第35話

 聖剣の効果は劇的だった!

 シャアの持つ聖剣は一撃で魔獣を斃した。

 クロードの持つ聖槍は一撃で怨念を斃した。

 エイダの持つ聖短剣も怨魔獣に激烈な効果を表した。

 一振りは魔獣を斃し、一振りは怨念を斃した。


 寝物語の荒唐無稽な効果は、国を奪われた祖父母の願望だろうと、シャアは半ばあきらめていたのだが、本当だったのだ。

 バートが持つ槍と剣も、少々劣るが怨魔獣に効果があった。

 エミリーとアメリアが予備で持つ長剣も、怨魔獣に効果があった。

 だが弓を主力武器にするエミリーとアメリアは、牽制と回復に専念することになった。

 

「これで何の心配もなくなった!

 王子達の逃げた所は既に調べてある。

 恐らくオリヴィアは第一王子の逃げたところに行くだろう。

 直ぐに助けに行ってやりたいが、先ずはオリヴィアが帰る場所を確保する。

 王子達に好き勝手させていた王と王妃を殺す」


「「「「「おう!」」」」」


 シャアは王都で檄を飛ばした。

 自分が先王朝の遺児であると明かした。

 悪逆非道な現王朝を倒し、先王朝を復古させると宣言した。

 王都の民は湧きたった。

 地獄のような国では、先王朝は神聖視されていたからだ。


 シャアは王都の民を集めて、王城にあった食糧を配布した。

 傭兵として鍛えた人物眼を駆使して、民を組織化した。

 実際に上手く機能するか、炊き出しや王城の清掃に使って確認した。

 シャアの人物眼に間違いはなかった。

 しかも働くごとに円滑に動けるようになった。


 バートは直ぐにオリヴィアを助けに行きたくて苛立っていた。

 エイダは自分の考えとシャアの考えが一致していたので、心配していなかった。

 バートも頭では分かっているのだが、生来の餓鬼大将気質が出てしまっていた。

 早い話が甘えが出ているのだ。

 心から信頼できる先輩指導者を得て、今まで抑えてきた我が出てしまっていた。


 シャアとエイダは、怨魔獣と化したオリヴィアが、王子達に負ける訳がないと思っていた。

 本当にオリヴィアを助けたいのなら、少なくともオリヴィア本人の恨み辛みは、完全に果たさせるべきだと考えていた。

 復讐さえ果たせば、元の聖女に戻ってくれると信じていたのだ。


 さて、現王朝の王と王妃の打倒だが、シャア達が軍を率いて南都を攻め落とす必要もなくなった。

 派手好きな王と王妃は、民から搾り取った金銀財宝を湯水のごとく使い、豪華絢爛な新城を温かい南の地に築城していたのだ。


 その城の有る所を南の都と呼んでいたのだが、その南都をオリヴィアから離れた怨魔獣が襲い、王も王妃も貴族も皆殺しにしたのだ!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る