっ! カランコエ様! 良かった戻られたのですね! 至急お戻りになられてください! 魔物が! 街を! 」
そこには息を切らし、 涙で顔を濡らしたマリーとミドナがいた。
「どういう事だ! 何があった! 」
「カランコエお願い! 皆を助けて! 」
「どうやら説明を聞く時間もないらしいな。 スミレ頼むあれをやってくれ。 」
「いいの? 私はしばらく役に立てなくなるわよ。 」
「わかってる。 だが今は時間がない。 何か手があるなら何でも使うしかない! 頼む! 」
「分かったわ。 皆私のそばに。 」
彼女がそう言うと彼女は詠唱を始めた。
俺たちは彼女の傍に寄る。
俺はミドナとマリーを見る。
涙で腫らした目で俺を見つめていた。
俺は静かに笑ってみせた。
俺に任せろ。
何とかしてやる。
「行くわよ、 リープ! 」
彼女がそう叫ぶと、 突然俺たちは光に包まれた。
そして目を開いた瞬間、 俺の目に飛び込んできたのは見慣れたはずの街だった。
そしてこの風景、 光景、 どこかで。
俺はこれをどこかで見たことがあった。
そう、 夢だ。
俺はこの世界に来る前、 夢で見ていたのだ。
あの時と同じ悪魔のような光景。
だがあの時の俺とは違う。
今の俺は戦う力がある。
守るだけの力がある。
俺はこの街の魔王、 カランコエ!
街を、 民を守ってみせる!
俺の目の前でシグルドが大勢の魔物を相手にやりあっていた。
シグルドは鬼神の如く畜生共を切り伏せていた。
しかしあまりにも数が多かった。
これでは多勢に無勢。
「今行くぞシグルド! すぅー。 縮地! 」
俺はシグルドの背後に迫る白刃を弾き返した。
「カランコエ様! かたじけない! 貴方様の留守の間、 この老骨が皆をお守りするはずであったのに、 不覚。 」
「そんなことは気にするな! 今はこの畜生共を駆逐するぞ! チラホラ人間もいるようだけどな。 お前らいつから魔物と手を組んだんだ? って畜生の家畜共に言っても分からないか。 覚悟するんだな、 貴様らは楽に死ねると思うな。 俺の大事な物を傷つけた罪、 その身をもって思い知れ。 」
俺とシグルドは互いに背を預け目の前の敵をものの数分でねじ伏せた。
「カランコエ様助太刀感謝致します。 」
「シグルド無事そうでよかった。 一体何があったんだ。 」
「説明は移動しながら致します。 街の皆は祠まで待避させてございますが、 敵もそちらに向かっております。 守りが突破されるのも時間の問題かと! 街の敵はあらかた一掃しました。 あとは祠に向かった隊のみでございます! 」
「分かった行こう! 」
俺たちは祠へすぐさま向かうことにした。
「実はカランコエ様が戻られるほんの少し前、 魔物と人間達に襲撃されたのです。 ですが実は私共は事前にそれを察知しておりました。 占い屋を覚えておりますか? 」
占い屋、 あの婆さんか。
そう言えばあまり会ったこと無かったな。
「占い屋が数日前に予言されたのです。 数日のうちにこの街は襲撃されると。 ああ見えて占い屋が予言されたことは不思議と当たるのです。 そこで私とダリル様でどうするか考えました。 そして戦えない者を祠へ避難させ街は私と数人の戦士で守ることにしたのです。 そこにカランコエ様が助けに来て下さったという事です。 誠に申し訳ありません。 街を任せて頂いたのに。 」
「気にするな実によくやってくれたよ、 皆を助けてまたやり直そう。 街なんてのはいくらでもなる。 命さえ残ってればな。 責めるのは後だ。 今は目の前のことに集中しようぜ。 」
