第25話
「分かっているよ。
オリヴィアが復讐をしたいという気持ち、十分わかっているよ。
手伝うよ。
オリヴィアの復讐を手伝うよ」
「ええ、そうよ、オリヴィア。
私達も手伝うわ。
手伝えるだけの力を付けてきたわ。
あなたが死んでいたら、私達だけで復讐する心算だったの。
だから、一緒に復讐出来るのなら、それでもいいのよ」
オリヴィアは嬉しかった。
心底嬉しかった。
自分をここまで愛してくれる人達がいる。
共に復讐地獄に落ちてくれるという兄と姉がいる。
そう思えるくらい、人の心が戻ってきた。
(許せない。
絶対に許せない。
復讐よ。
絶対に復讐するのよ。
あなたは私達のモノよ!)
オリヴィアの内心は凄まじい争いになっていた。
自身の復讐を果たしたい気持ちと家族のもとに帰りたい気持ちに加え、身体に取り込んだ数多の怨念が争っていた。
家族と幸せに暮らしたい想いは、決して小さいモノではない。
だがそれ以上に、自分と数多の怨念の方が大きく強かった。
「駄目よ。
絶対に駄目!
これは私達の復讐なの。
お兄ちゃんとお姉ちゃんの力を借りるわけにはいかないわ!
帰って。
御願いだから帰って。
私が狂気に支配される前に!」
「オリヴィア!」
「オリヴィアちゃん!」
「行くな。
行けばオリヴィアを追い込むことになる!」
シャアは、止めた。
逃げるように奈落の底に帰るオリヴィアを追おうとする、バートとエイダを止めた。
シャアには見えていたのだ。
苦悶に歪むオリヴィアの顔が。
家族のもとに帰りたい想いと、復讐を果たしたい怨念が争い苦しんでいると、シャアには推察出来た。
同時に、バートとエイダを復讐地獄に巻き込みたくないという、オリヴィアの優しさも推察出来た。
だからバートとエイダを止めたのだ。
「ですがシャア。
このままではオリヴィアが救われません。
一緒に帰れないと言うのなら、復讐を手助けをする。
そう言う約束ではないですか!
約束を破るというのですか?」
バートは少々常軌を逸していた。
元々ガキ大将だったが、国を追われてからは自分を抑え、感情に走るような事はなっかった。
リーダーであるシャアは勿論、先輩の傭兵に逆らうような事はなかった。
オリヴィアを助けるという、絶対の目的があったからだ。
だがその目的が潰えそうになって、ずっと抑えてきた感情が激発してしまった。
その気持ちはシャアにも十分わかっていた。
どうすればいいのかもわかっていた。
だからバートとエイダを説き伏せて、一旦奈落の淵から移動する事にした。
オリヴィアの復讐を手伝い、助け出すことが出来る場所へ。
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