第12話

 我が家の騎士や従騎士が動くと、瞬く間に王太子派は捕縛されました。

 私は負傷した国王派貴族を激励し、武功を褒め称えました。

 本来褒賞すべき国王と王妃が泣き崩れているからです。

 息子の生末を思って泣いているのでしょが、これはいただけません。

 一国の指導者として失格です。

 だがら引導を渡してあげました。


「国王陛下。

 王妃殿下。

 謀叛人とその一味は捕縛いたしました。

 獅子奮迅の活躍をし、負傷までされた貴族士族の方々に、褒美のお言葉をかけてあげてください」


「うぇっぐ。

 えっぐ。

 うぅうぅう。

 わがった。

 みなよぐやってくれた。

 ほめてつかわず」


 情けない。

 息子可愛さにえずき泣きしながら、渋々言葉をかけています。

 貴族士族の多くは、思いっきり冷めた眼で王と王妃を見ています。

 特に負傷までした貴族士族の眼には、怒りさえ見受けられます。

 私の部下に押さえつけられている王太子とマリーには、殺意の籠った視線を送っています。


「捕縛した一味の者は、この場で爵位と領地を剥奪してください。

 まだ隠れている一味の者は、我がホワイト侯爵家で拷問して白状させます。

 当然マリーも我が家で取り調べます。

 さすがに王太子を我が家で拷問をかけるわけにはいけませんので、王家の方で取り調べ願います。

 宜しいですね!」


 未だに愚図愚図と泣き崩れる国王と王妃に怒りさえ覚え、強く要請しました。

 特に王太子の廃嫡については、多くの貴族がいるこの場で宣言してもらわないといけません。

 有耶無耶にしては、後に禍根を残すことになります。

 国王と王妃がどれほど懇願しても、断じて宣言して頂かないといけません。


「それと、教会に兵を送らないといけません。

 そうですね、マリー。

 この謀叛も、教会が黒幕ですね。

 正直に言いなさい。

 言わなければこの毒を顔にかけますよ。

 疣蛙の毒を顔にかけられたら、どれだけ醜い姿になるか分かっていますね!」


「ひぃぃぃぃ。

 ごめんなさい。

 やめてください。

 いいます。

 本当のことを言います!

 だから許してください!」


「全て正直に話したら、命は助けてあげます。

 本来なら拷問の上で、ノコギリ引きの刑でさらし首にされる所ですが、命を助けてあげます。

 さあ!

 正直に全て白状しなさい!」


「言います。

 正直に話します。

 教会がやったのです。

 私を聖女に祭り上げて王太子の妃に送り込み、馬鹿な王太子を操って、この国を教会に都合のいい国にするつもりだったんです」


「お聞きになりましたか?

 陛下!

 直ぐに教会討伐軍を編成してください。

 今直ぐにです!」


 国王はおろおろして決断しません。

 情けない事です。

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