第17話

「レアラ様万歳!」

「エマ様万歳!」

「ジェダ辺境伯家万歳!」

「バーブランド子爵家万歳!」


 私達がジェダ辺境伯領に帰り着いて直ぐに、レアラ様と私の結婚式が執り行われる事になりました。

 王家との決戦を前に、一夜でも共に過ごさせてやろうという、辺境伯閣下の思いやりなのだと思います。


 その思いやりは、バーブランド家の家格にも現れていました。

 本来なら、私が持参金と化粧領を持ってジェダ辺境伯家に嫁ぐのですが、今回の私の功名を評価してくださり、バーブランド家に新たな領地を加増してくださいました。

 その上、バーブランド家を男爵家から子爵家に陞爵してくださいました。


 でもこれは、本来やってはいけない事なのです。

 王家に仕える前からの寄り親寄り子関係であっても、今ではともに王家に仕える貴族家なのです。

 貴族を陞爵することが出来るのは、王家だけなのです。

 貴族に領地を与える事が出来るのも、王家だけなのです。


 これは、王家から独立するという宣言なのです。

 王家に仕える辺境伯家ではなく、独立した大貴族だと宣言しているのです。

 大公位を宣言なされるのか、王位を宣言なされるのかは分かりませんが、もう王家の下にはつかないという決意の表れなのです。


 その辺境伯閣下の決意を、貴族も士族も領民も、心から喝采を叫びました。

 私達の結婚を祝福してくれました。

 辺境伯閣下が、食糧庫を開放して、無料で料理を振る舞ってくださいました。

 酒蔵も開放されて、無料でワインやエールが振る舞われました。


 王家との戦争の最中なので、酔い潰れるほど飲む者は少数でしたが、皆心から祝ってくれて、辺境伯閣下の城にまで、祝杯の言葉を叫ぶ民の声が届くほどでした。

 いえ、もう私の城でもあるのですね。

 本当に幸せです。


 レアラ様との初夜は、夢のような一夜でした。

 最初レアラ様は、戦争の事も考えられて、契りを結ばない、白の結婚を提案されましたが、私から契りを求めました。


 例え戦に負けるような事があっても、王太子に媚を売って生きながらえる気などありません。

 私は本当に幸せでした。

 レアラ様も、幸せだよと心から言って下さいました。


 でも、そんな幸せも僅かな間だけでした。

 嫉妬の炎を燃やした王太子が、性懲りもなく軍を送り込んできたのです。

 しかも、レアラ様と私のいるジェダ辺境伯家の城ではなく、私の実家であるバーブランド子爵家の城にです。


 レアラ様はもちろん、御養父様のジェダ辺境伯閣下も、実家に援軍を送って下さいました。

 いえ、それどころか、レアラ様御自身が援軍の指揮を執って下さるのです。

 私が同行しない訳には参りません。

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