第24話

 オリヴィアの復讐は順調に進んでいた。

 多くの教会を襲撃し、神官達を殺しまわった。

 教会のある街の領主一族も皆殺しにした。

 殺し方はそれぞれだった。

 魔獣の身体に沁み込んだ、怨念がされた事と同じ方法だった。


 大司祭の教会に報復に向かった時は、石打で殺された怨念は、石打で復讐する事を望んだ。

 ファラリスの雄牛と言う処刑道具に閉じ込められ、焼き殺された怨念は、領主やその一族、処刑に携わった領主の家臣、その全員を焼き殺して復讐した。


 司教の支配する街に報復に行ったときは、ネズミの処刑で報復した。

 ネズミ達を入れた壺を口を下にして腹の上に置かれ、人肌に温まるのに驚いたネズミ達は、腹を喰い破って逃げようとする。

 そんな残虐な方法で殺された怨念は、魔獣として怨敵の腹を喰い破るだけでは我慢出来なかった。

 ネズミを集め、全く同じ方法で復讐した。


 司教のいる街を襲撃し、一旦奈落に戻って魔獣の力を補充しようとした時。


「オリヴィア!

 助けに来たぞ。

 待たせてすまなかった。

 ようやく助けに来られた!」


「オリヴィア!

 私よ。

 エイダよ!

 助けに来たの。

 一緒に帰りましょ!」


「バート?

 エイダなの?!

 お兄ちゃん!

 お姉ちゃん!

 生きていてくれたの?!」


「ああ、生きていたぞ。

 オリヴィアを助けようと、力を付けて戻ってきたよ」


「そうよ、オリヴィア。

 あなたを助けたい一心で、強くなってここまで来たわ!

 だから、ね。

 一緒に帰りましょう!」


「お父さんは?

 お母さんは?

 生きて、生きているの?!」


「大丈夫だ!

 隣の国で生きている」


「ええ、そうよ。

 無事に生きているわ。

 一緒に助けに来ると言っていたけれど、足手纏いになるから、家で待っていてもらったの。

 オリヴィアが帰る家を護ってもらっているのよ!」


「そう。

 よかった。

 本当によかった!

 お父さん。

 お母さん。

 お兄ちゃん。

 お姉ちゃん。

 無事に生きていてくれた!

 それでもう十分よ」


 オリヴィアの心の一部は満たされた。

 恨みと憎しみしかなった心に、自分の為に命懸けで地獄のような国に戻って来てくれる肉親がいた。

 そう思うだけで、聖女の頃の優しい心が取り戻されかけた。

 だが駄目だった。


「私は憎しみと恨みを忘れることは出来ない。

 特に私を嬲り者にした、王子達と貴族達、騎士達は絶対に許せない。

 だから行けない。

 お兄ちゃんとお姉ちゃんとは、一緒に行けないわ。

 帰ってちょうだい!」


 オリヴィアの心の中では、復讐を諦めてでも、家族のもとに帰りたい想いもあった。

 だが同時に、どうしても許せない怨敵への増悪が心に沁みついていた。

 だがその想いを分かってくれたのも、兄と姉だった。

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