第8話 刺客
…………
「ふぁーよく寝た! 昨日はなんやかんやで疲れたな。 そうだ今日は教会に行く日だった。 早速支度をしよう! 」
やっと1天教の司祭たちと話す機会が取れたわけだ。
何か得られるものがあれば良いのだが。
教会にはいい思い出がない。
正味期待はしていないが、 だが1天教を知るには彼らの協力が不可欠。
上手くいくといいがな。
早速俺は出かける準備をした。
俺がスミレを待つために外に行くと、 なんとスミレが既に待っていた。
珍しいな、 あいつが俺より早いなんて。
なんか不吉な予感。
「珍しいな、 明日槍でも降るんじゃないか? 」
「ば、 馬鹿にしないでよ! アホたこ! 」
彼女は頬を赤くし、 膨らませてみせた。
「ほんとハリセンボンみたいだよな。 」
茶化す。
「ハリセンボン? なんだか知らないけど馬鹿にされてる気がする! 」
彼女はより1層怒った。
「まあそんなむくれるなよ。 ブサイクになるぞ。 そろそろ行こうか。 」
「ふん! 串1本で許してあげる。 」
ですよね。
まあそうなるとは思ってたが。
「へいへいお姫様の仰せのままに。 」
俺たちはまた例の串を買ってから行くことにした。
やはりここの串はなかなかにおいしい。
これを食べてると気も落ち着く。
しばらく大通りを進むと、 例の大きな教会が目の前に現れた。
ここが1天教の教会。
しかもその中でもかなり大きい。
「ここが1天教の教会、 ここでなら1天教についてよく知れると思うわ。 一応司祭様があってお話してくれる約束だけど。 司祭様も忙しいから、 取り合ってもらえるといいわね。 」
「まあその時はその時だ。 手数をかけて悪かったな。 」
「べ、 別にいいわよ。 さあ行きましょ! 」
俺たちは教会の扉を開けた。
ん?
この気配、 どこかで。
俺はこの気配を知っている。
僅かだが気配をこの教会内から感じる。
まさかそういう事なのか?
だがしかし何故だ。
なぜ奴らが。
「これはこれはスミレ様、 お待ちしておりました。 本日のご要件とはなんでしょう。 」
「司祭様、 今日はこいつが聞きたいことがあるんだって。 」
「ほうほうそうでございましたか。 そちらの御仁が。 して何用でしょうか。 」
俺が司祭と話をしようと近寄ろうとすると、 例の気配が一瞬大きくなったように感じた。
それと共に一瞬強い殺気を感じた。
俺はカマをかけてみた。
「なるほど司祭さん、 あんたがあの時の刺客だったのかな? 」
俺がそう言うと司祭は、 一瞬眉をピクリと動かした。
それを確認した刹那、 司祭からとてつもない殺気が放たれた。
やはり!
司祭がスミレの方へと距離を詰めようとした。
だが俺が寸ででそれを遮る。
「おっとそうはいかないな! 話を聞かせてもらおうか、 司祭様! 」
「ふっあなたを侮っていたようですね。 しかしあなたもすぐに殺して差し上げますよ。 神様に祈りを捧げなさい。 」
「し、 司祭様なんで? 」
スミレはあわあわしていた。
「スミレ! 宿に戻れ! こいつの狙いはお前だ! 」
「え、 え! でもあんたは? 」
ええい焦れったい。
「サラこいつを宿に連れ帰れ! 」
俺は式札に模した紙をスミレに投げつけた。
するとその紙は八咫烏へと変化した。
八咫烏は、 スミレを掴むと物凄い勢いで飛び去っていった。
「貴様我らの邪魔をしましたね? これはいけない、 いけませんね。 あなたの罪はもはや許されませんな。 私自ら断罪してあげましょう! 皆の者、 かの物に聖なる裁きを! 」
やつがそう叫ぶと神父やシスターが数人、 やつの後ろに現れた。
皆短剣やら武器を持っていたり、 魔法の詠唱を始めていた。
「なるほど教会ぐるみって訳か。 いいだろう、 ユキ、 タロウ。 お前たちの力を貸してくれ! 」
俺は式札を2枚地面に叩きつけた。
2枚の式札は赤鬼と青鬼に変化した。
