第6話

「おお、臭い、臭い!

 王太子殿下は脱糞しているぞ!

 女騎士を恐れ、死を恐怖して、情けなくも脱糞したぞ。

 これから王家は脱糞王家と名乗るがいい。

 御前達も、脱糞軍と名乗るのだな」


 ネラが大声で叫んでいる。

 誇り高いネラが口にするのだから、嘘偽りではないだろう。

 何とも情けない。

 色魔で馬鹿なのは知っていましたが、ここまで臆病だったとわ。


「おい、御前達。

 私には脱糞の世話までは出来ん。

 御前達が殿下の糞の世話を知しろ。

 うん?

 御前達も臭いな。

 御前達まで脱糞していたのか!?

 この脱糞貴族が!」


 ああ、情けない。

 主が主なら、臣も臣です。

 主従揃って、戦場で恐怖して脱糞するとわ。

 でもこれで、王家の武名は地に落ちたでしょう。


 私達は女だけなのです。

 脱糞した王太子や貴族の世話など出来ません。

 そこで騎士達に捕虜の誓いを立てさせて、王太子と貴族の世話をさせました。

 もちろん王太子と貴族にも捕虜の誓いを立てさせましたが、全く信用などしていません。


 士族以上には捕虜の誓いを立てさせて、この戦いの間、二度と戦いに参加しない宣言をさせました。

 きっと王太子と貴族は誓いを破れと命じるでしょうが、別にそれで構いません。

 王家王国の名誉が地に落ちるだけです。


 下士や兵士は武装解除させました。

 武器や防具は、近隣の貴族家や士族家にむりやり買い取らせました。

 王太子と側近貴族を人質にしていますから、拒否など出来ません。

 解放された王太子は、代価を払わず貴族家から奪うでしょう。


 それでいいのです。

 それで王家王国の評判はまた低下します。

 今も、王太子と側近貴族が、女騎士を恐れて脱糞した話が、民の間に広まっています。

 王国中に広まるように、私達が噂をばらまいているのです。


 降伏した一万を超える軍勢を、私達だけで管理など出来ません。

 下士以下の雑兵は、逃がしてあげなければなりません。

 でもタダで逃がす訳ではありません。

 彼らには、王太子と側近貴族の愚かさを広めてもらわなければなりません。


「皆さんよく聞いて下さい。

 王太子殿下と貴族の方々は、戦いに恐怖して脱糞されてしまいました。

 戦士として、余りに恥ずかし事でございます。

 そこで私達が、戦士として鍛え直して差し上げます。

 殿下達も御認め下さり、騎士の誓いを立てて、逃げたり襲ったりしないと約束してくださいました。

 皆さんが証人となって下さい」


「「「「「おう」」」」」


 騎士以上の地位を持つ者達が、馬の上に立たされて、晒し者になっています。

 下士以下の雑兵達が、はやし立てています。

 普段偉そうにふんぞり返っている貴族士族が、大恥をかいているのが面白いのでしょう。

 さて、ここで一仕込みして移動しましょう。

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