第19話

「我こそはジェダ辺境伯家の嫡男、レアラ・ジェダ。

 父である国王陛下を弑した、不忠不孝の王太子に仕える逆賊共よ、我と思わん者はかかってこい」


「我こそはレアラ・ジェダの妻にしてバーブランド子爵家の令嬢、エマ・バーブランド。

 騎士の誓いを破った卑怯者。

 戦場で脱糞した臆病者。

 味方した貴族の妻女を強姦した卑劣漢。

 実の父を殺した不孝者

 王を弑した不忠者

 私の前に立てるのなら、かかってきなさい」


「おのれ雌豚。

 あの女を朕の前に連れてくるのじゃ。

 生け捕りにして朕の前に連れてきた者には、万金と貴族位を与えるぞ」


「「「「「おおおおお」」」」」


 私とレアラ様の影武者が、王太子軍の前に出て挑発しました。

 レアラ様の影武者も堂々としていましたが、王太子の眼は私の影武者に釘付けになってるようです。

 よほど恨まれているのでしょう。


 私達の援軍が到着する前は、バーブランド子爵家の支城を包囲して、執拗な攻撃を繰り返していましたが、一向に攻め落とせる状況ではありませんでした。

 王太子軍の士気が地に落ちているのです。

 どうにもなりません。


 王太子軍が攻めている支城は、私の功名でバーブランド家の物になった城です。

 城に詰めている将兵は、元々はジェダ辺境伯家の精兵なのです。

 王国軍がバーブランド子爵家の本城を攻めようと思えば、どうしても先に落とさなければいけない城なのです。


 そのような要衝を、ジェダ辺境伯家閣下は、将兵ごとバーブランド家に褒美として与えてくださったのです。

 父もその恩に報いんと、将兵の階級を一つ上げました。

 平民の雑兵は卒族の下士官とされました。

 卒族の下士官は、士族の徒士とされました。

 士族の徒士は、騎乗資格のある騎士とされました。


 その費用で、褒美による領地の増加は全て消えてしまったそうですが、ジェダ辺境伯家への恩義と、武人貴族としての誇りの為には、絶対にやらねばならない事だったのです。

 そんな気持ちは、今の王家や譜代貴族には理解出来ない事でしょう。

 

 そんな事を考えている間に、王太子軍がまた罠に嵌りました。

 後退する我が軍の誘いに乗って、深追いして大損害を出しています。

 恐慌状態に陥った王太子軍が敗走しています。

 他の部隊にも恐怖が伝播したのでしょう。

 友崩れを越して逃げ出しました。


「我こそはジェダ辺境伯家に仕える男爵、ネラ・ボナー。

 我と思わん者はかかってこい」


 私と一緒に陞爵したネラが名乗りを上げ、王太子軍の側面から突撃しました。

 王太子と側近貴族が馬首を巡らせて逃げ出しました。

 王太子軍の後方部隊が蜘蛛の子を散らすように逃げています。

 もはや軍の体をなしていません。


「勝鬨をあげよ」


 レアラ様が勝利を宣言なされました。

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