「あなたそれはなんですか? 見たことも無い魔法ですね。 奇妙だ。 これはここでなんとしても処分しなければいけませんね。 」
「これか? そうだな、陰陽術とでも言おうか。 まあこの世界に陰陽術も陰陽師もないだろうよ。 俺が試しに魔法を応用させて作ってみたのよ。 案外上手くいったよ。 他にも色々あるぜ? まあ今はお預けな。 それよりお前たちの目的聞かせてもらうぞ。 」
「ふっ、 はっはっはっは! 死にゆくものに何も言うますまい! さあ断罪のお時間です! 」
そう言うと司祭達は一斉にかかってきた。
ヤレヤレあくまで殺しに来てるか。
俺は今日、 戦闘服で来てたことに感謝した。
さすがにアサシンブレードだけだったら結構苦戦したかもな。
センチネルがいてくれて良かった。
こいつの戦闘力は折り紙付きだ。
そして今は式神もある。
魔法もそれなりに使えるしな。
ユキとタロウにはそれぞれ2人を相手してもらっている。
ユには魔法を使う奴を、 タロウには剣を持った奴を頼んだ。
ユキは魔法に対して相性がいいのだ。
逆にタロウは剣相手が相性がいい。
そういう風に仕込んである。
そして俺は司祭を相手にする。
正直やつの力は侮れない。
ただの司祭では無いことは確かだな。
「それでは私達も始めるとしましょうか! 私の声に応えよ! 聖なる騎士たちよ! サモンズホーリーナイト! 」
やつが本を広げ召喚魔法を唱えた。
するとやつの前にフルプレートアーマーの騎士が一体現れた。
「おいおい自分で戦わないのかよ。 せこいなあ。 」
まあ俺も雑魚は式神に頼んでいるのだがね。
「使える手はなんでも使わないと行けませんからね。 念には念を。 サモンズナイトキング。 」
更にやつはもう一体騎士を召喚した。
今度はモーニングスターを持った騎士だ。
これは厄介だな。
「さあこうべを垂れ罪を認めなさい。 そして裁きを受けなさい! 騎士たちよ、 かのものを滅ぼせ! 」
やつが合図をすると騎士たちが襲いかかってきた。
「けっ自分は高みを決め込むつもりか? せこいやつだな。 」
騎士たちの動きはなかなかに早い!
そして力もある。
防戦一方を強いられている。
司祭は相当に強い魔力を備えているらしいな。
これ程の召喚魔法を使えるとはな。
俺が騎士たちと遊んでいると、 突如、
「聖なる炎で裁かれよ。 イグニスファイア! 」
突如司祭が俺に向けて魔法を放った。
おいおいおいおい。
お前も手を出すんかい!
「それはせこいなあ! 聖なる炎をくらい尽くせ!
俺はセンチネルの両刃で騎士の攻撃を受けとめ、 片手で司祭の魔法をかき消そうとした。
ぐっ!
さすがに片手では打ち消し切れないか!
それになんて魔素だ。
これ程の魔素を持ってるのかやつは!
とんでもない魔力だな。
「ぐっ、 少しばかり痛いな。 あんたやるね。 俺の対魔法術もまだまだ伸び代ありだな。 」
「ほうほうほうほう、 やりますね。 こんな技見たことない。 これは早急に焼却しないといけませんね。 さあ騎士たちよこのものに神の裁きを! 」
やつが騎士たちの武器に炎を宿した。
「ふーむ、 あくまでそう来るか。 俺も負けられないんでね。 少し対等にしようじゃないか。 いでよ我が眷属、 サモンズダークナイト! 」
俺は暗黒騎士を一体召喚した。
黒いフルプレートアーマーで身を包む彼は、 2人の騎士より、 一回り大きく、 より強大な騎士だ。
彼の2つの剣に俺はそれぞれ闇と光を宿らせた。
「さあ司祭様よ、 これでやっと正々堂々やれるね。 覚悟しな! 」
俺はセンチネルに氷と炎を宿らせた。
そして一気に司祭に切り掛る。
「全く、 私をここまで苦戦させるとは。 私も老いたものです。
彼がそう唱えると、 どこからとも無く剣が現れた。
魔法剣だと!
なるほど!
魔法で剣そのものを作り出すことが出来るのか!
