第13話

「全軍突撃!」


 情けない話ですが、私が王国軍を指揮する羽目になりました。

 全ては国王が惰弱なせいです。

 国王が王太子の処置を渋るので、被害にあった貴族と一緒に王城の周りを取り囲み、言う事を聞かねば弑逆されるかもしれないと思わせて、王太子廃嫡の一筆を無理やり書かせました。

 

 そうです。

 無理やり書かせたのです。

 だから何時反故にするか分からない、危うい約束なのです。

 こんな状態では、ホワイト侯爵家軍を教会攻撃に動員する訳にはいきません。

 国王が息子可愛さに廃嫡を取り消したら、ホワイト侯爵家軍は背後から王国軍に攻撃されるかもしれません。


 だから多くの貴族士族と相談して、貴族士族軍に王宮を包囲してもらいました。

 王国軍は、将軍や百兵長を配下にして、私が指揮することになった。

 腹立たしい事です。

 何故私がこのような事をしなければいけないかと、忸怩たる思いです。

 ですがやらねばなりません。


「私は知りません。

 マリーが勝手に名乗ったのです。

 神に誓って嘘偽りは申しません」


 枢機卿が言い訳をしています。


「そうなのです。

 全てマリーが勝手にやった事なのです。

 私も枢機卿もマリーに騙されたのです。

 神に誓って嘘偽りは申しません」


 教皇も噓八百を並び立てています。


「ならば一つ問う。

 神は偽聖女が現れると、枢機卿と教皇に啓示されなかったのか!?

 神の啓示も受けられぬ愚物が、教皇と枢機卿という高位につける教会とは、神を冒涜する邪教の巣窟である。

 手向かう者は容赦せずに斬り捨てる!

 罪を悔い潔く罰を受ける者は地に伏せよ

 公明正大な裁判を受けさせてやる!」


 嫌な話です。

 戦の陣頭指揮をして、教会を滅ぼさないといけません。

 歴史に悪名が残るかもしれません。

 少なくとも教会の身勝手な記録には、私が極悪非道の背教徒と記されるでしょう。

 憂鬱な話です。


 しかし私の檄で、少しは被害者を少なく出来たのでしょう。

 教会が勝手に自称する神殿騎士団は、抵抗せず武器を棄てました。

 多くの神官や修道女も抵抗しませんでした。

 見苦しく逃げようとしたのは、教皇と枢機卿を筆頭とする、高位の者達でした。

 情けない話です。


 私は約束通り公明正大な裁判を行ってやりました。

 マリーや多くの神官・修道女・聖堂騎士団員の証言を集め、教皇と枢機卿を筆頭とする、教会高位の者達が王太子に謀叛を唆した事を証明しました。

 

 神明裁判は行いませんでした。

 あんなものはまやかしです。

 普通は絶対に傷が残るのです。

 傷を綺麗に治せる治癒魔法使いや、治癒魔法使いを雇える金持ちは全員無罪になってしまいます。

 

 罪を証明できた教会関係者は全員処刑しました。

 教会の規定通り、火焙りの刑で殺してあげました。

 煙で楽に死んでしまわないように、無煙でじっくりと焼き殺してあげました。

 証拠が不十分な者は、教会を破門した上で、魔獣の住む大森林に追放しました。

 後は王家の処分だけです!

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