第6話

「なんだと?!

 なにを言っている?

 なにを企んでいる?!

 素直に白状しないと、ただではすまんぞ!」


「なんて事を言うんです、リアム!

 陛下!

 早くリアムとあの女狐を拘束してください!」


「おお、そうだな。

 近衛兵。

 早く二人を拘束しろ」


 王太子は少し不安になってきたようですね。

 当然です。

 小心で馬鹿で女好きの王太子です。

 少し揺さぶれば動揺するのは分かっていました。


 それに比べれば、王妃殿下の方が決断も早いですね。

 国王陛下は駄目ですね。

 王太子の愚かさは陛下譲りなのかもしれません。

 王妃殿下に言われる前に、近衛兵を動かすべきでした。

 まあ、この愚かさが、私に利しているのですが。


「お待ちください。

 その前に確認しておかなかればならないことがあります。

 とても大切な事です。

 王太子殿下の廃嫡はもちろん、聖女様の御命にも係わる大問題です」


「なにを言う?!

 たかだか侯爵令嬢の分際で、王家の後継問題に口を出そう言うのか!」


「そうです。

 王家の後継問題に口をさしはさむなんて、なんて不敬なんでしょう。

 それに私を殺すですって?!

 なんて不信心で狂暴なんでしょう。

 神をも恐れぬ傲岸不遜ですわ!」


 ふふふ。

 お馬鹿さんね。

 私の言質を取ったつもりなのね。

 自分たちが根本的な失態を犯しているのに。

 でも本当に気付いていないのかしら?


 万が一これすら罠と言う事もあるのかしら?

 自信満々の顔をしているし。

 勝利の自信に満ち溢れているわね。

 私には逆転の手があるとは思えないのだけど。

 どっちにしても、攻めるしかないわね。


「教会が認定された聖女様。

 世にあまねく慈愛を広める方。

 聖魔法の使い手にして、世に正義と慈悲を満ち溢れるさせてくれる方。

 人の手本となる倫理と道徳の体現者。

 でしたわね、国王陛下」


「そうだ。

 教会が常に言っている聖女はそう言うお方だ」


「では、教会が常に言っている、正義と倫理と道徳において、他人の婚約者を奪う事は、どう言う扱いになるのでしょう?

 私の知る限り、教会は姦通を厳しく禁じております。

 国王陛下が側室を置かれることにすら文句を言ったと聞いております。

 以前婚約を破棄した男爵には破門を言い渡し、教会への参拝を禁じていました。

 同じく婚約破棄した商家の当主も破門し、商家を潰す圧力をかけていました」


「そうだな。

 確かにそんなことがあった!」


「そうですわね!

 確かに教会は常々男女の事に厳しく接していました!

 その教会が聖女に認定した女が、事もあろうに他人の婚約者を奪った。

 絶対に許される事ではありませんわ。

 聖女認定が取り消されて当然ですわね。

 陛下、早く教会に御知らせしなくては!」


 国王陛下も正妃殿下も上手く誘導に乗ってくれました。

 王太子は真っ青になって震えています。

 マリーは顔色も変えず私を睨みつけています。

 次はどう出てくるのですか?

 

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