「御意! 」
俺たちはものの数分で祠の前へたどり着くことが出来た。
祠の入口を取り囲むように魔物達が包囲していた。
そして入口をダリルや、 定吉、 何人かの戦士達が守っていた。
どうやら間に合ったようだ。
「待たせたな畜生共、 お前らの首、 落としに来たぜ。 会いたかっただろ? 俺に。 」
「そ、 その声はカランコエ様! 申し訳ありません! 遅れをとりました! 」
ダリルがそう叫んだ。
「バカ言うんじゃないよ! お前たちはよくやったさ、 とりあえず今はこいつらだ。 やられっぱなしは楽しくねえだろ、 反撃のお時間だ。 」
「グッヘッヘッヘ魔王自らお出ましとは、 俺もついてるぜ。 貴様は俺様自ら引導を渡してやるぜ! 」
軍勢の中から牛のような見た目の大きな魔物が現れた。
風格、 装備等から察するにこいつが大将か。
「フン、 お前に俺が殺せるかよ。 ミジンコサイズの脳でも分かるだろ? 」
「グッヘッヘッヘガッハッハッ腹がよじれるぜ、 余裕でいられるのは今だけだぜ。 」
すると奴は身の丈はあろう両斧を取り出した。
「嘘! なんであんな奴が! 」
突然スミレがそれを見ると驚いた。
「スミレあれがなんだ? 」
「あれはただの斧じゃないわ! 勇者の加護を受けてる! でも魔物がなんで! 」
「死にゆくものに説明する必要はねぇ。 野郎ども皆殺しだあ! 」
やつの掛け声とともに魔物たちがそれぞれに襲いかかった。
勇者の加護を受けている。
すなわち俺を殺すことの出来る武器。
ほう、 これはこれは大層なもんを。
「だが、 ひれ伏せ家畜共! 」
俺が奴らを睨み大声で叫ぶ。
奴らは一斉に俺を見る。
そしてそのまま身動きせずに立ち尽くした。
「ぐっ、 ひ、 怯むな! 」
大将が仲間を鼓舞する。
が、 皆恐怖を感じていた。
そして大将も僅かながら恐怖を感じていた。
「な、 なんなんだこの覇気は。 こ、 これが魔王の覇気なのか? き、 聞いてねえ、 聞いてねえんだよ! 」
「さっきまでの威勢はどうした? その程度の肝っ玉の野郎がこの俺を殺せると思うな。 そっちから来ないならこっちから行かせてもらおう。 皆の者! 剣をぬけ! 愚か者共に戒めろ! 恐怖というものを植え付けろ! 俺たちの街を壊した報い、 その身をもって償わせるのだ! 」
俺が叫ぶと、
「おぉ!!!! カランコエ様に続け! 」
「俺この戦いが終わったらプロポーズするんだ! 」
「俺たちの街をよくも! 」
ダリルら街の戦士たちが一斉に魔物に飛びかかっていった。
不意打ちをくらって魔物達はたじろいだ。
「ええい! こんな雑魚どもに負けるなあ! 」
大将が俺に向かってかかってきた。
その目はもはや覇気も何も無かった。
ただ恐怖を感じまいと、 負けまいと、 その一心だけであった。
「そんな半端な気持ちで来たら死んじゃうよ? 」
俺はやつの片腕を切り落とした。
「ぐがあああああ、 俺様の腕がああああ! 」
「本気を出すまでもないな。 おい畜生、 お前は誰に命令された。 なぜ街を襲った。 どこでその武器を授かった。 答えろ、 出なければもう一本腕を貰うぞ? 」
俺はやつの片腕に剣をあてがう。
「ぐ、 い、 言えない! 言えない! 言ったら殺される! 」
「おいおい俺はそこまで鬼畜じゃ…… 」
「違う! あの方は絶対殺す! 俺は! 俺は! 」
あの方?
殺される?
