第20話
教会幹部との顔合わせは、シャアが代表して行った。
どの勇者候補もある程度のパーティーを組んでいたから、代表が謁見したのだ。
最初から全員の謁見は不可能だったが、そもそも枢機卿が会ってくれる訳ではなかった。
戦闘部門の代表である、聖堂騎士団の団長と幹部が謁見を行っていた。
枢機卿から見れば、他国出身の勇者候補など下賤な存在でしかなかったし、信用できない人間を謁見するのは危険だった。
シャアから見れば、聖堂騎士団の団長も幹部も、鎧袖一触で斃せる弱者だった。
同行した勇者候補も、大した存在ではなかった。
だが多勢に無勢と言う事もある。
完全に敵対するのは得策ではなかった。
だから下劣な人間達とも表面上は上手くあわせていた。
問題は前金と食糧だった。
勇者候補とは言え、実質は傭兵だ。
傭兵は武器や防具は自前が前提だ。
兵糧も自分達で準備するのが普通だ。
報酬は前金と後金をもらうのが常識だ。
だが問題がある。
この国でまともな食糧が売買されているかどうかだった。
極貧の国だ。
民は王侯貴族や教会から絞られるだけ搾り取られている。
商業が成り立つ余剰生産が存在しないのだ。
だから最低限の兵糧は教会から支給させたかった。
その為の根回しは勇者候補達に行っていた。
元々勇者候補とは名ばかりの悪人ばかりだ。
強欲な本性を丸出しにして、聖堂騎士団と報酬交渉をしていた。
シャアは他の勇者候補を使って交渉を有利に運んだ。
聖堂騎士団や教会に眼を付けられないように、自分は表に出ないようにした。
その上で、米・堅パン・ワインと言った主食を、定期的に支給されるように契約を結ばせた。
前金に関しては、激烈な交渉が繰り返された。
聖堂騎士団は、兵糧を支給するなら前金は払わないと突っ張った。
勇者候補達は団結して強く要求した。
勇者候補は海千山千の悪党だ。
聖堂騎士団も下劣な悪党だ。
熾烈な交渉が行われたが、今回は勇者候補が勝った。
勇者候補の大半は、別にこの国に拘らないのだ。
無理に魔女を斃さなくてもいいのだ。
だから強気に交渉出来た。
更にシャアの入れ知恵で、教会領で自由に狩りをする権利を手に入れた。
主食の支給は勝ち取ったが、前金の価値が分からないのだ。
勇者候補達の感覚で多めの前金を手に入れたが、この国の物価次第では、それ価値が著しく低い可能性もあったのだ。
主食以外にも、ある程度の魚肉を食べないと体力が維持出来ない。
それでは魔女を斃せないと言う建前だ。
本音は、王侯貴族や神官を殺し、オリヴィア助けるために、直前まで体調を維持する必要があるからだ。
そんな風にシャアが画策している頃、残りのパーティーメンバーが危機に瀕していた。
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