第8話

「なんですって?!

 今度は教皇猊下と枢機卿猊下まで貶めるのですか!

 なんと恐れ多い事を言うのでしょう。

 許されません。

 絶対に許されません!

 聖女として宣言します。

 アルフィンを背教徒と認定します」


 なるほど。

 最初からそう言う予定だったのですね。

 だったら最初からそう言えばいいのに。

 ここまで墓穴を掘る前なら、教会と聖女の権威で、少しは貴族を味方につけられたかもしれません。


 ですがもう駄目です。

 ここまで嘘と馬鹿をさらけ出したら、味方に付く貴族はほとんどいないでしょう。

 誰だって負ける方には味方したくないのです。

 家の執事長が目配せしてくれています。

 今日の全ての顛末を、瓦版で配布する準備ができたのでしょう。


「偽聖女の可能性が高い貴女が、私を背教徒認定すると言うのですか?

 その前に教皇猊下と枢機卿猊下に、貴女が本当の聖女かどうか、確認しなければなりません。

 教会で神様の名のもとに婚約した王太子殿下と私を、聖女の名で破棄させると言う暴挙をした貴女を、教皇猊下と枢機卿猊下が本当に聖女認定したとは思えません。

 でももし、教皇猊下と枢機卿猊下が本当に貴女を聖女認定したと言うのなら、剣を持って神様の名誉を守ります」


 国王陛下と王妃殿下が驚愕しています。

 愚かな王太子は口を開けたまま何も言えないでいます。

 多くの貴族が口元を引き締め、今後の出方を思案しています。

 当然でしょう。

 私が教会に宣戦布告をしたのですから。


 私が剣を持って自分と家の名誉を守ると言ったのなら、ホワイト侯爵家と教会の戦いになっていたでしょう。

 ですが私は、剣を持って神様の名誉を守ると言いました。

 これだと、ホワイト侯爵家と聖女・教皇猊下・枢機卿猊下の戦いになります。


 聖女・教皇猊下・枢機卿猊下は教会全体の戦いにしようとするでしょうが、教会にも派閥があります。

 虎視眈々と教皇と枢機卿の地位を狙っている者がたくさんいます。

 そんな者達は、今が教皇と枢機卿を追い落とす好機と考え、我がホワイト侯爵家に味方しようとするでしょう。


 特にこの場で聖女・教皇・枢機卿の三者は酷い矛盾を露呈しました。

 少々強引な動きをしてでも、教皇と枢機卿の追い落としを企てるでしょう。

 一方教皇と枢機卿は、力で反対派をねじ伏せて、我がホワイト侯爵家を潰しに動くか、それとも聖女を斬り捨てて偽物として処分するか?


 私としては教会ごと潰してしまいたいのですが、さてどう動くでしょうか?

 なかなか面白い展開になってきましたね。

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