やはり裏に何者かがいるか。
これだと何も得られないだろうな。
「頼むから何か教えてくれよ、 話してくれたら守ってやるから。 」
「う、 嘘だ! 信じられるか! 俺は離さないぞ! お前ら俺様を助けろ! 」
やつが仲間に助けを求める、 が最早奴らは戦意を喪失していた。
「あいつらはもう諦めてるみたいだぞ? お前が話さないなら奴らに聞くよ。 じゃあお前はもうゆっくり休むといい。 」
「ままままま、 待て待て、 分かった話すよ、 だから約束してくれ! 助けてくれると! 」
奴は急にそう提案してきた。
あれどこかで。
「いいだろう。 」
「あの方は俺たちにあの街を襲うように命令されたんだ。 この武器はあの方に頂いたんだよ! これがあれば魔王を倒せるって! そして俺は魔物王になるはずだったんだ。 あの方は、 …………う、 いややめてください! 申し訳ありませんでした! だから命だけは! 」
急にやつが喚き出した。
「おい! 落ち着け! あの時と同じ!? 」
突然奴は立ち上がると斧を握りそれを自分の首にあてがった。
「いやだ、 死にたくねえ! あんたの為にやったんだぞ! この仕打ちはねえぜ!ふざけるな! ごめんなさい! やめて! 」
そして奴はそのまま首をはねた。。
やつの仲間も皆叫びながら同じようにしていた。
これは司祭達と似ている。
そしてやつが持ってた斧は消えていた。
「カランコエ様これは一体。 」
「口封じだな。 俺は1回同じような光景を見てる。 いよいよ確信に変わってきたよ。 それより怪我人とかは居ないか? 」
「はい! カランコエ様のおかげで皆無事です。 街が燃えたこと以外は。 」
「なら安心だな。 街はまた作り直せばいい。 とりあえず戻って結界を作り直さないとな。 手伝ってくれるな? 」
「はい仰せのままに! 」
後味の悪い勝利ではあったが、 俺たちはみんなの無事を喜びあった。
てか死亡フラグ立ててた奴いたけどよく無事だったな。
定吉も無事そうだった。
あいつを残していてよかった。
だいぶみんなを守るのに頑張ってくれたらしい。
今日はジャーキーあげるか。
俺たちは街へ早速戻り手分けをして、 街の復興に当たることにした。
俺とスミレと魔法屋の姉さんは結界を作り直した。
今回は以前よりも強力なものができた。
これで簡単に魔物はちょっかいを出すのは不可能だろう。
人間にも壊すのに苦労するように作った。
他のもの達には家屋の修復や再建を頼んだ。
これなら数日でなんとかなりそうだ。
思ったより被害はそう酷くないらしい。
これも皆の対応の早かったお陰だな。
「もし、 カランコエ様。 」
突然後ろから呼び止められ、 おしりを触られる。
「ひゃ! 」
その下手人を見ると、 件の占い屋がいた。
「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ。 若い男のケツはいいのお。 若返ったわい。 」
「ばあさん! またあんたか、 いい加減しりを触るのは辞めてくれよ。 」
だからこの人はあまり関わりたくないんだ。
「ひゃっひゃっ、 年寄りの楽しみを奪うんじゃないよ! 」
「そんなことより、 ばあさんの予見のおかげで街の被害が少なく済んだみたいだね。 お礼を言うよ。 」
「その予見の事なんじゃが、 お主に良くないことが迫っておる。 わしがハッキリ見えなかったのは今回が初めて。 気をつけるんじゃぞ。 」
そう言い残すと婆さんはどこかへ消えてしまった。
不吉なこといいやがって。
ホントに不思議な婆さん。
不吉なこと、 か。
思い当たる節があるにはあるけど。
後戻り出来ねえな。
そう言えば街に戻ってきたがあの天使はいつ来るんだ?
もう2、 3日経ってるが。
忘れたのかな。
1人でいるタイミングなんていくらでもあったし。
まあそのうち来るか。
だがもし俺の予感が合っていれば。
今回の襲撃の影にいるのはやはり神。
なぜ俺との謁見が控えているのにそんなことをしたのか。
益々分からねえ。
とにかく今は天使を待つしかないな。
とりあえず今はまたの復興に集中しよう。
…………
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