第4話
シンデレラは状況についていけなかった。
あまりに展開が早く、理解するのに時間がかかった。
だが暫くして状況が飲み込めた。
これは王太子殿下と公爵閣下の権力闘争なのだと。
自分がその真っただ中にいるのだと。
ボニファ公爵が王太子殿下を押しのけて王位に就こうとしているのは、貴族社会では有名な話だった。
わがアモロ子爵家に公爵が妹を送り込んできたのも、そのための一手だ。
もっともアモロ子爵家はおまけでしかない。
ボニファ公爵が本当に味方に引き込みたいのは、グレアムだ。
王国の双璧と言われるグレアムを味方にできれば、王太子殿下を押しのけて王位に就くことも不可能ではない。
普通の人間なら、双方の力関係を見て味方する相手を決めるだろう。
だがグレアムは、忠勇兼備の漢だ。
筋目を優先して王太子殿下派から動こうとしない。
それどころか、シンデレラとの婚約も貫こうとする。
考えられないことだった。
普通は家と家との結びつきを優先するのが貴族の結婚だ。
グレアムが任じられている将軍位は、侯爵待遇ではあるが一代でしかない。
だがビアータの婿としてアモロ子爵家に入れば、子爵どころか、後々伯爵家位も侯爵位も夢ではない。
実際グレアムはボニファ公爵にそう言われていた。
だがその為には、シンデレラとの婚約を破棄しなければならない。
ボニファ公爵は、自分の姪とグレアムの結婚を強行しようとした。
信義の人であるグレアムがそん事を認める訳がない。
断固として拒否した。
拒否するだけでなく、シンデレラを妻に迎えようとした。
自分の考えに固執するボニファ公爵は、シンデレラを殺そうとした。
更にグレアムを辺境に送り、その間にシンデレラに冤罪をかぶせ、合法的に処刑しようとしたのだ。
だがそのことを予想した王太子派が、シンデレラを助けるために、この舞踏会場に人を送り込んでいたのだ。
顔の売れた王太子や有力貴族ではなく、有能だが顔の売れていない、一代子爵位を持つ親衛騎士隊百騎長を送り込んできたのだ。
もしここでエドモンの言葉を認めれば、同じ方法で王太子派は攻撃を仕掛けてくる。
王宮に呼び出され、同じ方法を使われたら、弁明など一切取り上げられずに、王と王太子によって冤罪を着せられ、処刑されてしまうだろう。
味方がエドモンと同じように庇ってくれても、実行犯が処罰されることはない。
何度も同じ手を使ってくるだろう。
ボニファ公爵には最悪の状況だった。
味方の貴族しか招待していない会場だから、謀略とも言えない強引な手を使ったが、裏切者がいて、エドモンを舞踏会場に引き入れていたのだ。
当然会場の外にも軍勢が配されているはずだ。
ボニファ公爵は追い込まれていた。
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