第18話

 魔獣の報復が始まった。

 司祭と神官達にはいつもの報復だった。

 最初は石打から始まった。

 内臓を喰い千切られた。

 ケガも喰い千切った内蔵も、治癒魔法を使って回復させる。


 回復させてからまた拷問する。

 治した肉を割き骨を砕く。

 内臓を喰い散らかす。

 互いの肉を喰わせる。

 激痛に苦しみながら、肉を喰い合う。


 そしてまた回復させる。

 永劫の地獄を味わわせる。

 だが司祭の愛人は違った。

 それだけでは許されなかった。

 女の子達の恨みを晴らすには、特別な拷問が必要だ。


 激痛地獄の後で、司祭の愛人の顔を割いた。

 何時もは、苦しんだ事を国中に周知する為に、顔は傷つけなかった。

 だが司祭の愛人に関しては別だ。

 若さと美貌に執着する女だ。

 そんな女には、顔を潰すのが一番だ。


 鈍い鈍刃を使い、一部を毟り取るように顔を傷つけた。

 そしてその顔を司祭の娘に見せつけた。

 化け物のようになった自分の顔を見た司祭の愛人は、泣き叫んで嘆いた。

 身勝手な嘆きだ。

 魔物は一旦司祭の愛人を治した。


 治した後で、今度は熱した鉄を顔に押し付けた。

 顔中に火傷を付けた。

 そしてその顔を司祭の愛人に見せつけた。

 化け物のようになった自分の顔を見た司祭の愛人は、泣き叫んで嘆いた。

 魔獣の中の怨念が喜んでいた。


 恨みを晴らせて歓喜に叫んでいた。

 だが女の子達の恨みは深かった。

 幼いうちに非業の死を迎えただけに、純粋に恨んでいた。

 他の多くの恨みも、その気持ちに同調していた。

 だから、報復の気持ちが強すぎた。


 今回の拷問は、三日三晩では済まなかった。

 七日七晩の間、拷問が続けられた。

 街にも七日七晩神官達の悲鳴が轟いた。

 街の住民全てが、恐怖におののき、ろくに寝れなかった。

 何時自分達の方に魔獣がやって来るか分からない。


 金の有る者は街を逃げ出した。

 街を逃げ出す余裕のない者は、家に閉じこもった。

 街の領主も城に籠って震えていた。

 魔獣の矛先が自分達に向かないように、家臣にも一切手出しさせなかった。

 情けない事だ。


 七日七晩経って、神官達が完全に狂った。

 痛みには反応するが、もはや恐怖も感じなければ痛みも感じない。

 全員が正気を手放し、肉人形となっていた。

 魔獣達は満足していなかったが、一部の恨みは晴れた。

 そこで相手を変える事にした。


 魔獣達に染みついている恨みの中には、この街の領主や権力者に対するモノもあった。

 だが、直ぐに報復したのでは恐怖を広められない。

 一旦襲撃を休んで、国中に噂を広めなければならない。

 だから神官達の骸を城門に貼り付けて、噂が広まる間街を離れた。

 領主や権力者を油断させるためだった。

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