第22話

 シャア組は、最初からこうなる事を想定して、囲まれないようのドアに近い壁側の席を確保していた。

 二人の男が盗賊傭兵団に斬り込んで動く場所を確保し、隙間から三人の女が投擲術で支援する。

 エミリーとアメリアは弓の名手だが、他の国に入っているので、矢の補給が出来ない可能性を考え、投擲術を使っていた。


 盗賊傭兵団員は、多少の緊張はしていたが、女誑しの毒針術を信用していた。

 今迄から、何度も同じような場面で美味しい思いをしていた。

 今回も同じような想いが出来ると思っていた。

 男二人には多少てこずると考えていたが、それぞれに五人の屈強な戦士を向けていたから、大丈夫だと過信していた。

 女二人にも三人づつの戦士を配して、万全を期していると思い込んでいた。


 それで十分だと考えていたのだが、女誑しが話しかけてから数瞬の間に、二十一人が殺され十二人が戦闘不能に追い込まれている。

 いや、盗賊傭兵団員には正確な損害等分かっていない。

 だが自分達が圧倒的不利な状況に陥っているのだけは、痛切に理解していた。


 他の勇者候補のメンバーは、関わり合いにならないように、壁際に張り付いていた。

 中には剣を抜き、盗賊傭兵団員が近付いてきたら斬り殺す覚悟の者もいた。

 ある程度戦闘経験が有る者には、シャア組には勝てない事が分かっていたのだ。

 逆らったら殺されると理解していた。

 だから盗賊傭兵団員だけが部屋の中で浮いていたのだ。


「すまねぇ!

 家の馬鹿が粗相をした。

 全部家が悪い。

 詫びを入れるから許してくれ」


 盗賊傭兵団の中で、特に狡猾な男が片膝ついて詫びてきた。

 騎士の礼を真似ているのかもしれない。

 こいつは、いつもこの手で相手を油断させてきた。

 相手が許すと言って近付いてきたら、ガントレットに仕込んだ毒矢を飛ばすのだ。

 卑怯極まりない男だった。


 だがバートには通用しなかった。

 自分が油断すれば、エイダをオリヴィアのような地獄に落とす可能性がある。

 だからこの国を出てから一切隙を見せず、油断しないように気を付けてきた。

 礼をとる卑劣漢に素早く横から近づき、一刀のもとに首を刎ねた。

 そこからは惨殺だった。


 助けてくれ、許してくれと、泣き喚く負傷者に止めを刺した。

 抵抗する者はバートに斬り殺されるか、クロードに突き殺された。

 中には他の勇者パーティーに助けを求める者もいたが、そんな人間は求めた相手に斬り殺されていた。

 無関係な人間も、ここで盗賊傭兵団員を庇ったら斬り殺されると理解していた。


 シャア組は全く無傷で百人以上の盗賊傭兵団を殲滅した。

 誰もシャア組に近づかなかった。

 シャア組がいる反対の壁際に張り付いていた。

 そんな状況で勇者候補のリーダー達が帰ってきた。

 そこにはシャアは勿論、盗賊傭兵団の団長もいた。

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