第16話
「頼んだぞ。
シャア」
「任せてください。
クランの名誉を護りつつ、オリヴィアを助け出します」
「シャアが請け負ってくれたら安心だ。
だが無理はするな。
クランの名誉など気にするな。
どうせ他国での話だ。
家族を救い出す事を最優先にしてくれ」
「ありがとうございます。
団長の想いを、徒や疎かにはしません。
必ずオリヴィアを助け出します。
復讐も手伝います。
団の名誉も、守れる範囲で守ります」
「ああ、頼んだよ」
バート達の所属するクランは、隣国教会の勇者募集に消極的になった。
元々悪い噂の多い隣国教会の募集だ。
虚名を欲する者や、喰い詰めた者以外は興味を示していなかった。
他の国は分からないが、この国の多くの傭兵団はそうだった。
だが犯罪者は別だ。
この国で罪を犯した者は、これ幸いと隣国に逃げ出した。
虚名を求める質の悪い傭兵も、隣国教会の募集に応じた。
強盗団と変わりない少数の傭兵団は、団をあげて募集に応じた。
隣国の悪い噂を知っていたが、応じる人間は同じような悪人だ。
むしろ悪逆非道の国ならば、自分達こそ生きていけると思っていた。
一方バート達の所属するクランは、バートの話を聞いて、助太刀を認めた。
魔女の汚名を着せられたオリヴィアを家族と認めたのだ。
認めたからには、何があっても助け出す決断をした
だが、基盤であるこの国から離れられる人数は限られている。
それに建前はともかく、本当に他人の為に命を賭けて戦える人間は限られている。
オリヴィアの家族と共に戦った者でなければ、命を賭けて戦うのは難しい。
ましてオリヴィアは魔女の汚名を着せられているのだ。
死線のギリギリで、見捨てる選択をする団員がいてもおかしくない。
いや、自分の危険を避けるために、助ける選択をしない可能性もある。
そんな団員を送れば、オリヴィアが家族すら報復対象にするかもしれない。
それを危惧した団長は、自身から助太刀を申し出た六人だけを送り出す事にした。
兄のバートと姉のエイダは、命に代えても妹を助けようとする決意に満ちている。
パーティーリーダーのシャアは、その二人を抑えて、冷静な判断が下せる英傑だ。
シャアはクランの次世代団長候補筆頭の勇者だ。
他の三人も、シャアを補佐してクランを導いてくれるだろう強者だ。
六人は教会の募集に応じる形で国境を越えた。
バートとエイダは、偽造した名前と経歴で国を越えた。
万が一にもオリヴィアの兄姉とバレないためだった。
だが今の二人を見ても、誰も昔のことは思い出さないだろう。
それくらい姿形が変わっていた。
もっとも、二人を知る者はオリヴィアに皆殺しになっていたが。
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