やはり可能なのか!
俺が何回やっても上手くできなかった魔法。
お目にかかれるとはな!
やはりこいつは凄い。
だが負けるわけには行かない!
しかし魔法も凄まじいが剣の腕もなかなかにいい。
お互いに魔法や剣戟をぶつかり合わせる。
教会が広くて助かったな。
こんな壮絶な戦い、 建物ごと壊れてもおかしくない。
まあ何やらプロテクトがかかってるのか、 建物自体に損傷はつかないらしいな。
どんな作り方したんだか。
まあこれも魔法の1種なのかな。
外に音が漏れないようにもなってるみたいだ。
特殊な空間、 そんな感じなんだろうな。
教会の中がひとつの別空間を生み出してる。
なんかの書物にそんなこと書いてあった気がするな。
「はぁはぁ、 なかなかにやりますね。 罪人は何人たりとも裁かれなければいけません。 抗えば抗うほど罪は重くなりますよ? それでいいのですかな? 」
「そっちこそ冤罪ふっかけてよ! それこそ重罪だろうよ、 司祭様がそんなことしていいのかな? それこそあんたの方が罪人に相応しいな! 」
「貴様、 今私を罪人と言ったのか! 裁きでは足りないようですね。 塵一つ残さず存在したことを後悔させてやる! 地獄の業火に焦げ尽くされよ! ヘルフレイム! 」
すると大きくどす黒い炎の玉が現れた。
これまた強大な魔法だ。
やつの魔力は無尽蔵なのか!?
いやそれはありえない。
なにか手があるはず。
とにかく今はこの塊をどうにかしないと!
あの魔法試してみるか!
威力がデカすぎてまだ試したことないが。
一か八か!
すうぅー。
俺は1度大きく深呼吸をした。
「人間は過ちを繰り返す。 この炎を戒めに刮目せよ!
俺は両手に意識を集中した。
青白い炎が少しずつ姿を現した。
このくらいの大きさ、 恐らくこれなら相殺出来るかも。
俺は青白い炎を、 黒い炎の塊の中心目掛けて解き放った。
青白い光は黒い闇に飲み込まれていった。
「はっはっはっ! そんなものでは私の裁きの炎は止まらん! 」
「それはどうかな? そろそろだな。 リリース! 」
俺が叫ぶと突如黒い塊から青白い光が漏れだして来た。
これは成功だ!
どんどん青白い光が漏れだしてきた。
すると突然大きな音がした。
──ぼがああああああん!──
そして黒い炎の塊も、 青白い炎も跡形もなく消滅した。
「な、 何がおきたんだ! 私の、 この私の裁きの炎が! 貴様! 何をした! 」
司祭は激昴していた。
「核爆発、 人類の愚かな叡智の塊さ。 お前の魔法の中心で、 核爆発を起こした。 それだけさ。 」
「核だと、 なんだそれは! そんなもの認めてなるものか! 」
突如やつの持つ本から禍々しい力が溢れてきた。
なるほどあの本か。
ここに来て俺は図書館で読んだ本を思い出した。
魔法を使うにはいくつかの方法がある。
ひとつは自身の魔素を媒介に使う方法。
又は触媒となるアイテムを使う方法。
アニメやゲームで見る杖などがそれだ。
中にはとてつもない力を持つ杖や、 本などの媒介があるらしい。
そのひとつが目の前にあるんだろうな。
俺は魔王の力と指輪のお陰で、 とんでもない魔素を得た訳だが。
あの本をどうにかできれば勝てるかも。
それならば気を逸らしてその隙に近寄るか。
「
俺は自分のいた位置に、 全く同じ分身を作った。
そして俺は透明になる魔法で姿を隠した。
縮地を使い即座にやつの背後に回り込んだ。
「私の全霊を以て貴様を滅する! これで終いだ! ファイナル…… 」
やつが最後の呪文を唱えようと、 本を広げた瞬間俺はやつの本をアサシンブレードで貫いた。
「な! なぜ! そこに! しまった、 私のバイブルが! なんてことをしたんだ! ああ私はお終いだ! 」
やつは床に崩れ落ちてしまった。
そしてやつの召喚した騎士は消え去り、 仲間の神父達は既に取り押さえられていた。
俺は即座に司祭を縛り上げた。
「さあて吐いてもらおうか。 なぜスミレを狙った。 誰に命令された! 」
