第5話

「迷惑をかけたね、シンデレラ嬢。

 ホストとして、この通り謝ろう。

 この者たちは、公爵の名誉にかけて私が処罰する。

 それでいいね!」


「不承知ですね。

 親衛騎士隊百騎長の地位と名誉にかけて、わが友グレアムの婚約者に冤罪を被せようとした四人は許せません。

 親衛騎士隊で黒幕がいないか取り調べします」


 公爵が地位をかさに、有無を言わさずシンデレラに納得させようとした。

 エドモン百騎長を相手にしては不利だと考えたのだ。

 だが黙って公爵の好きにさせるエドモン百騎長ではなかった。


「エドモン百騎長。

 公爵である我の言うことが信じられないというのか!」


 公爵はあくまでも地位をかさに押し切ろうとした。


「信じられませんね。

 シンデレラ嬢の婚約者で、わが友でもあるグレアムから、公爵から婚約破棄を強要されたと聞いております。

 そのような方を信じられるはずがありません」


 だがエドモン百騎長も引かない。

 この場で戦闘になっても構わないという覚悟だ。


「その言葉は、我の名誉を著しく損なう。

 処罰されても仕方ないぞ」


「それ以前に、今回の冤罪事件の会場責任者として、色々お聞きしたいことがあるのですがね」


「その前に不敬罪で処罰してくれる!」


「やれるものならやってもらいましょうか。

 ですが私もただでは死にませんぞ」


 公爵は、屋敷の周りが王太子軍で包囲されているのだと確信した。

 そうでなければ、エドモン百騎長がここまで強気になれるはずがない。

 エドモン百騎長とシンデレラをこの場で殺すのは簡単だが、そうすると王太子軍が有無を言わさずここを攻撃するだろう。

 今はそこまで無理する必要はないと、公爵は考えを変えた。


 隣国が味方に付いているから、王太子軍と戦うなら領地に戻ってからのほうが有利だと考え、ここは証拠隠滅に動く事にした。

 いや、証人の始末といったほうがいい。

 公爵は今回の冤罪騒動の手先に使った四人に目くばせした。

 逃げろと。


「ひぃぃぃぃ」


 四人は慌てて逃げ出した。

 公爵閣下が手引きして逃がしてくれると思っていた。

 だがそれは罠だった。

 トカゲの尻尾切りだった。

  問答無用で口封じするための手だった。


「待て!

 動くな!

 殺されるぞ!」


 エドモン百騎長は四人を助けようとした。

 証人を殺されないように動いた。

 だが公爵家の給仕や、公爵に味方する貴族に邪魔され、一歩及ばなかった。

 悔しいが、公爵に対抗するために、集中力をそちらに注ぎすぎていた。


「おのれ卑怯者。

 ホストの我の顔に泥を塗って逃げるか。

 構わん。

 殺せ!」


 公爵の命令に従って、警備の兵士が脂男と三人の令嬢を斬り殺した。

 無残だった。

 公爵のために冤罪に手を貸したのに、何の躊躇もなく切り捨てられたのだ。

 だがこれは王太子の策略の一つでもあった。

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