第23話
レアラ・ジェダ辺境伯公子の返答をシャル・テイラー伯爵は王国に伝えた。
王都に残っていた貴族士族。
レアラ公子に領地を追い出されて王都に逃げてきていた貴族士族。
皆レアラ公子を口汚く罵った。
だが、だからと言って、自分から討伐に向かうとは、口が裂けても言わなかった。
その勇気があるのなら、王太子と共に第一第二の討伐軍に同行していた。
勇気がないから、戦う事もなく領地を逃げ出し、王都に逃げ込んだのだ。
皆口ばかりの腰抜けだった。
それだけならまだ害はなかっただろう。
事もあろうに、この緊急の時に王位継承争いを始めたのだ。
第三王子から第七王子までが、外戚の貴族を頼り、多数派工作を始めた。
だが、今迄王太子と側近がほとんど全ての利権と手にしていたのだ。
派閥を強くするための資金がなかった。
そこで彼らは、王太子と側近の屋敷を襲い、蓄えられた莫大な財産を奪おうとした。
誰も彼も考える事は同じだった。
一派が襲撃を開始すれば、他の四派が負けじと襲撃をする。
王都内は内乱さながらの様相だった。
兄弟が、王太子派の屋敷周辺で剣を交え矢を射掛けるのだ。
戦いの中で、誰かが狂気に囚われて火を放てば、たちまち王都内で火事が引き起こされる。
王政を正すべき王族貴族がいがみ合えば、王都の治安などたちまち崩壊してしまう。
盗賊が跳梁跋扈するのは直ぐだった。
強盗は盗みを簡単にするために火まで放つようになった。
王子達が自分達の護るべき王都で戦争をはじめ、付け火までしたのだから、悪党が真似するのも当然だろう。
王子や貴族士族と盗賊は同等と言う事だった。
だがどこにも男気のある者はいる。
王太子や側近が力を持っている時も、弱い者を身体を張って守っていたのだ。
彼らが頼りにならない王家や王国を見限り、自警団を作って盗賊から民を護ろうとした。
自警団は急速に力を付けていった。
なのに、民が必死で王都の治安を護ろうとしていたのに、領地をレアラ公子に奪われた貴族士族達は、王子達が貴族士族を自分達の派閥に入れたいのを利用して、王都内での略奪を認めさせた。
王子達とその外戚は、味方欲しさに民を売ったのだ。
仁道に反する汚い行いだった。
だが、自警団がむざむざと貴族士族の略奪を見逃しはしなかった。
今迄は貴族地区でも王城に近い、権力者の住む辺りで王子同士が争っていた。
今では、裕福な商人や地主が住む地区で、貴族士族と自警団が戦いだした。
レアラ公子が四辺で貴族士族を追い出している頃、王都でもこのような戦いが行われていた。
しかし民に逆らわれた王子達は激怒した。
奪った財貨を使い、悪党を雇い、自警団を潰す事にした。
善人よりは悪人の方が多い。
商人や地主の中にも、他人を殺してでも、もっと富を蓄えたいと考える者が多い。
苦戦を強いられた自警団は最後の手段に出た。
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