第18話

「エマ、どう思う」


「親衛隊だと思います」


「では、あの噂は本当だという事だね」


「恐らく、本当だと思います」


 レアラ様と私は、一騎当千の騎士団を率いて出陣しました。

 大魔境の魔獣を間引きする聖なる務めは、絶対に疎かには出来ません。

 騎士団全軍を動員することは出来ませんから、その半数を出陣させました。

 城の護りは、重装甲の徒士団が引き受けてくれます。


 重装甲徒士団なら、大魔境の浅い部分までなら討伐に入る事も出来ます。

 見習いの従士達と組み合わせれば、少しは魔境の中にも入れます。

 私達が鹵獲した大量の軍馬や輓馬がいますから、訓練する時間さえあれば、騎士団を新設する事も可能です。


 全ては三度目の勝利を得て、時間を稼ぐことです。

 その時間稼ぎのためにも、王家王国の現状を正確に把握しなければいけないのですが、かなり胡散臭い状況です。

 国王が遠征していないのに、親衛隊が同行しているのです。


 噂を鵜呑みにする事は出来ませんが、どうやら王太子と王太子派の貴族は、追い詰められて謀叛を起こしたようです。

 王太子の余りの凶行に、国王も肉親の情を捨て、廃嫡の手続きを取ろうとしたというのです。


 それを恐れた王太子と王太子派の貴族が、国王を弑して、王国の実権を全て手に入れたというのです。

 どうも話がうますぎます。

 あの王太子と側近貴族に、それほどの能力があるとは思えないのです。


 王太子と側近貴族が失脚すれば、第二王子と彼を支援している貴族に王位が行く可能性が高い。

 しかし第三王子以下の王子とその実家は、王太子が国王と第二王子を殺し、王太子が私達に殺されたら、王位が回ってくる可能性があるのです。


「エマ、考え過ぎないでいいよ」


「え?!

 どう言う事ですか?」


「王太子と側近を捕虜にすれば全て分かる事だよ」


「そうですね。

 私達なら、簡単に捕虜に出来ますね」


「駄目だよ。

 エマを前線に出す訳には行かないよ」


「でも、私の実家の事でございますから。

 私が前線に出ない訳にはいきません」


「エマの実家でなくても、ジェダ辺境伯家は寄り子を見捨てたりはしないよ」


「それは分かっております。

 ですが、それでは私の気持ちが」


「まあ、私とエマの影武者には活躍してもらうよ」


「なるほど、そういう事でございますか」


「ああ、勝利目前の軍が、愚かな大将が討ち取られた所為で、大敗北を喫し、国が亡ぶこともあるのだよ。

 私とエマは、絶対に討ち取られてはいけないのだよ」


「分かりました。

 肝に銘じます」


「今日は、ネラとディックの活躍を見させてもらおうじゃないか」


「はい!」

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