第14話

「王家の天命は尽きました!

 愚かな子供可愛さに貴族との約束を破り、一旦廃嫡した者を復位させる。

 貴族と対抗するために、何時牙をむくか分からない隣国に援軍を頼む。

 そんな愚かな王家にこの国を任せる訳には参りません。

 国と民を護るために、聖戦を始めるのです!」


「「「「「おう!」」」」」


 嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 また戦争の陣頭指揮です。

 これも惰弱王と馬鹿息子のせいです。

 高貴なる者の責任を全然理解していません。

 そんな者に国を任せる訳にはまいりません。


 父上は隣国に備えて貴族軍を率いて国境に布陣されています。

 他の国境線も、境目の貴族が厳重に警戒してくれています。

 王国軍の八割も貴族軍に味方してくれました。

 残り二割が王城に籠城してますが、その中には貴族軍に内応している者もいます。

 貴族軍に味方した王国軍に友人縁者がいる者ばかりです。


 何よりも、王城を囲むように存在する王都の住民が、貴族軍に味方してくれたのが大きいです。

 国を腐敗させた惰弱な国王。

 教会や隣国に踊らされ、婚約破棄から廃嫡まで至った王太子。

 王都の民から見放されていたのです。


 それと、虚名ではありますが、私の評判です。

 前回の件で教会の不正を暴き、教会の悪事も断罪しました。

 教会が不当に民から集め蓄えていた富を、返せる範囲で被害者に返しました。

 乞食や貧民を集め、炊き出しを行い正業を紹介しました。

 そんなこんなで、戦姫とか仁姫と呼ばれているのです。

 少々面はゆい事ですが、それが役立ちました。


 ★★★★★


 惰弱王と馬鹿王子は磔獄門にしました。

 気乗りしませんでしたが、隣国や王家派に対する牽制が必要でした。

 私が汚名を着る事で、隣国の侵攻や反乱が起こる確率が少しでも減るのなら、高貴なる者の責務としてやらねばなりません。

 

 王妃殿下は殺されておられました。

 馬鹿王子の王太子復位に反対して、実の息子に殺されたのです。

 まあ、これがあったから、私も磔獄門に踏み切れたのです。

 他の王族は、王国軍や貴族と切り離すために、ホワイト侯爵領で幽閉する事にしました。


 我が領地なら、ホワイト侯爵家を裏切って王族を助けようとする者はいません。

 これ以上無用な血を流させないためには、そうするしかありません。

 今は父が貴族の代表を務めておられますが、王を名乗る為に戴冠してもらいます。

 隣国に付け入る隙を見せないためには、そうするしかありません。

 後は後継者です。


 見方を変えれば、父は簒奪者です。

 隣国も貴族も、虎視眈々と隙を狙っています。

 隙を見せれば、隣国は攻め込んでくるでしょうし、貴族は内乱を起こすでしょう。

 父に息子がいないのは大問題です。

 私が自由に生きる為にも、父の尻を叩かないといけません!

 

 

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