「ふん、 貴様に話す舌など持たんわ。 私は何も喋らないぞ。 」
どうやら口を割るつもりは無いらしい。
その意思が固いことはすぐに分かった。
「ではこれではどうかな? 」
俺は片手で本を持ち、 もう片方の手で炎を出した。
「これ燃やしちゃおうかな。 」
俺が火を近づけると、
「ま、 待て! それだけは辞めてくれ! それが無いと私は! お願いだ! 話すから頼む! 」
「ほんとだな? 騙したりしたら容赦はしないからな。 」
俺は火をおさめた。
「そうだ、 私はさるお方に命令されて勇者を狙った。 逆らえなかったのだ。 でなければ私は…… 」
何やら物凄く怯えているように見える。
何かをすごく恐れてる。
さるお方、 一体何者なんだ。
ここまで人を怯えさせるとは。
「そのさるお方とは。 誰だ! 」
「その方は……」
司祭が名前を言おうとした瞬間。
──ぼっ──
突然司祭と神父達が燃え始めた。
しかも体の内側から火がついたように、 目や口から赤い光が漏れだしていた。
「あああああ! 熱い! 申し訳、 あり、 ません! おゆ……しを! ……様! 」
所々悶え苦痛の声や悲鳴などで聞き取れなかった。
「聖なる水よ! 彼らを救たまえ! ウォーターベール! 」
俺はすぐさま水魔法で癒そうとしたが、 それは無駄だった。
彼らはもう既に灰も残らずに消えてしまった。
文字通りに。
とてつもない速さだった。
「なんだよこれ、 こんなこと出来るやつなんているのかよ! これじゃなんの為にここまで来たんだ。 しかもこんなのってありかよ。 恐らくこれをやったのは依頼主だろう。 口封じにしてもこれはあんまりだ。 」
そして司祭の本も知らぬ間に消えていた。
俺はとにかく教会内をくまなく調べた。
しかし役に立ちそうなものは何も無かった。
不自然な程に。
司祭や神父達の荷物らしい物が何一つなかったのだ。
恐らくこれらも消さられたのだろう。
俺は早々に宿に帰ることにした。
宿に帰るとスミレ1家が何やら相談していた。
「良かった戻っていたか。 」
俺はスミレが宿にいてくれたことに安堵した。
「おお! カランコエ様ご無事でしたか! お話は聞きました。 」
「ご無事そうでなによりです! 」
2人は俺の心配をしてくれてたみたいだ。
スミレは俺に泣きついている。
なんで泣いてるんだ?
俺が負けるとでも思ったのかね。
俺はスミレの頭を撫でながら事の顛末を説明した。
……………
「やはり1天教の司祭が。 いつかこの日が来るとは思っていたが。 いやはやスミレを守ってくれて有難うございます! 」
「だが奴らは跡形もなく消えてしまった。 これでまた振り出しだ。 」
「カランコエ様実は思い当たる節があるんです。 恐らくこんなことが出来るのは1人だけ。 それは……」
そこでサスケは1度黙ってしまった。
「誰か知ってるのか? 」
俺から聞いてみる。
「これは推測に過ぎませんが恐らく、 1天教の最高司祭、 そして教祖であるあの方しかありえないかと。 」
「待ってくれそれってつまり! 」
「ええ、 神です。 」
「そんなことって。 」
俺は言葉を失ってしまった。
自らの教徒を、 自分を神と敬う信徒をあんなふうに。
「だがなぜ勇者であるスミレを狙うんだ? 」
「それは恐らく私のせいでしょう。 私達勇者は神の為に魔王を倒す存在。 だが私は神を信じることができなかった。 神は私達に何かを隠している、 そして私も1度命を狙われたことがあります。 私のような神に異を唱えるものを疎ましく思ったのでしょう。 だから私は死んだことにし、 ここでひっそりと暮らしていたのです。 」
なるほどそういう事なのか。
そうなると神にお目通りしない訳にはいかないな。
「その神にはどこに行けば会える? 」
「それは無理なのです。 彼女は私達が望んであえる相手ではありません。 上位の司祭ですらも、 私達勇者でも不可能なのです。 それこそ彼女に近い存在でなければ。 」
なるほど八方塞がりか。
