第22話

「ジェダ辺境伯公子、レアラ・ジェダ殿。

 王家王国の使者として参りました。

 シャル・テイラーと申します。

 この度は逆賊討伐御苦労様でございます。

 追って王家王国より褒美が下されると思われます。

 ただ、逆賊の第一王子に加担していなかった貴族士族まで、攻めるのは御止め頂きたい」


「何を言われるかと思えば、おかしなことを申される」


「何がおかしなことなのでしょうか。

 この度のジェダ辺境伯の挙兵が正当なモノだと認めさせて頂いたのですぞ。

 領地の切り取りも、逆賊に加担していた者の領地は認めると申しているのです。

 爵位の事も、悪いようには致しません。

 内々ではございますが、大公を名乗られてもいいとの事でございます。

 ここまでの厚遇を頂いておいて、おかしいとは、いくらなんでも、欲が深いのではありませんか」


「王太子やその側近が悪行を重ねていたにもかかわらず、子供可愛さにそれを許していた王。

 王太子と側近を恐れ、力有るうちは悪行を見て見ぬ振りしていた王族達。

 今更そのような者達を許せるものではない」


「なんと!

 それは、王家王国に弓引くと申されるか?

 あえて逆臣の道を選ぶと申されるのか!?」


「シャル殿は第三王子、レイモンド殿下の伯父にあたられるのでしたな」


「左様。

 レイモンド殿下の御母堂の兄となる。

 その縁で、今日までレイモンド殿下を御守りしてきた。

 レアラ殿は正論を申されるが、伏魔殿のような王宮内で殿下を御守りするには、正論だけではやっていけぬのだ。

 正論を通すには、それだけの力がいる。

 残念だが、我が家には王太子殿下や側近に抗する力などなかったのだ」


 王都から王家王国の使者と申す者がやって参りました。

 レアラ様は、正々堂々と立派に対応なされました。

 その風格は王者と言える立派なモノでした。

 そして話されることも、民を想い国を憂う立派なモノでした。


 ここで大公の位を得るのが、後世に誹りを受けることなく、逆賊を討って国を興した忠心であり仁君でもあると、褒め称えられる道でしょう。

 ですがそれでは、多くの民がまた悪政に苦しむことになります。

 だからレアラ様は、逆賊の汚名を着ても、王家王国を攻め滅ぼす御心算なのです。

 

 しかし、天下がレアラ様を手助けしてくださったのでしょう。

 レアラ様が簒奪者にならないように、手助けしてくださったのでしょう。

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