第32話
オリヴィアは王子達に復讐する決断をした。
心の中に昔の優しいさが蘇りつつあり、それに反駁する怨念があるのだ。
それが自分の怨念なのか、他の誰かの怨念なのかは分からない。
それでも、自分の意識が怨念に奪われてしまう恐怖を覚えた。
自分が自分であるうちに、王子達に復讐したかったのだ。
大臣や重臣、騎士達は後回しでも構わない。
王子達に復讐するついでに殺しても構わない。
王子達だけは、自分が自分であるうちに復讐しなければ、今迄生き延びてきた意味がなくなる。
だから急いで王城に乗り込んだ。
いつも通り、王城を魔獣達で厳重に包囲して、恐怖の坩堝に落とした。
「ウォォォォン。
グギャォォォォ。
ガァォォォォォ。
キィィィン。
キャゴォォォ」
夜の闇に紛れて、空を翔けて王城を包囲した魔獣達の雄叫びは、王城を囲むように存在する、王都の民も恐怖の坩堝に落とした。
王都の民は半減していた。
オリヴィアと魔獣の噂が国中に広がっていたからだ。
少しでも余力のある者は、この国を捨てて他国を目指していた。
だが多くの人は、途中で盗賊に襲われ、全てを奪われた上に殺された。
同じ国に住む、より虐げられていた人に襲われ殺された。
殺されなかった人は、奴隷として他国に売り払われた。
盗賊や貴族の中には、他国の悪人と手を組み、奴隷売買や密貿易を行っている者がいるのだ。
逃げそこなった人と、逃げる為の余力のない人が、王都に残っていた。
そんな人達が、自分の家で震えていた。
魔獣に襲われ喰われることを恐れ、ただ震えていた。
だがそれは民だけでなく、王都に住む王侯貴族は勿論、神官や兵士も同じだった。
兵士の中には勇気のある者もいた。
いや、邪悪な心を持って、多くの人を踏み躙ってきたから、勇気と表現するのはおかしいだろう。
蛮勇を持って魔獣の包囲を突破しようとしたのだ。
愚かな事だった。
人間が魔獣に勝てるはずがないのだ。
それも、怨念が取り込まれた知恵のある魔獣だ。
本能だけで、その場で食欲を満たすだけの為に、襲っている訳ではないのだ。
人間を恐怖させるための襲撃が始まった!
魔獣は逃げようとした兵士を叩きのめした。
殺さないように、血管を傷つけず、手加減して叩いた。
手足や胸の骨を粉砕するだけの攻撃をした。
動く事が出来ず、痛みにもがき苦しむだけだった。
中には食糧として喰われる者もいた。
だが殺してはもらえなかった。
もっとも痛みを感じる手足の先を喰い千切られ、その先に泥を塗り、手足が腐る痛みで苦しめようとした。
魔獣に取り込まれた怨念がかつてされた事だった。
そして手足が腐る痛みに苦しむ人間を、王城内に放り込んで、籠城する人間を恐怖に陥れた。
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