第6話

「シンデレラ。

 あなたの所為で兄上様が大恥をかきました。

 ザンピエ公爵家に詫びを入れる為に、あなたを勘当します。

 ここで降りなさい」


「あの件は、エドモン百騎長が冤罪だと証明してくれたはずですが?」


「えぇぇぇい。

 うるさい。

 とにかくあなたは勘当です。

 馬車から降りなさい」


 いつもでは考えられない事に、義母が馬車に一緒に乗れと言い、公爵邸から連れ出されてしまいました。

 義妹たちは公爵邸に残っていましたから、何か仕掛けてくるとは思っていましたが、こんな場所で勘当を言い渡され、身一つで追い出されるとは思いませんでした。

 抵抗しようとしましたが、馬車の前後を護衛していた者に力づくで引き出されてしまいました。


 義母が公爵に恥をかかしたと言うくらいですから、絶対に報復の刺客が放たれるはずです。

 放り出されたこの場所にグズグズしていると、直ぐに刺客に追いつかれてしまいます。

 今までは秘密にしていましたが、影の支援者を頼るしかありません。

 急いで移動しましょう。


「ぐへへへへ。

 こんなところで何しているのかな。

 お嬢さん」


 急いで逃げたつもりでしたが、最初から襲うつもりだった人間から逃げきるのは至難の業です。

 それに舞踏会の衣装と靴で道を歩くのは難しいです。

 ここで死ぬのは悔しいですが、公爵が自分の仕掛けた罠を逆手にとられて、窮地に追い込まれる姿を見れたのは、とても溜飲が下がりました

 あとは恥辱を受けないようにすることです。


「無礼者!

 私を誰だと思っているのですか。

 アモロ子爵家の嫡女シンデレラです。

 私を襲ってただで済むと思っているのですか!」


「ぐへへへへ。

 馬鹿言ってやがる。

 お前はもう勘当されていて、子爵家の人間じゃないんだろ。 

 何をやろうが誰も助けてくれないよ」


「お頭。

 早くやらせてくれよ。

 もう我慢できねぇよ」


「馬鹿野郎!

 絶対手ぇだすんじゃねぇぞ。

 子爵令嬢の初物だ。

 お大尽様がいくらでも金を積むんだよ!

 初物が頂けないから、言葉で嬲ってやろうと思っていたのに。

 てめぇの所為で台無しだ!」


「すみません!

 お頭」


 安心しました。

 この場で嬲者にされることはないようです。

 ですが誘拐して、金持ちに売り払うつもりのようです。

 恥辱を受けないように、今すぐこの場で自害すべきか?

 一縷の望みをかけて、ギリギリまで生き残る努力をすべきか?


 下衆共が徐々に近づいてきます。

 決断は急がないといけません。

 一度捕まってしまったら、自害できないように拘束される可能性もあります。

 私の身体はグレアム様のもの。

 他の男に汚される前に死なねばなりません!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る