第7話

 国王陛下の命令で、新たに騎士が教会に派遣されました。

 王妃殿下が横から厳しく命じておられましたから、詰問になるでしょう。

 家の執事長が目配せしています。

 家からも詰問使を送るようです。

 ですが兵力は大丈夫なのでしょうか?


「お待ちになってくださいますか。

 今の質問にお答えしましょう。

 このままでは性悪女の為に、聖女の私だけでなく、教会まで不当に貶められてしまいます。

 そんな事は神の御前では許されません!」


 マリー嬢が反論するようです。

 反論まで結構時間がかかっています。

 即答する準備をしていなかったのでしょう。

 ならばこの場で考えた言い訳でしょう。

 論理的に破綻していれば、更に窮地に追い込む事ができます。


「聖女である私が、婚約者を奪ったように言い掛かりをつけていますが、そもそも婚約自体が不当なのです。

 神から遣わされた聖女が、王権を神から授けられた、王家の王太子殿下以外と婚姻するなど、神を蔑ろにする行為です。

 ですから、王太子殿下の婚約は無効なのです。

 アルフィンが婚約を言いたてるのは、教会への、いいえ、神への冒涜です!」


 あらあら。

 自分視点の身勝手な言い分ですね。

 私だけではなく、多くの貴族が眉をひそめています。

 どの貴族も、もう少しうまい言い訳を期待していたのでしょう。

 勝敗が決まった戦いで、敗者が足搔くのを観て楽しむつもりだったのでしょう。


「そうなのですか?

 聖女様が現れると、王太子殿下の結婚も婚約も無効になるのですね。

 倫理と道徳に厳しい教会がそのような戒律だったとは驚きです。

 それ以上に驚きなのは、王太子殿下とわたくしの婚約を承認された、教皇猊下と枢機卿猊下でございます」


 私はチラリと王妃殿下に視線を送りました。

 このような大事は、国王陛下に振れません。

 愚かな国王陛下では、此方の思い通り、上手く立ち回るのは不可能です。

 王妃殿下なら、此方の意を汲んで、マリー嬢と教会を追い込んでくれるでしょう。


「どう言う事なの、アルフィン嬢」


「聖女様が神から遣わされると言うのに、私が王太子殿下と婚約するのを、教皇猊下と枢機卿猊下は許されました。

 それは、教皇猊下と枢機卿猊下が、神様の御言葉を賜れないどころか、神様の御心を汲み取れないのではありませんか?

 それとも神様は、普段は道徳と倫理を人に説いているにも関わらず、婚約を破棄される人の心の痛みと苦しみを、踏み躙られると言うのですか?

 そうではありませんよね?

 己の利益の為に、神様の言葉を偽る背教徒がいるのですよね!」


 さあ!

 反論して頂きましょうか!

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