「なるほどね、 これはまた行き詰まってしまった。 」
「力になれず申し訳ございません。 」
「いやそんなことは無いよ! お陰で次のターゲットは割れた。 あとは自分でどうにかするよ! そうだ俺は明日街に戻ることにするよ。 」
このまま俺がここに居ては、 迷惑がかかってしまう。
「そうですか、 寂しくなりますね。 またいつでも来てください! お待ちしておりますよ! 」
「ああ、 そうさせてもらう! とりあえず俺は今日はもう休ませてもらうよ。 」
ところで、
「スミレいつまでくっついてるつもりだ? 鼻水もそんなに垂らして。 これで拭け。 」
俺はまだ泣きながら張り付いてるスミレにハンケチを手渡した。
「べ、 別に泣いてないわよ! ずー! それに鼻水なん手垂らしてないし! レディーに失礼でしょ! 」
鼻も目もズルズルのやつが、 何がレディーだ。
「全くそれ洗って返せよ? 」
俺はすぐに部屋に戻った。
「ありがとうサラ、 ユキ、 タロウ。 」
俺は式札にお礼を述べ懐にしまった。
しかし1天教の神である、 なんちゃらが黒幕とはね。
名前も分からぬ神、 人々が神と仰ぐ存在。
それが何故そんなことをするのか。
それは神のぞ知る。
か。
だがターゲットが分かればあとは、 どうアポを取るか、 だな。
神に近い存在、 それは天使かな?
もしそんなのがいるとして、 どうやって接触すればいいんだ。
街に戻ったら相談してみるか。
とりあえず今日は寝よう疲れた。
かなり魔素を消費したしだいぶ疲労を感じている。
ベッドに倒れ込み瞼を閉じる。
色々と思慮を巡らせている間に寝落ちしてしまった。
…………
「ふぁーよく寝た。 だがまだ少し体が重いな。 さすがに1日寝ただけでは疲れが取れんか。 だがまた街まで歩かないといけないな。 」
ルー○とか使えたら便利なんだが、 さすがにそういった類の魔法はまだないらしい。
自分で作ってもいいけど、 流石に1から魔法を作り上げるのは大変だからやらないけど。
俺は早速荷物を持って部屋を出た。
部屋を出るとホールでスミレの両親が待っていた。
「もう行かれるのですね。 カランコエ様。 どうか道中お気をつけて下さいませ。 私共に出来るのはもはや何もありますまい。 陰ながら応援させていただきます。 」
「ありがとう! 落ち着いたらまた遊びに来ます! 」
「カランコエ様こちらをどうぞ! 私が作ったお茶です! 道中お疲れになられたらお飲みになってください! 」
「ありがとう! 助かります! 」
俺は彼女からひとつの水筒を受け取った。
そう言えばスミレが見当たらないな。
まあ朝早いし寝てるんだろう。
「じゃあ名残惜しいけど俺は、 そろそろ行きますね。 短い間ですがお世話になりました。 皆様もどうかお元気で! 」
「またのお越しを! 」
2人は揃えて言った。
そして頭を深深と下げた。
俺も頭を下げる。
絶対またここに来るんだ!
俺は宿を出てそのまま街を出た。
しばらく道を進んでいくと、 1本の木陰に人がいるのを見た。
「なんだこんなとこで何してるんだ? 」
「べ、 別に。 てゆーか遅い! 一体どれだけ待たせるのよ! 」
「いやなんでお前ここにいるんだよ。 両親のとこにいなくていいのか? それに勝手にお前が待ってただけだろ? 」
「私があそこに居たら迷惑がかかるから。 それに私にはあんたの監視の役目があるから! 」
「へいへい勝手についてくればいいさ。 」
確かにスミレに死なれても困るし、 俺の近くにいれば余計な心配は減るしな。
いずれ彼女の力も必要になることになるだろうし。
俺とスミレは再び街を目指して、 旅をすることになった。
勇者と魔王のパーティ。
異様なコンビだよな。
とんだ凸凹コンビだ。
まあこれはこれで面白いんだがね。
「さあスミレ、 帰るぞ! 」
「ええ! 」
俺たちは街へと再び歩み始めた。
………
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