第26話
「ヴラド。
今度のハリソンと言うのはどんな人間だ?
少しは骨があるのか?」
「ああ。
人間にしては文武両道に優れた漢だ」
「ほう。
ヴラドが人間を褒めるとは珍しい。
それほどの男か?」
「だがな、伯爵家に釣り合う貴族家から選ぶとなると、限られてしまうのだ。
ハリソンはクーパー侯爵家の予備として、広い領地を治める術も、騎士団を率いて戦う術も学んでいる。
この国の侯爵家から子爵家の人材では一番であろう。
だがこの国一番と言う訳ではない」
「何故そこまで家柄に拘る。
ジョージを養子にして王女と結ばせたお前ではないか。
例え平民であろうと、見所のある者達を月乙女と合わせて、月乙女が気にいる者を適当な所に養子にやって、結ばせると言うのはどうだ?」
「適当な所と言われてもな。
下手な貴族家に借りを作りたくないのだがな」
「何もこの国の貴族家でなくてもいいだろう。
ヴラドが見所があると認めた漢なら、ワラキア大公国で爵位を与えればいいだろう。
それに月乙女に二人以上の子が産まれたら、ワラキア大公国にも爵位を持った月乙女の家を興す事が出来るのではないか?」
「これはしてやられたな。
レオに言い負かされるとは思わなかった。
確かにレオの言う通りだ。
だがハリソンも人間にしては見所のある漢だ。
そちらを優先しよう」
「それはいいが、同時に他の男の人選も頼む。
大公家に仕える人間の中から、見所のある漢をスミス伯爵家に送ってくれ。
いや、ワラキア大公国中の男から、見所のある漢を探し出してくれ」
「無茶を言ってくれる。
だが仕方がないな。
人間が子供を産める期間は限られている。
一日も無駄には出来んな。
分かった。
大公の力を使って、出来る限りの事をしよう」
ヴラドとレオが話し合い、先ずはハリソンと月乙女を御見合いさせることにした。
花作りの弊害にならないように、豊かになった家財を使い、花畑のあるスミス伯爵邸や別邸で夜会を開き、月乙女の疲労を軽減しようとした。
カイを侍従として月乙女の側近くに配して、花作りに悪影響を及ぼさないようにした。
同時にヴラドは本国に使いを送り、目ぼしい人間を全てこちらに送るように指示した。
下は平民から貴族まで、少しでも見所のある漢を全て送るように命じた。
しかもそれは素早く行われた。
使いに立ったのは闇の眷属だったからだ。
蝙蝠に変じた眷属は、力の限り夜の闇の中を飛び、その日の内にワラキア城に辿り着いた。
ヴラドの指示は国の隅々にまで行き渡り、多くの漢が大公国からフラン王国に向かった。
そしてその中に、エドワード・グリフィスと言う若き騎士がいた。
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